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ボリューメトリックフォグも、シャドウもブルームもあきらめない。コロプラにUnity URP移行の今を聞く

ボリューメトリックフォグも、シャドウもブルームもあきらめない。コロプラにUnity URP移行の今を聞く

URPで実現したボリューメトリックフォグ。
PS4世代の画づくりを目指す

大下:続いてフォグの事例についてお伺いします。この画像を拝見したとき、本当にモバイル環境なのだろうか? という感想が真っ先に浮かんだのですが、このゴッドレイに関してはボリューメトリックフォグで表現されているのでしょうか。

▲左:ボリューメトリックフォグON、右:ボリューメトリックフォグOFF

荒木:はい。HDRPでボリューメトリックフォグを使用してゴッドレイ表現を行なっているのを見たことがあるので、同じようにURPにもボリューメトリックフォグを導入しました。今ではPS4タイトルでも当たり前にボリューメトリックフォグが使われていますので、それをモバイル環境でも使おうと試しています。

もちろんこれはとても重い処理なので、従来はビルボードを置いてゴッドレイなどの空気感を表現したりしていました。ただ、板ポリを1枚置くにも、マップが広くなってくると、工数的に手動では置くことができなくなります。そのため、ビジュアル表現としても、開発手法としても、今後はボリューメトリックフォグ以外あり得ないという判断になり、実装を行いました。

大下:かなりリッチな空気感が出ているように見えますが、実装は困難だったのではないでしょうか。

荒木:ボリューメトリックフォグはシャドウマップに対してレイを飛ばすという一般的なアルゴリズムを採用しています。URPのシャドウマップを組み合わせることで最小限の実装で済みました。処理としての工夫は少ないと思いますが、こういったことをすぐに試せるのもURPのメリットであると感じています。

荒木:ボリューメトリックフォグに関しては新しめの端末では十分導入可能な負荷にとどまっています。また、ハイトフォグなども実装しており、ランプテクスチャを使用して濃さや色をコントロールできるようにしています。いずれもボリュームフレームワークを利用しているので、他のエフェクトとUI的には変わらず、アーティスト側にも使いやすいかたちにしています。

大下:その他のポストエフェクトはどういったものを使われているのでしょうか?

荒木:疑似的ではなくHDR環境で制作していて、トーンマッピングも入っています。ほぼ現状のコンシューマ準拠になっていますね。今から新規タイトルを開発するのであれば、少なくともPS4世代と同じグラフィックスレベルを目指すべきだろうと考えています。

大下:モバイル環境と、PS4世代と同様のグラフィックスを同列に語るのは技術的にも難しいと思います。HDRでボリュームメトリックフォグを実装というのは、現在のモバイル向けの技術水準とはやや異なる印象を覚えますね。

荒木:モバイル環境のタイトルも開発期間が長期化しています。おおむね3年後の端末を最高スペックと仮定すると、今のうちからPS4クラスはつくれないとダメだよね、という意識が社内で共有されています。

新端末発表会を見ていると前モデルよりGPU性能が30%アップなどと宣伝されています。これが3年続けば2倍以上の向上になりますよね。少し前のタイトルがモバイルでできる表現の最大値だと考えてつくり始めると、リリース時点では古くなってしまうんです。ここに気を付けながら開発を進めています。

ポイントライトの影響を可視化するツールを開発。
アーティストの負荷をなるべく抑える

大下:続いて、「ライト可視化ツール」についてお伺いします。こちらはライトの影響をエディタ上で確認するためのものだと思いますが、改めて機能紹介と実装の経緯をお聞かせください。

中田:URPは低い負荷で多数のライトが使える設計になっています。ただ個数の上限を超えたライトの扱いが難しく、アーティスト側が調整しづらいという状況も起こり得ます。

