<2>CGアニメ制作会社によるトークセッション
「道産子カモン!3DCGでエンタメを変えた勇者たち」
トークセッション第2部では、日本を代表するプロダクションのトップたちが登壇した。テーマは、「現場で働いている人と環境」。登壇者は以下の5人だ。
●神風動画 代表取締役 水崎淳平氏(モデレーター)
●ポリゴン・ピクチュアズ 代表取締役 塩田周三氏
●サンジゲン 代表取締役 松浦裕暁氏
●グラフィニカ 取締役 吉岡宏起氏
●サイバーコネクトツー 代表取締役 松山 洋氏
▲壇上左から、塩田周三氏(ポリゴン・ピクチュアズ)、松浦裕暁氏(サンジゲン)、吉岡宏起氏(グラフィニカ)、松山 洋氏(サイバーコネクトツー)
セッションは、「会場の皆さんに、まず、働くイメージを持ってもらいたい」という松浦氏の発案により、各社の「あるスタッフの1日」を軸に展開された。
ポリゴン・ピクチュアズに所属するラインプロデューサーの1日を紹介した塩田氏は、「プロデューサーにいちばん大切なのは、お金に責任をもつこと。限られた予算と時間の中で、いかに良質な作品を作るか。このプロセスをスタッフ全員と共有しなければいけない」と力説。また、ラインプロデューサーは、プロジェクトのメンバーと、タスクや進捗を毎日確認することが仕事で、コミュニケーション重視の業務が多いと解説した。
続いて、吉岡氏からは若手女性作画監督 の1日が紹介された。作画監督とは、各担当から上がってきた原画の統一を図るために原画を修正していく仕事で、技術と経験が必要とされる職種。彼女は、「他社で原画のキャリアを積んでから転職し、グラフィニカ入社後にすぐに力量を認められて作画監督に抜擢された」とのことだが、「26歳で作画監督とは、早い!」と他の登壇者から驚きの声が上がった。
入社1年目の若手CGアニメーターの1日の紹介したのは、松浦氏。サンジゲンでは新卒採用の場合、最初は必ずオペレーターに就くが、早ければ2~3カ月でアニメーターに昇格できるという。「ただし、試験を突破することが条件です。仕事が滞って納期に間に合わないなど、トラブルがあったら困るので」との弁に、一同がうなずく場面も。
▲モデレーターの水崎氏(神風動画)は、同社の若手監督の1日を紹介。併せて、事前に申請すれば、早出・早帰りなど、個人の予定によって勤務時間が調整できる同社の制度も語られた
「神風動画では、若いうちに監督に昇進できる仕組みを考えている」と語る水崎氏は、入社2年目の監督をクローズアップした。「若い女性がターゲットのゲームを制作するときには、ユーザーに近い感覚のスタッフが適任」とのこと。また、監督はチェック業務が多いが、「例えば、時短勤務のスタッフから上がったデザインを優先的にチェックするなど、細かい気遣いができるのは女性」というのも、彼女が監督に抜擢された理由だという。
ここで各社の労働環境について触れておく。「CGアニメ業界は、厳しい業界なのでは......?」と、志望に際して不安に思っている学生もいるかもしれない。しかし、セッションを通して、どのスタッフも他の業界と変わらない時間帯に出社・帰宅し、休憩時間もしっかり取れているとコメントされていた。これについて水崎氏は、「業務過多を改善する動きが、各企業で活発になっています。規則正しい時間帯で働くことが、作品のクオリティ向上にもつながりますから」と強調した。
では、スタッフを守るために、企業のトップはどのような仕事をしているのだろうか。最後に、松山氏がサイバーコネクトツーのトップとしての仕事を語った。彼の1日は、出社後、福岡本社と東京スタジオとのテレビ会議から始まり、プロジェクトリーダー会議、宣伝広報室のミーティング、さらには外部との会議も多数。その隙間を縫って、スタッフが持ってきた各プロジェクトの進捗をチェックする。
「現在、12のプロジェクトを見ているので、会議の数も多いし、チェックの時間も相当かかります」と語る松山氏の帰宅時間は深夜に及ぶことも多いという。「"この時代にしっかりと名を刻んでやる!"くらいの覚悟をもって会社を経営しています。いちばん大切なのは仕事、そう決めて生きているんです」と説く松山氏の真剣な眼差しが印象的だった。
▲日本のCG業界を牽引する5社のトップたち。業界関係者はもとより、業界を目指す学生からも絶大な支持を集めている。「私に憧れて入社してくる人間もいるので、ランチなどの時間を使って、できるだけ多くの社員と話す機会をつくっています」(松山氏)