Topic 2
プレイヤーに恐怖を与えるクリーチャーの表現
押し寄せるクリーチャーとキャラクターアニメーション
本作はガンシューティングという性質からも、ザコ敵として絶えず襲いかかってくるクリーチャーもまた主役であると言えるだろう。これらクリーチャーのデザインは新規に起こしたものと、過去作の特徴を踏襲したリメイクのものとの両方が存在する。筆者も取材時にプレイさせていただいたのだが、前項でも触れたように雪崩のように押し寄せるクリーチャーの数と迫力に何より驚かされた。湊谷氏によると、ボスの初期のアイデアでも「大量のクリーチャーが集まって合体していく」という提案のコンセプトアートを描いたそうだ。こちらが最終的にどのようなかたちに落とし込まれたかは、実際に遊んで確かめてみてほしい。
やや逸れるが、本開発での制作コストを抑えるために、アグニ・フレア側では人型キャラの制作に汎用的なベースメッシュ生成ツールも導入している。またクリーチャーの一部のモーションはセガから用意された過去シリーズの資産を活かしたとのことだ。キャラクターのアニメーションを担当した渡邊一行氏によると、ゲーム中のアニメーションはゲームと密接に関わるため、セガ主導の下で仕様が切られ、リグもセガ側からIK・FKの切り替えが可能で使いやすくシンプルなものが用意されたという。「過去作のモーションやキャプチャデータをMayaのリグに変換するツールも提供があり、随分と楽をさせていただきました」とのことだ。
クリーチャーの群衆表現
本作の特徴でもある、クリーチャーが雪崩のように押し寄せる場面を描いたコンセプトアート。当初は「特徴すぎるデザインにしない」ことを意識していたが、最終的にはクリーチャーを目立たせて全体でインパクトを出す方がゲーム画面からは伝わるという方針になったという
実際のゲーム画面。最大で約200体同時に登場するシーンもあるというから驚きだ。クリーチャーのモデルの種類は20体(+バリエーション)。1体は約1万5千~3万頂点で、骨数は少ないもので62本。指先まで骨が入っているそうだ
ダメージ表現の検証
倫理上、ゲームでは採用されることはないが、結果がわかりやすいということで、様々なダメージ表現を作成し、どこまでの表現ができるかの検証がなされた
【画像1-1→1-2→1-3】は銃撃が着弾した箇所のダメージ表現。【画像2-1→2-2→2-3】は着弾箇所から燃え広がる表現だ。骨が現れると物理シミュレーションに切り替わり崩れ落ちる。【画像3-1→3-2→3-3】はさらに灰となって飛散する表現となる。実際にゲームでは採用することはないにもかかわらず、技術的にどこまで表現できるかいろいろと模索している姿が窺える
『HOUSE OF THE DEAD ~SCARLET DAWN~』ダメージテスト
Topic 3
レールカメラをベースにした背景ワーク
モジュラーアセットで構築されたステージ制作
本作のステージは全部で5つとなっており、各ステージは数ブロックに分かれている。「全編通してレールカメラで進行する」のがゲームにおける特徴でもあるが、セガ側でラフモデルとカメラを作成。その後、DCCツール上でボックスを並べたような簡易的なステージを構成し、再度セガ側に確認を取りながらステージをつくり上げているそうだ。UE4を採用したことでカメラを作成する作業工程がかなり簡略化され、その分つくり込む時間ができたという。
ステージを構成するアセットは90cm単位で柱や壁といったパーツ群になり、これらをレゴブロックのように組み立てていく。こうしたアセットは「モジュラーアセット」と呼ばれ、制作コストとメモリ占有の観点からも非常に効率的であり、近年スタンダードな手法になる。コンセプトアート制作のほか、キャラクター/背景モデリング全般を担当した湊谷氏いわく「アセットを細かく分けておくことで、ゲーム中の演出の変更などに応じて随時レイアウトを組み替えて試行錯誤ができました」とのことだ。
また、UE4を採用したことにより、デザイナーでなくてもステージに対して直接UE4上でイベントを追加していったり、UE4の機能で簡易的に壁の破壊を入れたりといったこともできたという。DCCツールで大規模な破 壊をシミュレーションしてアニメーションベイクしUE4上で再生しているシーンもあるが、そうしたちょっとした破壊オブジェクトには破片や煙のエフェクトを被せたら十分な場合もあったため、ケースバイケースで対応していったそうだ。
簡易モデルでカメラを決めた背景制作フロー
ステージを簡易的なモデルで構築した状態。さらに、カメラワークをここに設定していく
こちらはライトとポストエフェクトも設定された最終的なゲーム画面。UE4上ではゲームを実行しながらアセットの調整をすることも可能なため「セガ側で設定したクリーチャーの出現タイミングに合わせてライティングやポストエフェクトなどを常にトータルで確認しながら制作していけました」と湊谷氏
90cm単位で用意した背景アセット。これらを組み合わせてステージを構築していく。各パーツのクオリティを上げていけば配置先のステージに更新がそのまま反映されていく。UV展開にはheadus社の「UVLayout」(www.uvlayout.com)が作業効率面で効果を発揮したとのことだ
ライティングで魅せるドラマティックな演出
本作はゲーム中もカメラが決まっているため、見映えが良くなるようライトを配置している。クリーチャーが近づいてくる様子を影だけで表現したり、暗闇の中のクリーチャーにリムライトを当ててシルエットを見せたりしたそうだ。またハレーションを多用し、レンズの汚れが浮かび上がるようにもしたという。全て開発中の画面だが、【画像左】天井を突き破って登場するクリーチャーにはリムライトを当てボリュームライトが背後に被るようにすることでシルエットを際立たせ、印象深いシーンを演出している。【画像右】照明以外にも、例えば炎上している場所にライトを配置して臨場感を出している
大規模な崩落シーンの制作フロー
大規模な崩落を描いたシーンのひとつ。こちらは3ds Maxを使用し、螺旋階段とバルコニーのモデルを500個の破片に分割してシミュレーションを行なった【上の3画像】。これらを丸ごとひとつのFBXとして出力し、UE4にスケルタルメッシュとして読み込んでアニメーションを再生させている
その上で炎や煙のパーティクルを各破片の骨にアタッチし、崩落する建物に炎上するエフェクトを追従させることで火災を表現しつつ臨場感を高めている【上の3画像】
(画面は全て開発中のもの)