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ハイエンドのビジュアリゼーションと映像制作会社の為の、世界で最も完全な機能を持った3Dレンダリングソフトウェアと謳われる「V-Ray」が機能を刷新し「V-Ray 5」としてリリースされた。今回は数々の有名映画・映像を手がけ、次世代の表現を模索し続けるマーザ・アニメーションプラネットのルックデヴアーティスト佐藤佑亮氏とチームマネージャーの荒川孝宏氏に「V-Ray 5」の真価を伺った。

TEXT_神山大輝/ Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO
PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota
INTERVIEW_阿部祐司/Yuji Abe(CGWORLD)

扱いやすくなったV-Ray

CGWORLD(以下、CGW):まずは自己紹介をお願いします。

佐藤佑亮氏(以下、佐藤):ルックデヴアーティストの佐藤です。現在はLookdevチーム所属で、アセット・ショットワーク、ツール開発などを行なっています。

  • 佐藤佑亮氏/Yusuke Sato
    ルックデヴアーティスト

荒川孝宏氏(以下、荒川):ルックデヴチームマネージャーの荒川です。現在は13年目で、弊社がセガ社内のCG映像制作部門だったところから在籍しています。弊社で現在メインに使用しているレンダラの選定にも携わってきました。

  • 荒川孝宏氏/Takahiro Arakawa
    ルックデヴチームマネージャー

CGW:さっそく検証結果についてお聞かせください。まずはV-Ray 3、V-Ray 5のレンダリングスピードについてですが、結果はいかがでしょうか?

佐藤:まずは設定面ですが、GIエンジンについて、プライマリはBrute Force、セカンダリはV-Rayの強みを活かすLight Casheを使用しています。設定項目もV-Ray 3と5とでは異なる箇所があり、V-Ray5は項目が減っている印象です。

CGW:GIに関して、設定が少なくなっていますね。機能的に洗練されたということでしょうか?

佐藤:個人的には「V-Rayが触りやすくなりました」というふうに感じました。V-Ray 3はここにPrimary bounces / Secondary bounces という項目があり、Brute forceやLight cache、Irradiance Mapなどが選択できましたが、V-Ray 5ではPrimary bouncesはBrute forceのみで、Secondary bouncesがBrute forceかLight cacheどちらかを選びます。他にも、レンダリング時のレイのコントロールを行う「DMC Sampler」なども、設定項目がチェックボックス2つに簡略化されています。従来はアーティストがチューニングしていた部分を、レンダラが最適化してくれている印象です。

V-Ray 3(左)とV-Ray 5(右) のGI設定画面

CGW:設定項目的には、V-Rayの導入の敷居が下がったと言えそうです。改めて、レンダリングの実測値はいかがでしたか。

佐藤:まずはCPUレンダリングですが、V-Ray 3が47分9秒、V-Ray 5が45分13秒と、2分ほど速い結果になりました。GPUレンダリングに関しては、V-Ray 3がFogに対応していないためV-Ray 5だけで速度検証をしています。GPUレンダリングの結果はRTXモードが9分33秒、CPU+GPU(CUDA)が9分34秒と、いずれもCPUのみのレンダリングよりは高速に描画結果が得られました。

【左】V-Ray 3 CPU、【右】V-Ray 5 CPU

【左】V-Ray 5 RTX、【右】V-Ray 5 CPU+CUDA

CGW:比較すると、GPU側が高速ですね。レンダリング形式によって色味の変化があるかと思いますが、そちらに関してはいかがでしょうか。

佐藤:パッと見の印象だと、V-Ray 3と5で色味に違いがありますがこれはコンポジットの差で、時間をかければ同じ色味に合わせることは可能だと思います。今回V-Ray 5ではV-Rayのフレームバッファを使ったコンポジットを行っており、V-Ray 3側はV-Ray 5でつくった画をもとにNukeで再現を行なっています。

CGW:V-Ray Nextから実装された「Adaptive Dome Light」についてはいかがでしょうか。

佐藤:Adaptive Dome Lightは室内シーンでより強い効果が出るとのことでしたので、『THE PEAK』の中から室内のシチュエーションを選びました。V-Ray 3:Dome Light、V-Ray 5:Dome Light (adaptive ON)という比較でレンダリング速度を検証したところ、こちらもV-Ray 3が9分3秒、V-Ray 5が7分2秒と、約2分ほどの差が出て高速化しています。なお、いずれもCPUレンダリングで、バケットレンダリングモードを使用しています。

「Adaptive Dome Light」 OFF

「Adaptive Dome Light」 ON

CGW:レンダリング速度に関して、他に気付いた点はありますか?

