Topic 2 背景モデルやマットペイントの作成
NUKEを使用し効率的に背景をつくる
本作に使われている背景は、ディストピア的な世界観がよく表現された非常にクオリティの高い仕上がりになっているが、Mayaでモデリングした背景とマットペイントで作成した背景素材を上手くミックスすることで、効率良くクオリティを上げる工夫が施されている。背景はMayaで直接レンダリングされている素材もあるが、多くはMayaで作成したメッシュデータをNUKEにコンバートし、NUKE上で2D素材をプロジェクションしてレンダリングされている。
背景のデザインは、デザイン画を描くというよりは、旅行したときに撮影した田舎の寂れた風景や錆びた看板の写真など、撮りためた写真資料を3Dで素材として配置しながら考えていったという。「カメラワークがあって何回も登場するような背景は少ないので、UVを展開してテクスチャをマッピングしているような背景アセットは少ないですね。大きなカメラワークがある背景は3DCGで作成していますが、その他の背景は3DモデルにNUKEとPhotoshopでペイントオーバーしたり、2Dのマットペイントを制作したりしています」と祭田氏。マットペイントを多用しているというが、鎖を揺らすなど、完全に背景が止まって見えないように、必ず何か動く要素を背景に付け加えているという。「キャラクターがいるときは背景が止まっていても気にならないのですが、背景だけになってしまうと静止画だということが目立ってしまうので、特に気を遣いました」とのこと。背景制作には当初After Effects(以下、AE)を使うことを考えていたが、全ての背景素材を個別に制作していては時間が間に合わないことから、効率的に背景を制作する方法を調べていくうちに、NUKEを使った背景制作に行き当たり、メッシュデータをNUKEに読み込んで2D素材をプロジェクションする方法に固まったのだという。
3DCGによる背景の作成
Mayaでモデリングして背景を制作した例。2つのカットとも大きなカメラワークや扉が動くなどのアニメーションの要素が必要なカットとなっている
巨大な建築物の俯瞰カット用の背景モデル。大胆にパイプの間をカメラが抜けていく演出になっているため、Mayaで作成したカメラのアニメーションデータをNUKEに読み込んで、トラッキングしながらテクスチャを プロジェクションするなど、非常に手の込んだカットになっている
完成した実際のカット。このような3Dのメッシュを活用した背景制作では、3Delightを使ってMayaでレンダリングしたものにNUKEでペイントオーバーを施したものがほとんどだという。3Dlightはライトごとに細かいパスを出力することができるため、後からライトの強弱を調整したり、色合いを変更することも容易で重宝したという
マットペイントの作成
マットペイントを使って制作した背景の例
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2Dのマットペイントは祭田氏が折に触れ撮影しておいた写真素材などを使い、Photoshopを使って構築していく
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ペイントで要素を描き加えたり、3DCGで作成したアセットを配置しながらマットペイントを完成させていく
最後にカラーグレーディングを施して、上下をクロップして完成だ
NUKEによるコンポジットの作業画面。コンポジットはNUKE内の3D空間に素材を配置して、カメラワークによる視差も表現できるように組まれている。このように背景制作やコンポジットではNUKEを中心としたワークフローが組まれているが、祭田氏がNUKEを勉強し始めたのは昨年夏のKLab Creative Fes'15が終わった後くらいからだという。「海外で仕事をしたいので、なるべく海外のプロダクションでよく使われているツールを使っておきたいと思い、勉強しました」