>   >  <『ORDINAL STRATA -オーディナル ストラータ』特別連載>第四回:CGの主人公&アスセナをフルカラー3Dプリンタで出力!
<『ORDINAL STRATA -オーディナル ストラータ』特別連載>第四回:CGの主人公&アスセナをフルカラー3Dプリンタで出力!

<『ORDINAL STRATA -オーディナル ストラータ』特別連載>第四回:CGの主人公&アスセナをフルカラー3Dプリンタで出力!

<2>テストから完成品へ

細かなパーツと色味を調整する

テスト出力を終え、厚みが足りない箇所で色が透けたり、造形できない箇所が見つかったりしたところを解決すべく、3Dモデルのさらなる調整に入る。色味に関しても想定とちがった印象となった。「今まで見ていたレンダリング画像は、ライティングなどで調整したものだったので、テストフィギュアはモニタで見ていた色味と異なる印象を受けました。映像制作では媒体(TVや劇場など)に合わせてマスターモニタを決めますが、フィギュアの場合、媒体はモニタではないので、どのように色をイメージと合わせるか、新しい基準が生まれそうな気がします」(斎藤氏)。

3Dプリンタはカラーマップの色がダイレクトに出るため、ライティングなどで調整された色味や、マテリアルの設定により引き出された色味は出力されない。フルカラープリンタを使用する場合、この点を考慮してテクスチャを調整すると良いだろう。テクスチャサイズは目が1K、顔・髪・体がそれぞれ4K。高解像度のテクスチャにより、細部の模様もしっかり印刷できたため、服の模様は立体に起こさず、テクスチャ表現のままとしている。

また最終調整する際、3Dモデルの厚みを増やしたことでリグ構造も修正することとなった。リグ修正を担当したのは小甲竜紀氏だ。「スカートや装飾を厚くしたことで動きに支障が出たので、リグを再配置しました。リグはハイモデルとは別にローモデルも用意し、それにウェイトを塗ってラップするようにハイモデルを動かしています。これにより、リグ設定後に3Dモデルを調整しても反映できるのですが、今回はそれ以上に増した厚みが大きかったため、ローモデルからつくり直しました」(小甲氏)。

最終モデル:主人公

主人公で一番大きな変更点は、髪の毛だ。テストモデルの段階【A】では、房の間に隙間が多数あり、房の数も多いことから、出力後に全て手で磨くのは難しいと判断し、房の数を減らした【B】。レンダリングした状態で比較したのが【C】だ。結果として、スッキリと見た目もよりフィギュアらしい良い印象となった

厚みが薄く透明になっていた胸の赤いベルト【D】も、体まで密着するようにしっかり厚みを付け隙間を埋めている【E】

もともとアクセサリは単色だったため、形状的にも平面に見えた【F】。そこで中央のエッジを出し、ニュアンスを付けることで立体映えするデザインに調整されている【G】

強度的に心配な細く折れやすかった指や手【H】も、最終モデルではしっかり厚みが付けられた【I】

最終モデル:アスセナ

スカートは外側と内側が重なった、隙間のある状態【画像左】だったが、見た目の印象は変わらぬように厚みを加え、その隙間をしっかりと埋めている【画像右】

アスセナの変更点で一番大きい砂時計は、テストモデル【画像左】では途切れ途切れで辛うじて繋がって出力されていた。そこでテクニカルディレクターの小森俊輔氏からの助言を受け、デフォルメして大きくフィギュア用に修正された【画像右】

胸元の装飾は薄く、肌から浮いている状態【画像左】であったが、耐久性を考えて内側にまっすぐオフセットして体に密着させている【画像右】

髪飾りは元のデザインだと細く、厚みも薄かったため【画像左】、テスト出力時には造形できなかった。そこで髪にしっかりと密着させ【画像右】出力できるように調整されている

リグの修正

アニメーションモデル【画像左】と袖や各部位で厚みを付けた最終モデル【画像右】。厚みが増した部分はアニメーション用にセットアップしたそのままのリグでは対応できなかったため、新しくローモデルをつくり直し、その部分にウェイトを塗り直して、めり込みなく動かせるように改めて調整を行なっている

アニメーション用のアスセナの髪飾りは、結び目からぶら下がって髪から離れて揺れるように配置されていた【画像左】。このままでは飾りも細く、厚みも薄すぎて造形できなかったため、後ろ髪に密着させるように3Dモデルの形状も調整され、それに合わせてジョイントの再配置が行われている【画像右】

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