「使いやすい、なにも迷うことがない」
CGW:ありがとうございました。実は今回、V-Rayの検証のほかにも追加で2つの検証を頂きました。まずは「Chaos Cloud」ですが、こちらはV-Rayの開発元であるChaos Groupが展開するクラウドレンダリングサービスです。これまでクラウドレンダリングを使用したことはありますでしょうか。
佐藤:自分自身はクラウド上にレンダリングジョブを投げるのは初めてでした。使ってみた第一印象は「使いやすい」です。なにも迷うことがなく、レンダリングを投げることができました。Mayaのシェルフボタンからブラウザが立ち上がり、そこからSubmitボタンを押すだけのシンプルさです。シーンの名前や解像度などの情報は自動で入力されていて、手動で設定したところといえばクレジットくらいです。今回は20に設定しました。
CGW:「Chaos Cloud」は計算時間によってクレジットが消費されるという仕組みになっています。解像度がすごく大きくて複雑なシーンだと大量のクレジットを使いますが、今回は20で充分まかなえた、という形ですね。
佐藤:レンダリングが始まるまでは1-2分で、レンダリング中もリアルタイムで進捗が確認できます。レンダリング終了後はお知らせメールが来て、あとはダウンロードをするだけ。ここからexrとjpgの画像がダウンロードでき、レンダリング時間がどの程度か?などの情報も参照できます。ローカルマシンでは45分程度だったものが、20クレジットを消費して12分で終わりました、という状況です。
【左】処理中の画面。リアルタイムに計算状況を確認できる。【右】レンダリング結果
CGW:肝心の画のクオリティですが、いかがでしたか。
佐藤:そこはなにも問題ありませんでした。ルックも問題ありませんし、エラーを吐いたり、ジョブが投げられないということもなく、すごくスムーズに良い結果が得られました。
CGW:素晴らしいですね。コスト感ですが、1クレジットあたり140円程度(※)のようです。ライセンス費用やサーバー代、電気代、会社規模等との兼ね合いになるでしょうか。
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荒川:ちなみに、マーザでも映画が2本走っている際などは他社のクラウドレンダリングの力を借りていました。Chaos Cloudはvrsceneに特化しているためエラーが起きにくく、V-Ray完結で他のものが必要ないというところが利点だと思います。弊社のようにパイプラインで独自開発のツールなどがある場合はプロジェクトによって使えないケースもありますが、一般的なV-RayユーザーであればChaos Cloudは非常に恩恵が大きいサービスと言えると思います。
佐藤:個人的に良いなと思ったのは、Chaos Cloud上に一度投げたジョブは残っていて、次回以降バージョンを上げたものなどをアップロードする際に過去のジョブ情報をもとにアップロード時間の短縮をしている様子でした。例えば、初回に重たいシーンを投げてアップロードに時間がかかっていたとしても、次にわずかな修正をしてもう一度投げた場合アップロードはは数秒で終わるのではないかと思います。
CGW:続いて2つ目の「Vantage」ですが、これはV-RayのシーンファイルをVantage上に展開してレンダリング結果をリアルタイムに表示・探索ができるリアルタイムエンジンになっています。使用した感想などをお聞かせください。
佐藤:こちらも迷うことなく使用できました。vrsceneをVantageに持って行って、カメラを付けたり木の位置を調整したりと、ゲームエンジンに近いかたちで活用できます。データを持っていった際も、シーンの描画スピードもGPUレンダリングより速くて驚きました。
CGW:ビューポートを回してもすぐに描画ができる点は魅力だと思います。こちらもVantageを挟んでいますが、V-Rayのみの画づくりという点では完結したワークフローになるように感じます。
佐藤:レイアウト作業やプリビズにも使えるかもしれません。今はUnreal EngineやUnityを使ってプリビズをやる企業も多いと思いますが、V-Rayを使っている現場であればVantageで似たようなこともできるのではないでしょうか。Mayaではとても描画できないような広大な地形などもVantageに持って行けばレンダリングなしで確認できるので、そこはメリットです。
CGW:ありがとうございました。今回はV-Ray 5の検証や、VantageなどV-Rayに特化したエンジンも含めて使用して頂きましたが、改めてV-Rayの世界は総評していかがでしたか。
荒川:Vantageは建築系などで有用なのではと感じました。レンダラ選定を行う側からすると、今の時代は「機能そのもの」はどれも似通って来ているんですね。なので、選ぶきっかけや、乗り換えるにあたっては、ものすごいメリットがないと難しいのが正直なところです。長年のArnoldのノウハウもありますから。
佐藤:これまでGPUレンダリングをあまり使用したことが無かったので半信半疑でしたが、思った以上に高速できれいな画が出ていたので、実用度は高いと感じました。
CGW:ありがとうございました!
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