迫りくるクリーチャーを撃ちまくるガンシューティングゲームとして世界中で人気を誇る、『ハウス・オブ・ザ・デッド』シリーズ最新作が2018年9月に稼働を開始した。ゲームエンジンにUE4を採用し、過去最高のリッチなホラービジュアルを実現している。この制作にはアグニ・フレアが参画し、本作の品質向上に大きく貢献した。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 243(2018年11月号)からの転載となります。

TEXT_野島 亮 / Ryo Nojima
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

© SEGA

  • 発売・開発:セガ・インタラクティブ
    稼働開始日:2018年9月13日(木)
    プレイ人数:1~2人(同時プレイ)
    基板:ALLS
    その他:Aime対応
    hod.sega.jp

最新技術により描かれたシリーズ最新作

今回紹介する『HOUSE OF THE DEAD ~ SCARLET DAWN~』はセガのアーケード向けガンシューティングゲームであり、1997年から長く続いている『ハウス・オブ・ザ・デッド』(HOD)シリーズの最新作だ。本作は、2005年に稼働した『4』の正当な続編であり、「リリース時の最新技術を使う」というコンセプトも引き継いでいたそうだ。そのため、Unreal Engine 4(以下、UE4)の採用は企画当初から決まっていたという。セガはデザイン面の開発に関わってくれる会社を探すにあたり、過去タイトルでクオリティ面で十分な実績があるのはもちろんのこと、UE4を使った開発で大きな実績もあったアグニ・フレアに真っ先に声をかけたそうだ。「実は私とアートディレクターの岩男は、前作『ハウス・オブ・ザ・デッド4』では起ち上げから関わっていたんです」とアグニ・フレア代表取締役の稲葉剛士氏。本作では、氏自らデザインコンセプトやアイデアの提案面で関わっている。

  • 左から、エフェクト担当・小林健太氏、アートディレクター・岩男信人氏、カットシーン担当・工藤啓之氏、代表取締役・稲葉剛士氏、キャラクターアニメーション担当・渡邊一行氏、アート&モデリング担当・湊谷大介氏(以上、アグニ・フレア)

アグニ・フレア側の総スタッフは17名ほど(アート4名/キャラ6名/背景3名/アニメーション4名/カットシーン2名/エフェクト1名で兼任あり)で、その内半分が外国籍であるのが大きな特徴だ。稲葉氏によると「海外展開も視野にいれているとのことでしたので、外国籍スタッフに海外のテイストが出るようモデリングを担当してもらったり、キャラクターの演技を見てもらったりしました」とのことだ。また、もともと映像制作に関わっていたスタッフも在籍しており、それぞれのスタッフのスキルを活かせるような体制で臨んだという。「アグニ・フレアと言えばエフェクト」というイメージをもつ方も多いかもしれないが、本稿を読み進めると全ての担当パートが高いクオリティで仕上げられていることがおわかりいただけるだろう。

ちなみにゲーム中のレンダリング解像度はフルHDである。UE4の最終的なバージョンは4.18.1で、セガ側で本作のゲーム仕様に合わせた独自のカスタムを行なっているとのことだ。

Topic01
演出をゲーム性に結びつけたコンセプトアート

1体のクリーチャー制作からイメージを固める

最初に1体のクリーチャーのデザイン&モデリングを行い、UE4上で表現するところからアグニ・フレアの作業は始まった。アートディレクターである岩男信人氏がデザインを起こし、コンセプトアートとキャラクター&背景のモデリングを担当した湊谷大介氏がモデリングとUE4での設定を行い、クオリティ高く仕上げた。セガの開発チームが作成したコンセプトを基に、アグニ・フレア側でゲーム中の演出も含めたコンセプトアートを具体的に提案していき、お互いにすり合わせながらイメージを詰めていったとのことだ。セガ側から最初に提示されたコンセプトは「これまでの世界観を引き継ぎつつも、新たなチャレンジとして雪崩のような大量のクリーチャーが押し寄せる」というもの。実現のためにクリーチャーの骨数などをセガのスタッフと話し合いながら進めたが、本作で使用する基板「ALLS」のスペックが今までのものよりも高いことから、まずは制約なしで進めていき、必要に応じて最適化を図っていったそうだ。

