■STEP 04:ディテール修正
・01:筋彫りの調整
デジタル造形による筋彫りも便利ですが、仕様として深さと太さを決められてない限りは、(主にフィギュアなど)画面上でどんなに気をつけて筋彫りをしても、出力後に細かったり浅かったりすることが多々あります。再出力するにはコストと時間を浪費してしまうので、エルドラモデルでは手作業で修正しています。慣れていない方は、ガイドテープなどを貼り、それに沿って先の細いタガネやケガキ針などのツールを使ったり、手で彫り直さなくても済むように デジタル造形の段階であらかじめ太く深めに彫りを入れておくといいと思います。
<A>彫りたいラインに沿って切り込みを入れる/<B>最初に引いたラインの横に彫りたい太さ分(0.05~0.1mm)距離を空けて刃を置く/<C>断面がV字になるように刃を傾け、最初に引いたラインと平行を保ちながら、刃を滑らせていく/<D>この応用 で、複雑なディテールを彫ることも可能
・02:複雑な筋彫り
単純な筋彫りモールドだけではなく、服などの凸モールドやパーツとパーツの重なった部分をはっきりさせたい場合などにも、上述の方法で彫り直しています。私の場合は、デザインナイフを使いフリーハンドでV字に刃を入れて筋彫りを施しています(人によって フリーハンドの筋彫りの方法は異なります)。
(左)仕上げ後の状態/(右)赤ラインが筋彫りを施した 箇所。この技能を身につけるには、プラモデルや塗装済み完成品に色々と彫ってみるのが有効だろう
・03:嵌合の調整
筋彫りとは逆に、パーツとパーツの嵌合部分には微妙な隙間が生じることがあります。そんなときはパテを盛って、やすりで磨くというオーソドックスな手法が実は最も有効かつ確実だったりします。
片方のパーツにグリスを塗り、もう片方のパーツにパテを盛ってパーツ同士を合わせる。パテが硬化したら、はみ出たパテをやすりなどで調整
・仕上げの作業は、さらに続く。
いかがでしたか?今回は、基本的な表面処理のながれを解説しました。ですが、誌面スペースの都合もあり、サーフェイスがけについては割愛していますし、実は応用テクニックとして、デジタル造形でやりきれなかった造形を手作業で補正する作業、仕上げ段階の表面処理、嵌合調整の応用などなど、ほかにも様々なテクニックがあるのです。次回は、そうした部分を中心に解説していきたいと思います。
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造形スタジオ「エルドラモデル」
【Profile】
潤(エルドラモデル)
2014年から造形スタジオ「エルドラモデル」として活動を開始、エルドラモデルの全体的なとりまとめを担当。ガンダムや戦隊の合体ロボが好きで、2004年頃からロボ原型師として、可動や固定物をつくっていたのですが、時代のながれで女性フィギュアをつくるようになり、キャストオフフィギュア(服が脱げる)や可動物、スケール物を経験してきました。約3年前からデジタル原型を導入してはいるのですが、未だに手作業なしで原型を完成させるのは難しいと感じています。本業のかたわら、他社さんのデジタル原型師補佐(出力品磨き等、原型のブラシュアップ)なども行なっています。ニコ生で趣味造形などを公開しているときもあるのでよかったらチェックしてみてください。
増宮宏一
東京在住のなんでも原型師。94年頃からポリパテやスカルピー等各種素材での手作業でカプセル、食玩、プラモデルの試作、塗装済み完成品等の原型を製作。3年前に3D-GAN主 催の3Dモデリング講座で Metasequoiaを学んだのを機に、デジタル原型の道に。今年4月から潤と共に「基礎から学ぶフィギュア原型のための手作業講座」を開始予定。デジタルデータは作れるけど、手作業経験がなくて、仕上げに困っている生徒さん募集中です!
「増宮宏一の作品倉庫」