TA03:村上宏樹氏
セガに中途入社し、2019年で16年目となる村上氏。開発子会社だったヒットメーカーを振り出しに、PC向けオンラインゲームの背景制作、業務用カードゲームやガンシューティングのステージ制作などを担当。その過程で制作ワークフローの効率化に取り組んだ結果、TAとしての業務をまかされるようになった。その後の組織改編でモバイル向けゲーム制作に取り組むようになり、TAとしての業務のかたわらで、『D×2 真・女神転生リベレーション』(2018~)では背景パートリーダーも務めている。
【攻め】
●『D×2 真・女神転生リベレーション』における実例
①バトル背景のコンセプトアート作成
『D×2 真・女神転生リベレーション』開発において、バトル背景のコンセプトアート制作をふりだしに、モデリングからUnityへの実装、TA業務まで垂直統合的に担当した村上氏。ディレクターが求めるビジュアルの早期実現を目標に、初期コンセプトからプロジェクトにかかわった。
②コラボ用ティザー動画制作
『D×2 真・女神転生リベレーション』のコラボイベントではキービジュアル制作およびティザー動画制作を担当した。プロデューサーからの急な要望に対しても、Timeline機能を活用したカットシーン作成~After Effectsによる動画編集まで柔軟に対応している。
【守り】
①Unityライトマップ・ベイク支援ツール
作業しているシーンのライトマップ・ベイクをサポートするモードと、ベイクをバッチ処理するモードを揃えたUnity用ツール。Renderer設定の自動化という実用的な機能の他に、軽量ベイク設定への一時的な変更、他シーンのライトマップ参照時の上書き防止、ベイク前・後でライトマップの枚数が異なる場合は警告するなど、アーティストを支援する機能を充実させている。
②Unity用アートデータ・チェックツール
「作業中シーン内」または「プロジェクト全体のプレハブ」を対象にしたデザインデータの不正を1クリックでチェックするUnity用ツール。「Mesh」「マテリアル」「パーティクル」「シェーダ」を対象に、例えばMesh抜けやマテリアル抜け、重複マテリアルなどを検出する。このツール上で発見されたエラーはMayaの最適化ツールにもフィードバックされる。
③Mayaエラー情報の自動検知ツール
Mayaから出力されるエラー情報を自動検知し、サーバに送信するプラグイン。メッセージを受けるAPIをコールバックとして登録し、エラー発生時の「スクショ」「エラー内容」「ツール名」「Mayaバージョン」「UI言語」「ユーザー名」、「シーン名」などを取得している。
④Maya背景のUnity向け最適化ツール
部内のMaya用制作環境「TITANS」のツールで、背景データをUnity出力前に最適化するツール。エラーを未然に防ぐための各種データのチェックや「頂点数」、「SG」、「ファイルノード」、「マテリアル」などの最適化を行う。最適化設定を出力ノードごとに保存している。
TA04:村岡伸一氏
大手ゲームメーカーから転職し、今年でセガ歴が5年目となる村岡氏。キャラモデラー、アートディレクター、TAとしてコンシューマゲーム開発に携わった後、モバイルゲーム開発を志望して転職。直近では新卒の吉田氏と共に描画まわりの開発支援を担当している。また、亀川氏と共に社内有志によるシェーダ研究会も運営している。
【攻め】
①キャラクターの共通シェーダ実装
現在担当しているプロジェクトで「プロジェクト初期からTA主体で描画周りを管理している」と語る村岡氏。成果の1つがキャラクターの共通シェーダだ。アートディレクターやキャラクターリードと相談しながら実装することで、アーティストが望むシェーディングや表現を早期に実現できたという。
②環境マップ生成ツール
同じく「背景アーティストから反射表現を使いたい」という要望があがったため、キューブマップからデュアルパラボロイド方式の環境マップを生成するツールなども作成しているという。
【守り】
①シェーダ研究会
TA以外の希望者やコンソール開発経験のあるプログラマーも交えて行われる社内のシェーダー研究会。村岡氏と亀川氏が定期的に主催しているもので、そこで得られた知見は社内wikiにまとめられている。参加者は毎回10名弱で、描画に関するノウハウを共有し、知識を深める場として、欠かせない存在になってきたという。
TA05:佐々木 拓氏
業界歴10年、セガ歴4年となる佐々木氏。3Dモデラー出身で、現在はUIに強いTAとして異彩を放っている。スコアやライフゲージなどに代表されるUIは、仕様策定をはじめとして、ゲーム開発の全工程と絡むため、やりがいが高い半面、作り直しが多い分野でもある。佐々木氏はこのUI制作の効率化をTA的なアプローチで推進。他にシェーダの制作なども手がけている。
【攻め】
①テキストアニメーションの制作
Unityで文字ごとにアニメーションできるスクリプトを制作。エディタ上でプレビューを手軽にできるようにもした。これにより経験が浅いUIデザイナーでも、リッチなUI演出が効率的に行えるようになった。
②ポストエフェクトの実装
手描きのようなムラのある線の表現を可能にするシェーダを制作した。
【守り】
①『共闘ことばRPG コトダマン』におけるカーブエディタの制作
ゲームのルートマップをデザインするうえで、UIデザイナーのみで完結できるカーブメッシュ作成のツールをUnity向けに制作。これにより急な仕様変更でも、迅速な修正が可能になった。なお本作はセガゲームスから2018年4月にリリースされ、2019年10月にパブリッシャーがXFLAGに移行した。その後も開発にはセガゲームスのメンバーが携わっている。。
②EffectLib
『コトダマン』でのエフェクト作業軽減のために素材を組み合わせて短時間でエフェクトを制作できるツールとしてUnity向けに制作したが、設定次第では宮下氏が制作した「アーティファクトライブラリ」との連動も可能となっており、他のプロジェクトでの用途にも耐える汎用的な作りになっている。
③UnityのUI改善など
経験の浅いUIデザイナーでも多彩なUIを短時間で制作できるように、UnityのUIを独自スクリプトで拡張(左)。同じくShurikenで制作されたエフェクトデータを納品する際に、ヒューマンエラーの発生を抑えるためにチェックツールを制作した。
TA06:イルダル・バレエブ氏
ロシア出身で5年前に日本に移住してきたバレエブ氏。来日前からコンシューマゲームやモバイルゲーム開発に携わり、セガゲームスに合流して約1年になる。アーティスト出身だが、プログラマーとしての経験もあるという、複合的なキャリアのもち主だ。プログラマーとしてエントリーしてきたところを、本人の希望とアーティストとしての能力が買われ、TAとして採用してされた。
【守り】
①Maya向けの歩行モーション調整ツール
GDC2016でUbisoftが発表した講演内容をもとに、同じ機能をもつツールをMaya上に実装。モーションキャプチャで作成したアニメーションに対して、足を滑らなくするために必要な調整を自動化した。
②Maya向けのUVレイアウト自動化ツール
重複したり、オーバーラップされていたりするUVのシェル構造を保持したまま、Maya上でレイアウト調整を自動化するツール。ランダムに配置するだけでなく、指定したオブジェクト・マテリアル・UVタイル同士を近づけてレイアウトすることもできる。また、グループIDの情報をテクスチャでエクスポートする機能もある。