<3>若手の台頭
クリスタルの質感が印象的な三角錐の表現。こちらはAfter EffectsのプラグインPlexusのデモリールから着想を得たそうだ。この表現をHoudiniで作成するにあたり、近くの指定した数の頂点に対してポリゴンを張るVOPのPoint Cloud Openが用いられた。
3−1:Plexus調の表現
近くのポイントを検索しライン化ならびにポリゴン化させるためのWrangleノードを示した状態
(左)ポイントの状態/(右)Line(線)に変換した状態
(左)さらに色を変化させた状態/(右)ポリゴン(面)にした状態
Performance Monitor Paneで計測した処理時間の比較。600ポイントを24フレーム処理。上がForEach SOPsで組んだもので処理時間は2.492秒、下がWrangleで組んだもので処理時間は0.064秒。約39倍の高速化に成功した
実際のコード
比較動画(左が改良前、右が改良後)。目的に応じて、各ノード内のコードをカスタマイズできるのもHoudiniの特徴のひとつだ
複雑な隆起した形状から三角錐が出来上がっていくカットはディスプレイスメントのアニメーションとSSSをVOPで組み合わせることで凹凸が激しい状態ではSSSが強く、ディスプレイスメントが収まると共にSSSが弱くなるように調整された。こちらのカットを担当した田中氏は実は今作で初めてHoudiniを使うのみならずこれまではモデラーとして活躍してきたアーティストだ。
「業務でショットワークを手がけるのは初めてで、なおかつ短納期の案件だったのでとても緊張しました(苦笑)。ですが、3ds Maxなど他の3DCGソフトで作業する場合は敬遠しがちなディスプレイスやSSSを使用してもMantraはそこまで重くならないことに驚かされました。また、プロシージャルによってジオメトリ、マテリアル、レンダリングまで全てのフローを繋げて作業できるというのも新鮮でしたね」(田中氏)。
3−2:田中氏の担当ショット
SOPのキャプチャ画面。ジオメトリのデフォームは、パーティクルのポイントアトリビュートをジオメトリのアトリビュートにコピーしてオブジェクトのデフォームを行なっている
VOPの内部のキャプチャ画面
VOPの内部のキャプチャ画面。Point VOPによってポイントの位置情報をコピーする。大元のジオメトリのポイントとパーティクルのポイントの距離をDistanceノードで計算し、出た数値をBind exportでアトリビュートに追加する。ここで追加されたアトリビュートをマテリアルのアニメーションのためのマスクに使用。マテリアル内部でMixノードを作成し、マスクをMixノードのBiasとして使用することでプロシージャルにマテリアルを変更することが可能
最終的なプレビュー
3−3:若杉氏の担当ショット
シミュレーションされたものに対してタイムシフトを適用し、動きにストレッチを付けている。「"よくできたHoudiniチュートリアル"に見えてしまわないよう、井上さんのリファレンスに着想を得ながらも、そこへいかにして『牙狼<GARO>』の世界観を込められるのか。アーティスティックに仕上げることにこだわりました」(若杉氏)