佐藤:GPUレンダリングの速度について、各モードで1秒しか差が出ていないのは疑問ですね。最初にGPUレンダリングを試した時は「RTX」のチェックボックスを入れていたのですが、GPU使用率が30%程度でした。これを「Out-of-core(WIP)」に変更したところ、60-70%ほどを示すようになりました。カタログスペック的には前者の方が速度が出るかと思っていましたが、今回のケースではここに有意差が示されませんでした。今回検証に協力していただいたアスクの担当者さんによると、RTXでの処理は確かに高速ですがOptiXでの処理にコンパイルを一度挟んでいるため、結果的にCUDAとの差があまりなくなっているようでした。これはソフトの対応を待つしかないですね。

CGW:V-Ray上でコンパイルするのに時間がかかっているために現在は大きな差が見られないものの、今後ソフトウェアのアップデート次第で大幅に処理速度が向上しそうな予感がします。これからに大いに期待できるということですね。続いて、GPUでのレンダリング速度の検証について教えてください。

佐藤:先ほどの検証とのちがいですが、V-Ray 3のGPUレンダリングはプログレッシブモードのみであるため、V-Ray 3,5ともにプログレッシブモードで計算しました。その際の設定ですが、「Max Render Time」をゼロにしています。ここに数値が入っていると、既定の時間でレンダリング結果が出力されますが、ゼロにすることによって時間制限をなくして他のパラメータで指定したところまで計算させることができます。時間制限をなくして、ノイズが綺麗になるまで計算させる設定にしています。

CGW:「時間がかかる場合もあるが、最適な結果を出力してくれる」という設定ですね。

佐藤:はい。プログレッシブモードの良いところは画全体の雰囲気がすぐにわかるところですね。ノイズが乗った状態から、それがじわじわなくなっていくという感じなので、レンダリングを開始してから全体の雰囲気がわかるまでのスピードが速いのが利点です。レンダリング時間ですが、CPUレンダリングではV-Ray 3が10分47秒、V-Ray 5が13分47秒という結果になりました。GPUレンダリング(CUDA)に関してはV-Ray 3が51分15秒、V-Ray 5が27分49秒、GPUレンダリング(CPU+CUDA)ではV-Ray 3が37分33秒、V-Ray 5が22分50秒となっています。

CGW:プログレッシブモードではCPUレンダリングが圧倒的に速い結果になっていますね。少し意外な感じがあります。

佐藤:そうなんです。ちなみに、検証シーンは1つ目のものと同じですが、 V-Ray 3のGPUレンダーはFogやVolumeに対応していないため、これまで使用していた VRayEnvironmentFogをやめ、OpacityやzDepthによる疑似的なFog表現へ変更しました。

V-Ray 3とV-Ray 5のレンダリング結果比較

荒川:データ的には非常にシンプルにしています。CPUレンダリングが大きく短縮されたのはこの影響だと思います。ルックのちがいもありますが、処理速度で言えばボリュームをなくしているのが大きいです。

佐藤:ちなみに、GPU単体で比較した時はV-Ray 5のRTXモードが最も速く、22分26秒でした。個人的にはCPUレンダリングよりもGPUレンダリングの方が全般的にスピードが出るものと思っていたので、意外でした。

CGW:この特定のシーンとV-Rayを組み合わせた結果なので一概に言えないかもしれませんが、こちらもレンダリングするまでのコンパイルなどの下処理に時間がかかっているのでしょうか。

荒川:より大きなシーンになれば、処理速度が非常に高いRT Coreを使うメリットも見えてくるかもしれません。小さいシーンではコンパイルまでの時間が大半を占めていて、GPUの利点が活かしきれなかった可能性もあります。今後のアップデートで大きく改善するかもしれません。

