>   >  MRという"魔法"で実現する新世代アトラクション!『マジックリアリティ:コリドール&フラクタス』
MRという"魔法"で実現する新世代アトラクション!『マジックリアリティ:コリドール&フラクタス』

MRという"魔法"で実現する新世代アトラクション!『マジックリアリティ:コリドール&フラクタス』

Topic 3
目指したのは、VR版「コーヒーカップ」? ~『FLUCTUS』~

子供も大人も楽しめるファンタジーの追求

今年4月20日から運営が開始された新作『FLUCTUS』は、生と死の狭間で展開する幻想的な航海がテーマの作品。最大5名まで同時プレイ可能なMRアトラクションだ。プレイヤーは船に搭乗し、1名は舵を操作、残りの4名は手すりに掴まりながら周りの風景を見たり、手であちら側の住人に触れることができる。冒頭、船は海の上を走っているが、途中から重力がなくなり、舵を切ることで船体がぐるぐると回転することになる。これについて、本作ではディレクターを務めた祭田氏は「遊園地でおなじみのコーヒーカップのVR版がコンセプトです。自分で舵を操作したときに状況が変わるというのが面白いと思い、中盤では"上下の回転"も採り入れました」と解説する。本作は2017年9月に企画立案が行われ、Mayaによるレベルデザインを経て、同年11月に制作スタートした。開発はデザイナー5名(最大で10名)、エンジニアは3名+Unity(リアルタイムCG専門)エンジニア1名と、『CORRIDOR』と比べて倍近い人数での制作にあたっているほか、深澤氏が意図的にプロジェクトを離れることで前作の主要メンバーが開発の根幹に関わっている。ゲーム内で印象的だったのは、Flagment Shaderを用いて実装されたマンデルボックス的なフラクタル表現。中盤、プレイヤーはフラクタルの内部に飛び込んでいくかたちとなるが、この高負荷な描画について中橋氏は「近景と遠景で処理を分け、遠景のものはHoudiniで作成したものを2Dベースで実装することで実現しています」と説明する。また、幻想的な世界を表現するため、bloomやAmbient Occlusionなどポストエフェクトがシーンごとに細かく調整されている。

前作と比較してハードウェア面でのアップデートも多く見られる同作だが、デバイスはHTC Vive Pro、リアルスケールの舵はRaspberry Piで自作した48段階のセンサーが取り付けられたオリジナル仕様となっている。設計に際しては、Vive Pro本体だけだとトラッキングが精確でないため、周囲の壁に設置されたVIVEコントローラで相対位置を取るようなしくみも用いられた。また、プレイヤーが手を払う動きに応じて、眼前の霧が晴れる、亡霊を退けるというインタラクションはPuppet Master Assetを用いて実装されており、Vive Proのカメラで検出したプレイヤーの手の位置に透明の丸太形状のオブジェクトを出現させることでゲーム内の別オブジェクトに干渉することが可能となっている。床面の振動ギミックは、『CORRIDOR』で開発されたしくみを本作でも採用。Unityのステート遷移をRaspberry Piを介して床下に設置された7基のスピーカーに送ることで低周波を再生しているほか、送風によるインタラクションも存在する。現実世界の行動がゲーム内に影響をおよぼし、ゲームの進行度でハードウェアが制御される。こうしたフィードバックの連続と循環が、現実とCGの境界線を消していくのだ。その醍醐味をぜひTYFFONIUMで体験してもらいたい。

生と死の狭間を描く ~アートワーク~

池内氏と祭田氏が描いたイメージボードの例


  • 異世界で襲ってくる巨大クリーチャーのスケッチ。「ねじれ」がコンセプト


  • 異世界に潜むゴーストたちのスケッチ。モチーフはクラゲ

世界観のスケッチ

デザインはシンプルに、質感はリッチに ~アセット~

完成キャラクターモデルの例(シェーディング表示&メッシュ表示)

巨大クリーチャー

ゴースト

キャラクターリグ


  • 巨大クリーチャー


  • ゴースト

巨大クリーチャーのアニメーション作業の例。細かいパーツはシミュレーションで制御している

背景アセットの例。おおまかにパーツ分けして配置してい

【左上画像】を実際のシーンにレイアウトした状態

アプリ開発で培ったノウハウの活用 ~エフェクト&コーディング~

インタラクションの例


  • プレイヤーに近づいてきたクラゲたちは手で払うことができる。Puppet Masterを用いて、手で払った箇所に透明の丸太形状のオブジェクトで対象キャラクターを押し出すしくみ。ゴーストにも同様のギミックが施されている


  • 画像認識された手の動きに合わせてコライダー(HammerObj)を動かすC#コード

作品世界を象徴するフラクタル表現


  • 「マンデル・バブル」表現の入口


  • 「メンガーのスポンジ」表現の内部

これらの表現を実現させたプログラム。(図・左)フラクタル制御のためのC#コード。上位置に見えているのは、リアルタイムに形状を変えるために、毎フレーム フラクタルのパラメータを設定している部分。下位置に記述されている Graphics.DrawProcedural()関数で、描画が呼び出される。(図・右)マテリアルのシェーダコード。Fragment Shader(frag_sdr)で、フラクタルの再帰計算と描画を行なっている

『FLUCTUS』プレイの様子

筆者によるプレイの様子。『FLUCTUS』は最大5名同時に体験可能。プレイヤーが乗る船を舵で回転させることができる(舵を操作できるのは1名で、残りは船の欄干に立った状態で体験)。『CORRIDOR』と異なり、プレイヤーの立ち位置は原則固定のため、ランドセル型PCを背負う必要がない。ポジショントラッキングは、HMDに加えて、天面に配されたコントローラを併用することで高精度を実現している

プロモーション用のアート



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.239(2018年7月号)
    第1特集:ここまでできるBlender
    第2特集:はじめよう! 3D Paint

    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:144
    発売日:2018年6月9日

特集