TOPICS 03 ステージ演出
キャラクターたちがライブを行うステージセットも、A-1 Picturesが制作を担当している。美術設定を基にまずはラフモデルを作成し、カメラワークを考慮したバランス確認が行われた。ラフモデルを使って実際にレイアウトをとってみて、観客との距離感やステージの高さなどを調整していったという。ステージにキャラクターのアニメーションを加えた各カットの制作については、演出側から要望に従って進められていった。「QUARTETNIGHTとHE★VENSは実際のライブ演出に近いかたちのカメラワークになっていましたが、ST☆RISHは主役のグループということもあって、あまりカメラを動かさずに正統派アイドルとして振付をカッチリ見せたいという要望が監督からありましたので、カメラワークのほかに振付の統一感などに気をつけながらカットを制作しています」(中島氏)。
キャラクターの見せ方以上にステージの制作で難しいのは、観客席を埋め尽くす観客の処理だ。数万の観客がペンライトを振るといった演出もあるため、いかに省力化しながら、演出を実現していくかがポイントになったという。まず、カメラがダイナミックに動いたり、引きで観客が大量に映り込むカットは、Mayaと群集シミュレーションプラグインGolaemを使って作成されている。その他のカットでは、観客のテクスチャをマッピングした平面ポリゴンを配置したり、アリーナ席の観客などには簡易的なモブキャラクターを作成・配置して対応している。また、全ての背景を3DCGで出力するのは効率が良くないため、一部背景は美術で対応したり、遠景のペンライトの動きについては、モブキャラクターのマスクとペンライト素材を撮影サイドに渡して撮影時にコンポジットして処理されているという。「Golaemでの群集アニメーションは社内でしか作業できない事情があり、時間的な問題が危惧されていました。そこで、背景美術や外注スタッフでも作業できるようテクスチャやモブキャラといった素材を提供することになりました。カットによって3パターンから手法を選べる状況をつくることができたので、その分苦労が実ったかなと思っ ています」と宮地氏は語る。ペンライトの色はグループによって使用される色が決まっているが、ST☆RISHのカラーである7色をベースとして、After Effectsでの色替えによって対応しているという。
ステージ制作のながれ
ステージの美術設定
美術ボード
3DCGで作成されたライブステージは、美術スタッフが作成したステージの美術設定を基にCGチームがまずラフモデルをベースとした美術ボードを作成し、演出陣とスケール感や細かい仕様、バランスが検討されていったという。方向性が決まったところで、ラフモデルを基に本番用のステージがつくり込まれていった
本番モデルでは、観客とアイドルが極力被らないようにステージの高さが変更されたり、モニタの位置なども修正が加えられている
また、照明や電飾なども非常に細かくつくり込まれた
階段など、大写しになるような部分は美術にテクスチャ素材を発注して作成された素材が使われている。逆に観客席など暗く落ちてしまうような部分はCGルームが主導で作成したとのこと
観客のペンライト制作
アリーナを埋め尽くす観客は、Golaemを使用した群集シミュレーションと、簡易モデルを使用したもの、板ポリゴンにテクスチャを貼ったものなど、複数の手法をカットによって織り交ぜて表現している
【画像左】のように広い範囲で観客が捉えるカットではGolaemを、【画像右】のような近接するカットではオブジェクトで作成したペンライトを使用している
また、カットによっては3Dシーンで観客を配置するのではなく、撮影段階で合成していることもあるという
そのような場合には、CG側で【上の3つの画像】のような観客がペンライトを振っている連番のループ素材を撮影側に渡して、角度に応じて合成処理を行なっている