<2>『オデスト』のロゴができるまで
StudioGOONEYSが『オデスト』のプロジェクトに参加した当初は、ロゴデザインまでを同社で手がける予定ではなかったが、アニメーションの制作中に同社代表の斎藤瑞季氏がプロデューサーに提案したことにより大森氏がロゴデザインを行うことになったという。「カワイイものからカッコイイものまで、幅広くロゴをつくれるCGプロダクションは少ないんじゃないでしょうか」と大森氏は語る。
ロゴのデザインは、顔を合わせての打ち合わせのときに、その場でホワイトボードにラフを描くことから始まった。「お客さんと話をしながらラフを描いたり消したりしていくと、何を求めているかがわかってきます」(大森氏)。豊富な経験から培った巧みなコミュニケーション力で、クライアントの中に眠るイメージを引き出していく。 『オデスト』のロゴは、基本的には「王道の雰囲気でメインカラーは白やブルー」、意匠としては「無限のつながり」というキーワードのもと、時間や時計がモチーフに使われている。主人公と一緒に旅をするアスセナのシルエットをロゴの後ろに置くのも初期からあったアイデアだ。
打ち合わせ後は自分の机に戻り、話に出なかったパターンも含めてラフを重ねる。 目処がついたところでIllustratorで複数の案を清書してクライアントに提案。ここでいったん別の方向性のアイデアも提示して、クライアントの希望通りというだけではなく、プラスアルファを足して考え方を広げていくのが大事だという。
そしてラフの段階で表現されていた「O」の文字への時計のような装飾に、さらに「S」に無限(∞)のイメージを加えて、大筋で90%ほどまで固まったところから、さらにクライアントとの細かいやり取りにより、微調整がくり返される。完成までの制作期間は、当時絵コンテの仕事も並行していたということもあり、1ヶ月以上かかっているとのこと。
クライアントとの打ち合わせの後、さらに手描きでブラッシュアップしたもの。Oに時計、Sに無限(∞)のモチーフが入ってきているのがわかる。また、左側の画像の下にあるような、今までとちがった案も織り交ぜて検討している。この案はクライアントには見せていない
今回のロゴデザインについて、大森氏が設定したテーマのひとつに「高級感」があった。そのため、3Dを用いた立体的なロゴにし、金ブチをつけて、「少し背伸びをしたぐらい」のデザインで仕上げている。お客さんが何をすれば喜ぶかをいつも意識しているのだ。作業としては、まずIllustratorからパスを書き出しAfter EffectsのプラグインElement 3Dで立体化して調整。それを何度かくり返しバランスを取ったら、そのままAEでコンポジットしていく。工程の99%は後戻りをしやすいAEを使い、最後の微調整のみPhotoshopを使うという。Mayaを使ってレンダリングしていくよりもAEを使うほうが早いとのこと。
さらに細かいブラッシュアップの例。ロゴに影を入れるか入れないか、ロゴ下のルビの部分を立体にするかどうか、そのルビにコントラストを付けるかどうかなど微細な調整がくり返され、それぞれ白背景、黒背景で検討された
多くの工程を経て、完成したロゴがこちら。立体感があり、リッチな出来映えだ