CGW:ありがとうございます。V-Ray 3とV-Ray 5の使用感などについて、総評を頂けますでしょうか。

佐藤:V-Ray 3に関してはfogをサポートしていなかったり、V-Ray 5に比べるとGPUのレスポンスが遅かったり、色味のちがいもかなりあるなと感じました。色味の差に関しては、キャラクターの鼻から出ているライトが一番わかりやすいと思いますが、CPUレンダリングではねらった通りの明るさになっているのに対し、GPUレンダリングは非常に暗く落ちてしまいます。後ろのリフレクションもGPUが気持ち明るくシャープな印象で、CPUは柔らかい印象になっています。

CGW:並べて比較すると、かなりちがいがありますね。

佐藤:その通りです。一方、V-Ray 5ではこのちがいが大きく軽減されています。

荒川:リフレクションなどの細かいちがいはありますが、V-Ray 5では品質がある程度一定なので、ライティングする側としてもそこまで問題なくレンダリング方式を切り替えることができるようになると思います。

佐藤:設定項目も、先ほどお話した通り効率化が進んだのかパラメータ数が減り、触りやすくなった印象です。また、ShaderについてはV-Ray mtlにmentalness,sheenパラメータが追加されました。Arnoldにもあるようなフィジカル系シェーダーがサポートされたので、画づくりの面でも嬉しいです。あとはGPUレンダリングもV-Ray 5の方がレスポンスが良くなっていて、安定しています。ViewPort上でもレンダリングを走らせて結果を確認できるのですが、これもV-Ray 3に比べて描画が高速化している印象でした。今回はライティング作業で重宝しました。

荒川:あとはフレームバッファも良く出来ていますね。特にLight Mixは非常に良いです。

佐藤:そうですね、これはかなり便利でした。ライトの色や強さをレンダリングした後に調整できる機能で、再度レンダリングをしなくとも様々なライティングを試せるというものです。ライトごとに調整ができるので、コンポジット側では対応できないレベルまで追い込むことができました。

LightMix機能を使用したバリエーション

荒川:今回はV-Ray 5でレンダリングしたルックに関しては、Nukeを一切使用せずにフレームバッファだけで完結させることができました。極端な話、最初はライトの色を全部白くして、ざっくりとライトをシーン内に配置して、とりあえずレンダリングに投げてしまう。その後、Light Mixの機能で、色や強さを微調整してつくり込むことも可能です。これのさらに良いところが、Light Mix機能で色や強さを変更した後、シーン内にあるパラメータに結果を反映してくれるんです。「この色がいい」、「この強さが良い」というのを、今まではMayaに戻り、Mayaのライトパラメータまで行って同じように設定していましたが、それをボタンひとつでやってくれるような感じです。

CGW:このレベルで編集が可能となると、今後はNukeやPhotoshopにデータをもっていかずとも、レンダラだけで画づくりを完結できるようになるかもしれませんね。

荒川:他のレンダラにもポスト処理による色味変更の機能が追加されていますので、レンダラ完結型のワークフローは最近のトレンドなのかもしれません。インターフェイスはV-Rayの方が若干おしゃれにはなっていますね。

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「Chaos Cloud」、「Vantage」の実力とは

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「使いやすい、なにも迷うことがない」

CGW:ありがとうございました。実は今回、V-Rayの検証のほかにも追加で2つの検証を頂きました。まずは「Chaos Cloud」ですが、こちらはV-Rayの開発元であるChaos Groupが展開するクラウドレンダリングサービスです。これまでクラウドレンダリングを使用したことはありますでしょうか。

「Chaos Cloud」紹介ページ

佐藤:自分自身はクラウド上にレンダリングジョブを投げるのは初めてでした。使ってみた第一印象は「使いやすい」です。なにも迷うことがなく、レンダリングを投げることができました。Mayaのシェルフボタンからブラウザが立ち上がり、そこからSubmitボタンを押すだけのシンプルさです。シーンの名前や解像度などの情報は自動で入力されていて、手動で設定したところといえばクレジットくらいです。今回は20に設定しました。

