<3>開発と同時進行で実施されたインテグレーション
自社エディタへの組み込みのフロー説明図
Enlighten導入検討の際、山下氏が最初に決めたルールは「アーティストの作業を止めないこと」。タイトルは毎年開発・リリースを続けており、今回も約10ヶ月で開発を完了するにはアーティストの手が止まる期間があってはならない。「ゲームエンジンのインテグレーションをしながらもアーティストたちが作業を進められるよう、古いデータでも動かし続けられるような配慮が必要でした。もちろんランタイムエンジンやプログラムそのものには影響を与えず、既存の描画パイプラインも変更しないことが前提でした」(山下氏)。
また、制作フローもできるだけ変更せずにインテグレーションを進めなければならなかった。Enlightenのエディタ&パイプラインツールであるForgeは、習得時間がなかったため今回は使用しないことに決定。自社エンジンと同等のライトの実装にトータルで約3人月、エディタへの組み込みとアーティストとのやりとりを主として実際の組み込みは2週間ぐらいで済んだとのこと。「Enlighten PPPIのサンプルコードがなくて苦労したので、これからのサンプルコードの充実に期待しています」(山下氏)。
Enlightenを導入した結果として、映像のクオリティは改善され、ビジュアルの評判が良くなったと、山下氏はふり返る。ランタイムへのパフォーマンスへの影響は最小限で、常に60fpsを確保できているという。各社GPUの使いかたがちがうため一概にどのゲームにも良い効果をもたらすとは言えないが、KONAMIの自社エンジンの場合には大変効果があったとのこと。
Enlightenは、アセット制作時のワークフローに組み込むだけでも効果があり、ライティングの調整コストが高いゲームタイトルに向いているミドルウェアと言える。非常に素直な設計であるため、既存の制作フロー、描画フローに後から組み込んでいくのは難しくない。一方で、コツを掴むのが難しく、内部構造のしくみを理解するまでに時間がかかるため、今後はドキュメントとノウハウの拡充をお願いしたいと述べ、発表を締めくくった。
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