>   >  競輪選手をフォトグラメトリーで3DCG化。AVATTAによるガールズケイリンのビルボード制作事例
競輪選手をフォトグラメトリーで3DCG化。AVATTAによるガールズケイリンのビルボード制作事例

競輪選手をフォトグラメトリーで3DCG化。AVATTAによるガールズケイリンのビルボード制作事例

コスチュームの作成


衣装デザインはキラリトのアーティスト、前田ヒロユキが担当。「近未来風のユニフォームというご要望でした。あまりSFっぽくするとリアリティに欠けてしまいますし、堅い印象になりがちなので、さり気なく近未来チックで、とにかくかわいく健康的でセクシーな感じにしました」(前田氏)。このイラストはあくまで衣装デザインとして描かれたものだが、このキャラクターがクライアントに気に入られ、現在はガールズケイリンのポスターや公式Webサイトなどで使われている


3DデータはMarvelous Designerで制作された

ヘアの作成



髪はフォトグラメトリーではなく、Hair Farmで制作された。非常に自然につくられている

ドローンとレーザースキャナによる競輪場の撮影

競輪場のデータ化にはレーザースキャナと、ドローンや手持ちカメラでのフォトグラメトリーが併用された。ドローンはカメラを取り付けて飛ばし、レーザースキャナが計測できないような角度を撮影している。このドローンは桐島氏自らが操縦。「屋内ではGPSが利かないので、操縦が難しいですね」(桐島氏)


ドローンで撮影した写真。屋根の鉄骨から近い位で撮影されていて、手持ちカメラやレーザースキャナの死角になっている個所を押さえているのがわかる。ドローンでなくては不可能な撮影だろう


高精細なテクスチャをつくるために、手持ちカメラでも撮影が行われた


レーザースキャナはFAROのA330を使用。ゼネコンで測量に使われるような高精度な機材で、300メートル先までミリ単位でデータ化できるという。これらを建物の中で30箇所ほど、巧く交差させながら移動して計測した。建物内の半分をスキャンし、残りはミラーリングしている。スキャンに要した時間は半日ほどだが、スキャン自体よりもデータを組み合わせたり、クリーニングするのに時間がかかったとのことだ。また、細かい観客席はフォトグラメトリーでひとつをつくって、それを大量にコピーするというように、後でデータを足していく部分もあった


レーザーでスキャンされた天井部分。複雑なところまでスキャニングできている



  • ドローンとレーザーのデータを組み合わせたもの。両方のデータをCapturing RealityのRealityCaptureで統合している



  • HDRIとメッシュデータを併用したレンダリングテスト。自然な仕上がりだ

選手と一緒に登場するマスコットキャラクター

キラリトが衣装デザインの際にキャラクターの横に描いたマスコットも3Dデータ化されている


ZBrushモデル

レンダリング後。とてもかわいらしい

自転車の作成

自転車についてもキラリトが用意した設定イラストを基に、3Dデータがつくられている。実際の競輪の自転車とはちがい、流麗で未来的なデザインだ。この自転車のように3Dスキャンされた実際の人間や建物と、実際には存在しないものが違和感なく共存するのが3DCGのおもしろい点だろう

新しい技術で表現するビジュアル

プロジェクトをふり返って桐島氏は「リアルなものをつくるハードルが高くて時間と労力がかかりました。しかし、そこを乗り超えたので、次回からはもっとビジュアルを良くすることに集中できると思います。リ アルにできても、ビジュアルとして良くないと意味がないですから」と語ってくれた。リアルな3DCGは手法であり、あくまで目指すのは高品質なビジュアルだという、写真家らしいこだわりだ。

桐島氏の写真家ならではのライティングや構図への深い造詣は、良い意味でCG業界に染まっておらず、ほかとはひと味違うスタジオという印象だ。加えて幅広い3Dスキャンデータの展開や、ドローンなどの新しい技術も貪欲に取り入れる姿勢こそが、桐島氏の語る「未来の広告プロダクション」を生み出しているのではないだろうか。

今後は3DCGを使ったVR、アニメーション、スチルのファッションアートの個展を予定しているという桐島氏。「ハイクオリティのVRアートは世界でも珍しいと思います」という桐島氏の今後に期待だ。

3Dデータからフィギュア化

作成した3Dデータを使い、選手のフィギュアも作成中。ガールズケイリンのファン向けのプレゼントとして企画が進められている

桐島氏のライティングディレクション


桐島氏がデジタルアーティストにライティングの指示を出した際の一例。協力を依頼した外部のデジタルアーティストの中にはライティングに詳しくないスタッフもいたため、桐島氏が手描きの指示書やSkypeで細かく説明したという。「ライティングは非常に大事で、クオリティが大きく変わってきます。デジタルアーティストももっとライティングの知識に関心をもってもらえたらいいなと思います」(桐島氏)

キャラクターの多様な展開


キラリトが衣装デザインのために描いたキャラクターがクライアントに気に入られ、「ガールズケイリン総選挙」のポスターに登場。予想を超えて多方面で活躍するキャラクターに成長している



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.232(2017年12月号)
    第1特集:Houdiniイズム
    第2特集:3DCGポートレート 2017

    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2017年11月10日
    ASIN:B076KVMCC1

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