各ステージのコンセプトはセガから方向性が提示され、湊谷氏が各ステージ1~2枚のコンセプトアートを提案していった。「技術的なチャレンジをデザイン面でどう活かしていくか、物理的なライティングをどうゲーム性に結びつけるか、かなり話し合いました」と岩男氏。「それぞれのステージでどういった表現をするか詰めていき、場面の転換も意識しながら必要な要素をひとつひとつ画に入れ込んでいきました」と湊谷氏が続ける。やり取りを重ね、イメージが共有できた後には比較的自由に制作を任せてもらえたそうだ。また破壊やシェーダ表現、エフェクト表現と技術的なチャレンジも多かったという。

最初に制作したクリーチャーと背景コンセプトアート

【画像左】最初に制作したクリーチャーのデザイン画。こちらを基にモデリングしてUE4で仕上げたものが【画像右】となる。本作のクリーチャーはシリアス路線で恐怖を煽るデザインが意識されている


【上の3画像】はどれもステージ2のコンセプトアートだ。「HODの世界観を活かしつつ、ステージごとにテイストの異なる感覚を味わえるように、それぞれのステージの演出の核になるコンセプトを入念に設定しました」と湊谷氏。ユーザーが飽きないようステージごとに差別化が図られているのはもちろんのこと、ロケーションごとにも全体から受ける色の印象や構成にちがいが出るようデザインされている様子が見てとれる

ドレスアップした主人公2人のデザイン

パーティ会場がゲーム開始時の舞台なため、主人公であるライアンとケイトはタキシードとドレスを着用している。彼らの個性を出すためジャケットの着脱やアーミースタイルなどの案もあったが、「タキシードのままの方が事件に巻き込まれた感じが出る」ということで、ライアンは【画像左】の右側のデザインの方向性で進めることになった。あくまでも「実際にいそうな人物だが、主人公として目立つ」ということが重要だったという。【画像右】採用されなかった案だが、ケイトはファーによるリッチな表現する等の案があった


最終的なゲーム画面ではこちらのような仕上げとなっている。主人公は約3万頂点、骨数はボディ60本に加えフェイシャル80本+揺れものになる。人間のキャラクターは主人公のほか、男女合わせて7体のNPCをアグニ・フレア側で制作したそうだ

ボスのデザイン


ボス「チャリオット」のデザインのひとつ。前作でもボスデザインを担当した岩男氏によるもので、本作も大半のボスをデザインした。ただし、チャリオットは『1』で登場したボスで、その世界観やキャラクター性を引き継ぐことを重要視し、最終的なデザインはセガ側で行なっている


ボス「ハイプリエステス」の決定稿。イカ、タコなどの頭足類がモチーフになっており、そのほか攻撃方法の提案や別のデザイン案など多数描き起こされた。ボス1体は約8万頂点

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Topic 2 プレイヤーに恐怖を与えるクリーチャーの表現

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Topic 2
プレイヤーに恐怖を与えるクリーチャーの表現

押し寄せるクリーチャーとキャラクターアニメーション

本作はガンシューティングという性質からも、ザコ敵として絶えず襲いかかってくるクリーチャーもまた主役であると言えるだろう。これらクリーチャーのデザインは新規に起こしたものと、過去作の特徴を踏襲したリメイクのものとの両方が存在する。筆者も取材時にプレイさせていただいたのだが、前項でも触れたように雪崩のように押し寄せるクリーチャーの数と迫力に何より驚かされた。湊谷氏によると、ボスの初期のアイデアでも「大量のクリーチャーが集まって合体していく」という提案のコンセプトアートを描いたそうだ。こちらが最終的にどのようなかたちに落とし込まれたかは、実際に遊んで確かめてみてほしい。

やや逸れるが、本開発での制作コストを抑えるために、アグニ・フレア側では人型キャラの制作に汎用的なベースメッシュ生成ツールも導入している。またクリーチャーの一部のモーションはセガから用意された過去シリーズの資産を活かしたとのことだ。キャラクターのアニメーションを担当した渡邊一行氏によると、ゲーム中のアニメーションはゲームと密接に関わるため、セガ主導の下で仕様が切られ、リグもセガ側からIK・FKの切り替えが可能で使いやすくシンプルなものが用意されたという。「過去作のモーションやキャプチャデータをMayaのリグに変換するツールも提供があり、随分と楽をさせていただきました」とのことだ。

