<3>攻撃モーションの基本
最後に登壇した川村氏は「攻撃モーション」についての実演デモを行なった。まずは解剖学的視点からモーション作成時の注意点が語られ「骨、筋肉の連動」、「動きのメカニズムを理解する」、「シルエットの重要性」の3つについての説明がされた。
まずは片手を上げる動きを例に人体の構造上必ず体はバランスを取ろうとすること。「手が上がったことにより肩の骨が引っ張られ、それに伴い胴体が傾きます。胴体が傾いたことで腰(重心)の位置が変わる......といった具合に、全身の筋肉を使っているのです」と川村氏。また「動きのメカニズム」について「ヒップファースト(=全ての動きは腰から始まる)」を挙げ、攻撃モーションとムチは同じメカニズムで動作することなどを紹介した。
そしてGIFアニメーションによる作例解説では、素早い動きの中にわかりやすいシルエットがあると人の目を惹くことについて触れ、Mox社内では「空気を入れる」と呼んでいる共通用語的なものがあり、物通しが重ならないようにシルエットへの意識を大切にしているとのこと。
ひと通りの説明の後Mayaでのモーションの実作に入る川村氏。まずはファイティングポーズのキーポーズの作成では右利きの人物は左足と左手が前(格闘技の基本)で顎を引き相手を見ることに注意すること。そこからまわし蹴りのモーションに入り、桜井氏と同様に「キーポーズの作成→調整→アレンジ(グラフエディターでの調整)」を繰り返しながらモーションを詰めていく。ポイントとしてインパクトを強く見せたい時は攻撃の直前に腰を少し上げて攻撃後に腰を少し下げるとリズムが出て良いそうだ。
さらに「ダメージモーション」の制作時では、少し大げさ(痛そう)に動きをつけることを意識すると良いと、川村氏。ダメージを受けた際は速い動きでだんだん落ち着いて収まるといった感じだろうか。動きの方向性などはディレクターの好みにもよるが最後に収まる(落ち着く)という点はあまり変わらず、当然ながらどのような攻撃を相手がしてきたかによりモーションも変わると語っていた。
最後に川村氏が動きを付ける上での心得として以下の3つのポイントを紹介した。
1.迷い始めた時はいったん間を置き、休憩を取ること。または別のカット作業に入り、目を慣れさせないようにすること。
2.Mayaのタイムスライダー上でアニメーションを再生をさせないこと。再生は必ずリアルタイムで確認するようにすること。
3.作業が進んできたら画面から離れて少し遠くから見て、全体のシルエットを見るようにすること。
3氏の講演から感じたことは、Mox社内では動きをつけるためにリファレンスを用いることや、ポーズや特にシルエットを大切にしていることが伝わってきた。それにはやはり普段からの動的観察力やセルアニメーションの基本知識、運動力学や人体構造に至るまで広い知識を身につけておくことがかかせない。モーション作業はテクニックだけではない知識とセンスが問われてくるのではないだろうか。
セミナー修了後に設けられた懇親会の様子
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モックス「手付けモーション制作セミナー(大阪会場)」
開催日:2016年4月22日(金)
場所:TKP大阪淀屋橋カンファレンスセンター ホールA
主催:ダイキン工業