>   >  もし水嶋ヒロが俳優を目指さなかったら......著名人をバーチャルヒューマン化『Lewis Hiro Newman』が目指すもの
もし水嶋ヒロが俳優を目指さなかったら......著名人をバーチャルヒューマン化『Lewis Hiro Newman』が目指すもの

もし水嶋ヒロが俳優を目指さなかったら......著名人をバーチャルヒューマン化『Lewis Hiro Newman』が目指すもの

<2>フィニッシュワークを得意とする紅一点がビジュアルを支える

このバーチャルヒューマンプロジェクトを画づくりの面で支えるのが、1SECの冨尾礼美氏。1SECに籍を置く、最初のデジタルアーティストであり、一連のCG・VFXの実作業は国内外のデジタルアーティストやCGプロダクションと協業しつつ、最終的なビジュアルを仕上げる要の存在だ。そうした意味でも1SECは、CGプロダクションではなく、バーチャルヒューマンの企画・プロデュースを中心とする次世代の芸能プロダクションと言えるのかもしれない。



  • 冨尾礼美/Ayami Tomio
    兵庫県出身。2015年にHAL大阪を卒業後、デジタル・フロンティアに入社、ライティングとコンポジットをメインに、CGデザイナーとしてのキャリアを始める。 『Gantz:O』(2016)、『Infini-T Force』(2017)、『いぬやしき』(2018) などのプロジェクトに参加。 2019年にサイバーエージェントのグループ会社に移り、Web広告などのCG制作に携わった後、同年8月に1SECへ移籍。


それでは冨尾氏の説明に基づいて、Lewisの制作工程を解説しよう。主立ったバーチャルヒューマンと同じく、Lewisもフォトグラメトリーで3Dスキャンされた水嶋氏本人の頭部データを加工し、実在するモデルの身体と合成することで一連のビジュアルが創り出されている。制作は素材撮影から始まり、撮影チームがシチュエーションを選んでモデルを撮影。これと並行してライティング用HDRIの素材となる写真も可能なかぎり撮影しておく。

頭部モデルの作成

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  • <A>水嶋氏本人のフォトグラメトリーから生成したスキャンモデル/<B>20歳という設定に合わせて、水嶋氏監修の下、加工調整が施された最新モデル/<C><B>のメッシュ表示


頭部モデルをMaya上で作成した後、HDRIを読み込みライティング、レンダリングを実行。その後、NUKE上を使い、3DCG素材とモデルを撮影した実写素材をコンポジットし、細かな色調整を施してビジュアルを完成させるというのが基本的なワークフローだ。コンポジット作業にPhotoshopではなくNUKEを使用するのは、同じロケーションで撮影したシーンであればより効率的に複数のビジュアルを量産できるからだという。また、HDRI素材の撮影にはリコーTheta Sを使用し、Photoshopで加工しているとのこと。



テクスチャリング

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  • <A><B>現在利用されているカラーテクスチャの例。いずれも8KサイズのUDIMで作成/<C>目のアップ(開発途中のテストレンダリング)


Lewisは渡英中のため、撮影は1〜2ヶ月に一度のペースで、複数ロケーションの撮影を集中的に行なっているとのこと。ロケーションについては、レストランや広場など、Lewisの生活空間を事前にピックアップ(1SECのLewisプロデュースチームのプランナーが選定)。水嶋氏からの提案も適宜取り入れているそうだ

冨尾礼美(以下、冨尾):現在までにInstagramに投稿された一連の写真(※3)については、モデル、カメラマン、コーディネーターと私の4人で撮影を行いました。4日間で50パターン以上、約2,000枚の写真を撮りました。

※3:2019年11月26日から2020年1月15日までに投稿された写真

ポイントは本人をモデルとしつつも、本人ではないCGを制作している点だ。いくら写真などを参考にしているといっても、20歳の頃の水嶋氏の表情や雰囲気は、3DCGの三面図では起こすことができない。本人の記憶にしかないものだ。

冨尾:現在運用中の頭部モデルはローンチ時のモデルを全面的に改修したものです。ローンチ時の頭部モデルも、実は正面と横顔で別のモデルなんですよ。Lewisの運営を続けながら、徐々に両者を融合させている最中です。

実在の人物がモデルだけあって、Instagramに写真を投稿する際も水嶋氏による事前チェックが不可欠だ。そこで冨尾氏は、まず2Dで最終的なビジュアルに近いものを作成し、水嶋氏にそれをチェックしてもらった上で本制作を進めるようにしている。

冨尾:水嶋さんもお忙しいので普段はLINEを介してチェックしてもらっています。水嶋さんの指示はとても丁寧なので、効率良く修正作業を行えています。時には人体の構造上おかしい(3DCGとしては破綻してしまう等)指示内容の場合もあるのですが、そんなときも事情を説明すると的確に理解していただけます。

当面の課題は表情を増やすことだという。頭部にはフェイシャル用のリグが仕組まれているが、表情が変えられることと、その人らしさを出すことは別の話である。

冨尾:より多彩な表情をつくるためには、フェイシャルパターンの追加とリグの再調整だけでも1〜2ヶ月は必要になるかもしれません。時間をみつけて少しずつ改良していきたいと思います。

もちろん、Liamのように動画の投稿も視野に入れている。そのための制作体制の強化、具体的には新たなデジタルアーティストの採用も検討中とのこと。

宮地:(求められる人材像について)モデラーとリガーは募集中です。もっとも、冨尾のようにスペシャリストではなくゼネラリスト志向の人が向いていると思います。バーチャルヒューマンという新しいムーブメントを一緒に創りあげてくれる、好奇心旺盛な方に参加してもらいたいですね。





冨尾:日々、新しいことへの挑戦が求められています。Lewisの髪の毛にはYetiを利用しているのですが、私はライティング/コンポジットを主に手がけてきたこともあり、Yetiを習得することからのスタートでした。大変なこともありますが、新しいスキルを習得できることが楽しいです。





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<3>ファッション業界から環境問題にも取り組む

Profileプロフィール

宮地洋州、冨尾礼美、中村成寿/Hirokuni Miyaji、Ayami Tomio、Narutoshi Nakamura(1SEC)

宮地洋州、冨尾礼美、中村成寿/Hirokuni Miyaji、Ayami Tomio、Narutoshi Nakamura(1SEC)

左から、宮地洋州氏(Founder / CEO)、冨尾礼美氏(デジタルアーティスト)、中村成寿氏(取締役 / Chief Business Officer)。以上、1SEC

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