クリーチャーの群衆表現

本作の特徴でもある、クリーチャーが雪崩のように押し寄せる場面を描いたコンセプトアート。当初は「特徴すぎるデザインにしない」ことを意識していたが、最終的にはクリーチャーを目立たせて全体でインパクトを出す方がゲーム画面からは伝わるという方針になったという

実際のゲーム画面。最大で約200体同時に登場するシーンもあるというから驚きだ。クリーチャーのモデルの種類は20体(+バリエーション)。1体は約1万5千~3万頂点で、骨数は少ないもので62本。指先まで骨が入っているそうだ

ダメージ表現の検証

倫理上、ゲームでは採用されることはないが、結果がわかりやすいということで、様々なダメージ表現を作成し、どこまでの表現ができるかの検証がなされた

【画像1-1→1-2→1-3】は銃撃が着弾した箇所のダメージ表現。【画像2-1→2-2→2-3】は着弾箇所から燃え広がる表現だ。骨が現れると物理シミュレーションに切り替わり崩れ落ちる。【画像3-1→3-2→3-3】はさらに灰となって飛散する表現となる。実際にゲームでは採用することはないにもかかわらず、技術的にどこまで表現できるかいろいろと模索している姿が窺える

『HOUSE OF THE DEAD ~SCARLET DAWN~』ダメージテスト

Topic 3
レールカメラをベースにした背景ワーク

モジュラーアセットで構築されたステージ制作

本作のステージは全部で5つとなっており、各ステージは数ブロックに分かれている。「全編通してレールカメラで進行する」のがゲームにおける特徴でもあるが、セガ側でラフモデルとカメラを作成。その後、DCCツール上でボックスを並べたような簡易的なステージを構成し、再度セガ側に確認を取りながらステージをつくり上げているそうだ。UE4を採用したことでカメラを作成する作業工程がかなり簡略化され、その分つくり込む時間ができたという。

ステージを構成するアセットは90cm単位で柱や壁といったパーツ群になり、これらをレゴブロックのように組み立てていく。こうしたアセットは「モジュラーアセット」と呼ばれ、制作コストとメモリ占有の観点からも非常に効率的であり、近年スタンダードな手法になる。コンセプトアート制作のほか、キャラクター/背景モデリング全般を担当した湊谷氏いわく「アセットを細かく分けておくことで、ゲーム中の演出の変更などに応じて随時レイアウトを組み替えて試行錯誤ができました」とのことだ。

また、UE4を採用したことにより、デザイナーでなくてもステージに対して直接UE4上でイベントを追加していったり、UE4の機能で簡易的に壁の破壊を入れたりといったこともできたという。DCCツールで大規模な破 壊をシミュレーションしてアニメーションベイクしUE4上で再生しているシーンもあるが、そうしたちょっとした破壊オブジェクトには破片や煙のエフェクトを被せたら十分な場合もあったため、ケースバイケースで対応していったそうだ。

簡易モデルでカメラを決めた背景制作フロー

ステージを簡易的なモデルで構築した状態。さらに、カメラワークをここに設定していく

こちらはライトとポストエフェクトも設定された最終的なゲーム画面。UE4上ではゲームを実行しながらアセットの調整をすることも可能なため「セガ側で設定したクリーチャーの出現タイミングに合わせてライティングやポストエフェクトなどを常にトータルで確認しながら制作していけました」と湊谷氏

90cm単位で用意した背景アセット。これらを組み合わせてステージを構築していく。各パーツのクオリティを上げていけば配置先のステージに更新がそのまま反映されていく。UV展開にはheadus社の「UVLayout」(www.uvlayout.com)が作業効率面で効果を発揮したとのことだ

