>   >  圧倒的なリアリティ! 8K×S3D×22.2ch立体音響『Aoi - 碧 - サカナクション』
圧倒的なリアリティ! 8K×S3D×22.2ch立体音響『Aoi - 碧 - サカナクション』

圧倒的なリアリティ! 8K×S3D×22.2ch立体音響『Aoi - 碧 - サカナクション』

Topic 2:立体視差&3DCG

<作業中のプレビューと実際の8K上映のギャップに苦悩>

3DCG制作については、過去のS3Dや8Kコンテンツの制作経験からデータ管理とクオリティを維持しつつレンダリングコストをいかに抑えるかが課題になると考え、まずは要素ごとに制作手法の検討が行われた。
「MayaとSoftimage、そしてAfter Effectsといった複数のツールをバランス良く使い分け、レンダリングの負荷やスタッフの負担を分散することにしました。世界観の統一と立体設計を順守すれば複数のツールが混在しても作業に大きな支障はありません。ただ、制作当初は8Kという大容量のデータマネジメントに気がとられてしまい立体視にまで意識がまわりきらず、オブジェクトが予想以上に飛び出していたり突き刺さっていたりしました(苦笑)。

また、作業中は最大でも50インチのモニタでしかチェックできなかったため、本番と同じ250インチに映してみると数ピクセルの誤差が数倍に拡大されてしまうという問題もありました。8K×S3Dは、HDサイズの立体視とは完全に別物でしたね」と、平嶋将成CGIスーパーバイザーはふり返る。

8K×S3D×22.2ch立体音響『Aoi - 碧 - サカナクション』

海底のシーンはMayaで作成しているが気泡はAEのParticularを使用しているためMTが開発したアプリを用いてMayaと同じカメラリグをAE上で再現しLRの出力を行なっている。海底を泳ぎ回る魚の群れはSIのICEを用いてベースの動きを作成し、その後Mayaに持ち込みアニメーションの微調整を行なっている。
「8K×S3Dは奥行き情報のレンジも広いため、少しの移動幅で魚が想定以上に飛び出て見えたり見えなかったりするのでシミュレーションだけではコントロールが難しいんです」とは、前半の海底シーンをリードした森田 輝CGI デザイナー。

Mayaでの作業自体はフルHDとさほど変わらないが、出力や画像ファイルの転送には膨大な時間がかかるためトライ&エラーが非常に限られるというジレンマもあったとか。同様に出力のミスやエラーも許されないため、ラングラー(レンダリングを管理する職種)的なスタッフが1名配備された。
「冒頭シーンで描かれるグリッドの太さも作業時と本番の8Kスクリーンで見たときとでは印象が大きく異なりました。数値だけでなく、8Kをイメージして画づくりをする必要にせまられました」(原口麻衣子CGIデザイナー)。

■自社開発したS3D設計ツール



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NHKメディアテクノロジーが自社開発した「S3D Tool」アプリ版のUI。適切な立体設計をするためには、(1)上映スクリーンの大きさ(2)撮影時のカメラセッティング(Inter Axial、Convergence Distance、Focal Length等)、(3)視聴条件(View Postion、Eye Distance等)という3要素が必要となる。本ツールでは、これらの要素をパラメータとして、最適な撮影条件が手早く算出できる

■3DCG(その1)海中シーン



8K×S3D×22.2ch立体音響『Aoi - 碧 - サカナクション』

<A> 海中シーンの背景用Mayaシーンファイル

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<B> 同シーンの魚群アニ メーションデータ

  • 8K×S3D×22.2ch立体音響『Aoi - 碧 - サカナクション』
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<C> 8K×S3Dという膨大なデータ負荷への対応から、魚群アニメーションを作成する上ではSoftimageのICEを用いて、全体的な動きや質感のトライ&エラーをプロシージャルに行い、そのデータをMayaへ読み込みブラッシュアップするというワークフローが採られた。「特に画面から飛び出るような大きな動きについては、手付けで細かく調整しました」(森田氏)

8K×S3D×22.2ch立体音響『Aoi - 碧 - サカナクション』

<D> 同シーンのAEコンポファイル。8Kサイズのコンポジットワークは非常に負荷が大きいため、まずはHDサイズで作業し、演出チェックが済んだものを8K用コンポファイルへ流し込むという手順で作業を徹底したという

■3DCG(その2)地球に浮かぶモーションタイポグラフィー



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<A> クライマックス前に登場する、地球の上に歌詞が浮かび上がるモーションタイポグラフィーは、Maya上で3Dベースで作成。地球はAEプラグイン「Trapcode Form」を利用することで作業負荷が軽減された

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<B> AEのコンポファイル。「Mayaによるプリビズ作業時に設計した、3D空間の数値やカメラリグをAE上で再現することでCGで作成したタイポグラフィーとの合成を行なっています」(原口氏)

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Topic 3:S3D収録&コンポジット

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