荒木:1オブジェクトに対して8個のポイントライトまで、シングルパスで速く描画できるのですが、大きなメッシュや床などに対してどのライトが当たっているのかを目視だけで確認するのは難しいです。このツールはシーンビューでライトの影響を円形に表示するしくみになっていて、実装は中田が担当しました。そもそもポイントライトが使えるだけでアーティスト側は喜んでくれますし、これをツールで調整したりプレイしたりせずにプレビューできるというところにも喜んでもらえて。開発して良かったです。

▲ポイントライトを配置したシーン

▲ポイントライトの影響可視化ツールの画面。右下のパネルで閾値を操作することで各ライトの影響範囲を確認できる

中田:やはりソースコードを読めるというのは強くて、他の業務をやりながらでも2週間ほどで新規ツールを開発できるくらいにはURPは学びやすいです。

大下:Unity標準の機能に欲しいくらいです(笑)。先ほどのフォグの話でも感じましたが、モバイルでの負荷を考慮しながら、その中でも常にクオリティへの妥協がないことを感じることができました。

荒木:PCゲームなら最新のGPUと内蔵GPUで幅広いスペックが混在しますが、モバイル環境はそれに近いですね。先ほどのシャドウの話もそうですが、PCの世界で当たり前に行われていることを参考にしながらモバイルに向けて実装しています。モバイルだけでなく、VRなど最新のデバイスも対象にはなりますが、とにかく幅広く技術的なことをキャッチアップすることを大切に考えています。

大下:新ハードのリリース量もコンシューマとは比較にならないですね。そういった現場において、エンジニアとアーティストの協業によって表現が拡張されることは素晴らしいことだと感じました。

荒木:アーティストの要望も以前に増して高くなってきました。昔だとポリゴン数がどうとか、容量がどうという話が多かったのですが、今はポストエフェクトの話にまで発展するようになりました。「これができるならあれも実現したい!」という、アーティスト側のクリエイター魂のようなものを感じます。私たちとしても、良いグラフィックスがつくれるのが一番のモチベーションです。私たちがやりたいのは「誰も見たことのないもの」をつくりたいということなので、モバイル最高のグラフィックスと言えばコロプラと言っていただけるくらいには頑張りたいと思っています。

アーティストの高い要求に応えたい。
ハイエンドな画づくりを目指せるメンバーを募集中

CGWORLD(以下、CGW):最後に、求人についても教えてください。現在はデザイン職の募集を行なっているそうですが、どのようなデザイナーに参加してほしいですか?

荒木:先ほどもお話しした通り、数年先を見据えてコンシューマ最高クラスのグラフィックスをモバイルで実現しないといけない時代になっていると思います。モバイル業界というと「コンシューマよりも前のことをやるんだよね」と思われるかも知れませんが、そうではなく、今のコンシューマの最前線と同レベルのことをやっています。

その意味では、PS4世代の画づくりが可能な方というのが弊社の求める人物像です。より具体的には、PBRを導入したタイトルの開発経験があり、HDR環境やボリューメトリックフォグ、カラーグレーディングなどのポストエフェクトを含めたレベルの高い画づくりができる方を求めています。

中田:コンシューマ開発経験があり、その中でも新しい表現をやってきた方と一緒に働きたいです。言われたものをつくるような作業を行なってきた人よりは、アイデアや要望をどんどん出して、一緒に高度な画づくりができる方が好ましいです。私たちエンジニアもクオリティの高いグラフィックスをつくりたいし、そういうものづくりが好きだからこそアーティストの高い要求に応えたいんです。新しい、高度な表現に興味のある方を期待します。

稲垣:そうですね。我々も要望があれば検討して開発したいですし、何も要望を言われないよりはいろいろアーティスト側から言ってくれた方が嬉しいんです。それがエンジニアにとっての楽しみにもなるし、それで良いものができたら嬉しいですよね。もう少し言うと、アーティスト側のチャレンジを上手く取りまとめて、提案としてしっかり組み立てられる方がベストです。説明能力も含まれると思います。

CGW:ありがとうございました。

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Profileプロフィール

テクノロジー推進本部 技術研究部 開発効率化グループ

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写真右から 荒木和也氏、稲垣匡哉氏、中田 充氏

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