ライティングで魅せるドラマティックな演出

本作はゲーム中もカメラが決まっているため、見映えが良くなるようライトを配置している。クリーチャーが近づいてくる様子を影だけで表現したり、暗闇の中のクリーチャーにリムライトを当ててシルエットを見せたりしたそうだ。またハレーションを多用し、レンズの汚れが浮かび上がるようにもしたという。全て開発中の画面だが、【画像左】天井を突き破って登場するクリーチャーにはリムライトを当てボリュームライトが背後に被るようにすることでシルエットを際立たせ、印象深いシーンを演出している。【画像右】照明以外にも、例えば炎上している場所にライトを配置して臨場感を出している

大規模な崩落シーンの制作フロー

大規模な崩落を描いたシーンのひとつ。こちらは3ds Maxを使用し、螺旋階段とバルコニーのモデルを500個の破片に分割してシミュレーションを行なった【上の3画像】。これらを丸ごとひとつのFBXとして出力し、UE4にスケルタルメッシュとして読み込んでアニメーションを再生させている

その上で炎や煙のパーティクルを各破片の骨にアタッチし、崩落する建物に炎上するエフェクトを追従させることで火災を表現しつつ臨場感を高めている【上の3画像】
(画面は全て開発中のもの)

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Topic 4 リアルタイム環境を活かしたカットシーン制作

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Topic 4
リアルタイム環境を活かしたカットシーン制作

シーケンサーを活用したカットシーン制作の効率化

本作のカットシーンは、開発初期にセガ側の台本(シチュエーションとセリフが記載されたもの)を基に岩男氏が絵コンテを起こした後、セガでモーションキャプチャを行い、カットシーン担当である工藤啓之氏を中心にMayaでプリビズを制作して、OKが出たらUE4のカットシーンエディタである「シーケンサー」で再現するかたちで進められた。メインのカットシーンはコンポジット時に加工しないようセガからのオーダーがあったが、例外的にAfter Effects(以下、AE)で編集した場面もある。

主人公をはじめ人型のキャラクターのボディモーションとフェイシャルのキャプチャは個別に収録されたが、どちらも外国籍のアクターが採用されている。選定にはコミュニケーションが円滑になるよう日本語が話せるアクターに依頼した。「本作のボイスは英語になるため、アグニ・フレア社内の外国籍のスタッフには、英語の発音に合うようにフェイシャルの調整も行なってもらいました」とアニメーションを担当した渡邊氏。フェイシャルには「Performer2 SV」を採用している。また、ヒロインのドレスの揺れはインゲームもカットシーンもAPEX Clothによるもの。ただし処理や暴れるリスクなどを鑑みて、APEXと骨物理シミュレーションを使い分けたとのことだ。また、この頃にはシーケンサーの機能も充実してきており、カット頭の揺れものの乱れも解決できたそうだ。

工藤氏はカットシーン中のライティングやポストエフェクトも担当しており「UE4では最終的なルックをリアルタイムで確認できるため非常に効率的でした」と語る。新人スタッフや外国籍のスタッフにもその場で調整指示を行える面も良かったという。総カットシーンは49・231カット、総尺15分に及んだが、確認用としては作業マシン1台で夜間にバッチレンダリングをかければ十分で、翌朝には全シーンを動画で見られたそうだ。

カットシーンの制作事情とモーションキャプチャ

AEで合成作業を行なったカットシーン。画面を分割して2つの異なるロケーションを収める必要があったのがその理由だ

Mayaによるプリビズの様子



  • セガのモーションキャプチャスタジオでボディモーションをキャプチャしている様子



  • こちらはフェイシャルキャプチャの様子。機材はなんとサバゲー用のヘルメットとウェブカメラでアグニ・フレアが自作したもの。問題なく製品レベルで使用できたそうだ

カットシーンを引き立てるライティング演出

ヒロインのケイトを引き立てるためにいわゆる「女優ライト」を配置し、シーケンサー上でカットごとにVisibleやIntensityを制御した



  • キャラクターの輪郭を浮き立たせるためにリムライトを当てたシーン。逆光により不気味に見せてもいる。インゲームの背景のライトが邪魔な場合にはシーケンサーでインゲームのライトを読み込み色味や強弱をカットごとに調整したそうだ



