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時流に即時対応したバージョンアップ、「Houdini 16.5」レビュー

時流に即時対応したバージョンアップ、「Houdini 16.5」レビュー

KEY FEATURE 2 Crowds

手付けアニメーションとシミュレーションの双方を活かせる群衆

Crowds(群衆)はHoudiniバージョン14.0で実装されて以来、バージョンを重ねるたびに着々と進化を続けています。16.5ではHierarchal(階層型)エージェントの実装により、馬やバイクなどの乗り物と、それに乗るキャラクターが相互に影響しながら動き続ける群衆のシミュレーションの実現も可能になりました。完全に結合をしてから動きを与えるのではなく、オブジェクト同士を親子関係で結んだ上で個々をコントロールするため制限のない制御が可能で、大量のオブジェクトがある場合の多様化にも役立ちます。それに加え、角加速度を考慮したトランスフォームの計算により、カーブを曲がる際のバンク(傾き)を与えることができ、より現実的な動きの表現が可能になりました。

Hierarchal(階層型)エージェント


馬などにまたがるキャラクターの群衆をシミュレートでき、さらにカーブを曲がる際には角加速度を基に傾きを表現することも可能です。慣性を感じさせるため、スピード感や動きの説得力に大きく影響します

また、ラグドールに関しても数点のアップデートがなされています。従来はラグドール使用時にはキャラクターの全身を完全にシミュレートされた動きにするしかなく、手付けアニメーションと自然にブレンドすることが困難でした。そのため思い通りのポーズになるようにコントロールすることが難しく、いかにもラグドールらしい動きが目についてしまうこともありました。Houdini 16.5では身体の一部のみをラグドールとしてシミュレーションで動かし、その他の部位を手付けアニメーションにより動かして自然にブレンドができるようになったことで、アーティストがコントロールしやすく自然な動きを実現することができるようになっています。

筆者の個人的な予想としては、おそらく将来的にラグドールのシミュレーション自体にもさらに重量感やキャラクターの人間としての意識を感じられるような説得力のある動きが実現できるようになるだろうと考えており、期待に胸を膨らませています。

進化したラグドール

ラグドールを片手で天井にぶら下げて、横から球体を次々にぶつけてみました。Houdini 16.0で作成した【画像左】の例では完全にラグドールだけでコントロールされているため、人間のもつ力が感じられず質量のない人形のようですが、Houdini 16.5で作成し【画像右】の例では球体をぶつけられても元のぶら下がりアニメーションを保持しようとし、より人間味が感じられます

手付けとラグドールのブレンド


右側が単純にキーフレームアニメーションで動いており、左側は同じアニメーション情報をもちながらもラグドールとして剛体に上から押さえつけられているという例です。衝突してラグドールとしての挙動をしながら、キーフレームアニメーションの動きも自然にブレンドされています

KEY FEATURE 3 Modeling

高精度モデルの利用に力を入れたアップデートの目立つモデリング

モデリング関連のノードや機能もバージョンアップのたびに更新や追加がなされ、とどまることなく発展しています。バージョン16.5では特に外部ツールによるスカルプティングやフォトグラメトリーによって生成されたハイディテールなモデルを扱うための機能が充実したような印象を受けました。

まず、PolyReduceノードのシステムが一新されています。Houdini 16で新たに追加されたBooleanのようにまったく新たな計算法を取り入れてあり、メッシュの削減精度は非常に高くなっています。特徴点の密度を保ったままその他の箇所のみ削減を行うことや、シンメトリーなトポロジーを保ったまま削減することなども可能です。従来のPolyReduceではUVが壊れてしまうことがあり、筆者個人としてはUV境界部分を保持したままPolyMesh等でメッシュを再定義することで乗りきることも多々ありました。新たなPolyReduceでは見た目にほとんど変化がなく大々的な削減をすることが可能で、比較的早い計算時間で実行できます。

PolyReduceの高精度化



  • Houdini 16.0でReduceを施した例。単純にPolyReduceを接続するだけではUVを考慮せず単純にポイントが削減されていくのみで、見た目が壊れてしまいます



  • Houdini 16.5でReduceを施した例。こちらはテクスチャを表示した場合でも、見た目にほとんど変化がないまま削減できていることがわかります

UV Layoutノードなども機能が充実し、展開されたUVをより自由に自動レイアウトすることが可能になりました。Pack Island In Cavities(空洞内に島を詰める)パラメータにより無駄な隙間を極限までなくして効率的な配置にすることができ、くり返し処理でシェルの回転の最適化をすることも可能です。

高性能なUV Layout


UV Layoutを使用した例。ほとんど隙間がなくぎっしりとレイアウトされています。当然ながら、自動レイアウトをした後に他のノードを利用して自由に編集することも可能です

Game Development Tools(SideFX公式から配布されているゲーム制作に役立つHDAや機能群)も刻々と発展を続けています。また、リトポロジーツールであるTopoBuildにも、エッジコラプス、エッジスライド、そしてスキンモードが追加され、3Dスキャンデータの高解像度モデルからゲームなどに使う低解像度モデルを作成するのがさらに楽になりました。スキンモードは、下図のように断面となる線(紫)をカーソルで描いた後に方向を示す線(青)で描くことで、その部分に低解像度メッシュを再構成します。この低解像度モデルに高解像度モデルのディテールをテクスチャとして焼き込むことが可能です。

TopoBuildによる新スキンモード


TopoBuildノードの新たなスキンモードで、断面となる線(紫)と方向を示す線(青)をカーソルで簡単に描き、その部分に低解像度メッシュを作成することが非常に楽になりました

Summary
ユーザビリティを上げつつ将来性のあるバージョンアップ

16.0のインターフェイスのように完全に一新したというほどのアップデートは16.5では少ないかもしれませんが、Narrow Bandのように長年なんとなく悩まされていたことを解消してくれるホスピタリティにあふれたバージョンアップに感じました。ここで紹介した内容以外にも細かな更新点は多々あります。また、新たに増えたノードや機能はどこか次なるバージョンでのさらなる強化を匂わせるようにも感じるため、今後に期待がもてる内容と言えるでしょう。



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.232(2017年12月号)
    第1特集:Houdiniイズム
    第2特集:3DCGポートレート 2017

    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2017年11月10日
    ASIN:B076KVMCC1

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