「Chaos Cloud」の初期設定画面

CGW:「Chaos Cloud」は計算時間によってクレジットが消費されるという仕組みになっています。解像度がすごく大きくて複雑なシーンだと大量のクレジットを使いますが、今回は20で充分まかなえた、という形ですね。

佐藤:レンダリングが始まるまでは1-2分で、レンダリング中もリアルタイムで進捗が確認できます。レンダリング終了後はお知らせメールが来て、あとはダウンロードをするだけ。ここからexrとjpgの画像がダウンロードでき、レンダリング時間がどの程度か?などの情報も参照できます。ローカルマシンでは45分程度だったものが、20クレジットを消費して12分で終わりました、という状況です。

【左】処理中の画面。リアルタイムに計算状況を確認できる。【右】レンダリング結果

CGW:肝心の画のクオリティですが、いかがでしたか。

佐藤:そこはなにも問題ありませんでした。ルックも問題ありませんし、エラーを吐いたり、ジョブが投げられないということもなく、すごくスムーズに良い結果が得られました。

CGW:素晴らしいですね。コスト感ですが、1クレジットあたり140円程度(※)のようです。ライセンス費用やサーバー代、電気代、会社規模等との兼ね合いになるでしょうか。

※記事執筆時点の価格。詳細は株式会社アスクまでお問い合わせください

荒川:ちなみに、マーザでも映画が2本走っている際などは他社のクラウドレンダリングの力を借りていました。Chaos Cloudはvrsceneに特化しているためエラーが起きにくく、V-Ray完結で他のものが必要ないというところが利点だと思います。弊社のようにパイプラインで独自開発のツールなどがある場合はプロジェクトによって使えないケースもありますが、一般的なV-RayユーザーであればChaos Cloudは非常に恩恵が大きいサービスと言えると思います。

佐藤:個人的に良いなと思ったのは、Chaos Cloud上に一度投げたジョブは残っていて、次回以降バージョンを上げたものなどをアップロードする際に過去のジョブ情報をもとにアップロード時間の短縮をしている様子でした。例えば、初回に重たいシーンを投げてアップロードに時間がかかっていたとしても、次にわずかな修正をしてもう一度投げた場合アップロードはは数秒で終わるのではないかと思います。

CGW:続いて2つ目の「Vantage」ですが、これはV-RayのシーンファイルをVantage上に展開してレンダリング結果をリアルタイムに表示・探索ができるリアルタイムエンジンになっています。使用した感想などをお聞かせください。

「Chaos Vantage」紹介ページ

佐藤:こちらも迷うことなく使用できました。vrsceneをVantageに持って行って、カメラを付けたり木の位置を調整したりと、ゲームエンジンに近いかたちで活用できます。データを持っていった際も、シーンの描画スピードもGPUレンダリングより速くて驚きました。

「Vantage」でV-Rayのシーンファイルを読み込める

ハイアングルのシーン

CGW:ビューポートを回してもすぐに描画ができる点は魅力だと思います。こちらもVantageを挟んでいますが、V-Rayのみの画づくりという点では完結したワークフローになるように感じます。

佐藤:レイアウト作業やプリビズにも使えるかもしれません。今はUnreal EngineやUnityを使ってプリビズをやる企業も多いと思いますが、V-Rayを使っている現場であればVantageで似たようなこともできるのではないでしょうか。Mayaではとても描画できないような広大な地形などもVantageに持って行けばレンダリングなしで確認できるので、そこはメリットです。

CGW:ありがとうございました。今回はV-Ray 5の検証や、VantageなどV-Rayに特化したエンジンも含めて使用して頂きましたが、改めてV-Rayの世界は総評していかがでしたか。

荒川:Vantageは建築系などで有用なのではと感じました。レンダラ選定を行う側からすると、今の時代は「機能そのもの」はどれも似通って来ているんですね。なので、選ぶきっかけや、乗り換えるにあたっては、ものすごいメリットがないと難しいのが正直なところです。長年のArnoldのノウハウもありますから。

佐藤:これまでGPUレンダリングをあまり使用したことが無かったので半信半疑でしたが、思った以上に高速できれいな画が出ていたので、実用度は高いと感じました。

CGW:ありがとうございました!

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