  • ボリュームライトを強めに入れて印象的なシーンを演出した

シェーダにより実現した特殊な表現

シリーズ恒例となる、ボス登場時に弱点を解析する演出。ボスの体には赤い走査線が走るようワイヤーフレーム状のモデルが使用されており、モニターグラフィックスはマテリアルとブループリントの合わせ技で表現している

画面が乱れるグリッチ【画像左】とライトバースト【画像右】といった独自のポストエフェクトは、工藤氏がポストプロセスマテリアルを制作して実現している

Topic 5
Houdiniをフル活用したエフェクト制作

Houdiniによる表現力の向上と低コスト化の実現

アグニ・フレア側のエフェクト制作で使用された3DソフトはHoudiniのみとなり、国内のゲーム開発に関わる会社では非常に珍しいケースのように思う。「Houdini一本で完結することで、大きな効率化が図れました」とエフェクト担当の小林健太氏。Houdiniのラーニングを含めて約1年、様々な表現の検証を経て正式導入に至ったという。検証した具体的な内容としては、炎・爆発・水といった流体シミュレーション、エフェクトで利用するモデルの形状をパラメータで容易に調整するためのツール制作、破砕アニメーションの骨入りメッシュへのベイク、そして「Vertex Animation Texture(VAT)」という技術を用いたソフトボディや流体表現などになる。

VATはモデルの形状変化のアニメーション情報をテクスチャにベイクして、ランタイム時に頂点シェーダで再生するテクニックで、特殊な表現をゲーム中に表現できることからここ数年での使用事例が増えている。骨のアニメーションだとCPU負荷になるが、VATだと処理をGPUに逃がせるメリットもある。本作ではカットシーンのみの利用となったが、コウモリの大群やクリーチャーの触手が千切れる表現、気泡など様々なものにVATが利用されている。これらはカットシーンを制作する過程で生まれたタスクになるという。「制作工程の中でエフェクトは下流に位置するため想定しないタスクが発生しがちですが、こういったタスクをアニメーターにお願いするよりも、Houdini内のシミュレーションでカバーすればエフェクトアーティストで完結できるため、ローコストで対応することができました」と小林氏。

Houdini導入により表現の幅が広がったことに加え、作業速度や調整・フィードバック対応も早くなったという。ちなみに、ちょっとしたノイズテクスチャやフローマップの制作には従来通りPhotoshopやAE、Substance Designer等も用いられたそうだ。

流体シミュレーションと滝モデル制作ツール

Houdini上で煙のシミュレーションを行なっている様子。レンダリングにはGPUレンダラを導入し、それまで3分かかっていたレンダリング時間が6秒になったそうだ

パイプから流れる滝がステージ中に数多く配置されているが、場所により形状も変える必要があるため手作業で用意するのは大変だ。そこでモデル自体を簡単に調整できるようなツールをHoudini上で作成して量産に対応した

Vertex Animation Texture(VAT)で広がった特殊表現

カットシーンで使用された血液の気泡をHoudiniで制作してVATで表現したもの。流体表現であってもこのようにシルエットがはっきりしているモチーフならばVATに適していると言えるだろう

触手が千切れる表現はソフトボディのシミュレーションをVATにベイクすることで対応した

カットシーンでボスに付随するコウモリの大群は、Houdiniで羽ばたくアニメーションをVATのかたちでUE4に持ち込み、エフェクトツールでメッシュパーティクルとして大量に飛ばすことで表現している

ゲームではカットされた、煙をシーンに馴染ませるよう施された工夫

連番テクスチャを再生するマテリアル。RGBチャンネルを使い分けた構成をベースにしつつ、各ステージの環境に馴染むようパラメータで色を与えられるようになっていたり、ソフトパーティクルの強さを自由に調整できる構成になっている



  • 基本的に煙はライティングを受けるように設定されている



  • 前述したパラメータでシチュエーションに合わせた色を与えて場に馴染ませている

一枚画の煙のテクスチャを使用したカスタムマテリアルをモデルで表示させている例。マテリアルではテクスチャをフローマップで歪めて複雑な動きを表現している



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.243(2018年11月号)
    第1特集:スタイライズ表現探求
    第2特集:著作物との関わり方
    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2018年10月10日