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カプコン・セガゲームス・バンダイナムコスタジオ 3社TA座談会(後編)>>TAの仕事の「今」と「これから」

カプコン・セガゲームス・バンダイナムコスタジオ 3社TA座談会(後編)>>TAの仕事の「今」と「これから」

TAとして「何がやりたいか?」を考えてみる

:「TAになりたいな」と思ったら、次は「TAとして、何がやりたいか?」を具体的に考えてほしいと思います。TAの守備範囲はすごく広いので、単に「TAになりたいです。何を勉強すればいいですか?」と学生さんに聞かれても、答えに困ってしまうんです。自分がやりたいことを軸にして、勉強なり、質問なりをすれば、自分の将来がより具体的になっていくと思います。TAという言葉や役割が世の中に認知されてきた結果、具体性のないままTAが語られるケースが出てきており、最近はそこに危機感をもっています。

沼上:TAに加え、ツールプログラマー、エンジンプログラマー、パイプラインエンジニアなど、ゲームプログラマー以外のテクニカル職を募集しているゲーム会社は多いです。大きな会社の場合は、それぞれの職種で「この人はアニメーションが得意」「あの人はレンダリングが専門」というように細分化もされています。だから「自分はTA志望だと思ったけど、実はちがった」という学生さんもいると思います。応募するときには「どんなことに興味があって、どんなことをやってみたいか」さえしっかり伝えてくれれば、どの職種が適しているかは採用する側が判断します。

例えば私の場合は自分で絵は描けませんが、プログラムすれば綺麗な絵を生成できることが楽しくて、CGを始めました。それを仕事にできる業界はあるだろうかと調べた結果、ゲーム業界にたどり着いたんです。その頃はゲーム業界以外に、CGで飯が食えるところはなかったんですよ。そんな動機でこの業界に入ったから、今でもゲームが下手で、例えば格闘ゲームに新しいデータを組み込んだとき、動作確認をしたくても技が出せなくて周りの人に助けを求める......ということもたまにあります。


塩尻:TAやツールプログラマーには、結構そういう人がいますね。必ずしもゲームをつくること自体にモチベーションを感じる必要はないと思います。われわれのユーザーは目の前のゲーム開発者なので、彼らの相談に応じ、プロジェクトにとってベストの解決策を提示できれば役割は果たせます。ただ、その先にはゲームをプレイしてくださるユーザーがいるので、「ゲームが嫌いです」という人だとさすがに無理が出てくるとは思います。

C:確かに、3社の採用ページを見るとゲームプログラマー以外のテクニカル職もいろいろ募集していますね。

カプコンの採用ページ
セガゲームスの新卒採用ページ
バンダイナムコスタジオの新卒採用ページ

C:実際のところ、応募の際に何を送れば「TAとしての将来性」をアピールできると思いますか?

沼上:エンジニア寄りのTAなら、プログラマーやエンジニアと同様の採用経路になることが多いので、大学生なら研究成果、専門学校生ならつくったゲームやツール、作品などをアピールすると良いでしょう。アーティスト寄りのTAなら、通常のアーティストと同じ採用経路になることが多いので、ポートフォリオや作品の提出が必要になります。その上で、TAの仕事のどこに魅力を感じるか、何をやりたいかを伝えてほしいですが、正直に言うと「TAとしての将来性」まで明示するのは難しいだろうなと思います。

塩尻:私自身、自分の履歴書を書けと言われたら、どう書くか悩みますね(笑)。ただ、どんな経験も無駄になることはないので、自分のやってきたことをアピールすれば良いと思います。とはいえツール制作などの技能があった方が、目に止まりやすいとは思います。制作したツールの説明や、サンプルデータなどがあればなお良しです。最終的には「この人になら、業務を任せてみたい」と面接の相手に思わせられるかどうかだと思います。

沼上:就職してから基礎を学びなおすのは大変なので、大学でも専門学校でも、理系であれば数学・物理・英語を、美術系であればアートの基礎をちゃんと勉強しておくことが大事だと思います。CGの幅広い知識に加えて、Pythonなどの各種言語のスクリプティング、理系であればC++のプログラミング、Webの関連技術、PCなどのハードウェア関連知識なども学習しておくと、後で役立つと思います。既存のゲームエンジン、DCCツールなども身近にあるならぜひ触ってほしいですが、高価なソフトを勉強のためだけにわざわざ買う必要はありません。

CEDECのスライドで学び、学会や作品展示会の発表に応用する

塩尻:それからTAの場合は「人に伝える能力」が特に重要なので、学生のうちから意識して鍛えておくことをおすすめします。数年前の話になりますが「ゲームエンジンって何なの?」という上長からの質問に答えるために、こういうスライド(下図)をつくりました。

▲塩尻氏が、ゲームエンジンを用いたグラフィックス制作フローをわかりやすく解説したスライド


塩尻:で、さらにわかりやすく伝えるため、こういうスライド(下図)もつくりました。

▲塩尻氏が、前述のフローを「さらに」わかりやすく伝えるため、カレーづくりに例えて解説したスライド


C:おお! わかりやすい上におもしろい!!

沼上:すごくわかります。ほかのものに例えたり、言い換えたりというテクニックは私もよく使います。

塩尻:学生でも、学会や作品展示会の場で、自分の研究成果や作品について発表する機会があると思います。そういうとき、どんな資料やスライドをつくり、どう説明すれば伝わりやすいか、よく考えて実践してみることも、後の仕事に役立つと思います。

CEDECは、ゲーム業界の開発者たちの「人に伝える能力」の向上に役立っているなと感じます。CEDECの発表スライドを閲覧できるCEDiLには2通りの活用方法があって、ひとつは技術情報を手に入れることで、もうひとつはスライドのつくり方を勉強することなんです。CEDiLのスライドを見たり、CEDECで実際の発表を聞いたりすると、人に伝えるときの勘所が養えると思います。

塩尻:そうですね。CEDECのスライドは本当によくできているものが多いです。カプコンの社員の場合は、CEDECで発表する前に3〜4回は社内でリハーサルをします。「CEDECで発表するより、社内でリハーサルをするときの方が怖い」と皆が言うくらい容赦ないダメ出しが入るので、どんどん上手くなります。

C:確かに、CEDECのスライドや発表は、どの会社も年々レベルが上がっていると思います。

:1ページ単位で情報を切り出して整理して、それを並べて起承転結を付けて、聴衆を飽きさせないテンポで説明して、ちゃんと理解してもらうのはかなりハードルが高いです。そういう点にも注目すると、新たな発見があると思います。

C:CEDiLやCEDECを通してインプットしたことを、学会や作品展示会の発表でアウトプットしていけば、考える力が培われ、人に伝える力も磨かれて一石二鳥ですね。お話を伺ったことで、TAの仕事の「今」と「これから」が、より具体的にイメージできるようになりました。

沼上:この座談会を通して、TAの仕事に対する理解がさらに深まれば嬉しいです。

塩尻:TAやツールプログラマー人口がさらに増えることを期待しています。

:ゲーム会社の社員は、基本的に「自分がやりたいこと」がモチベーションになっていて、それはTAの場合も同様です。TAの仕事の何にモチベーションを感じるのか、ぜひ聞かせてほしいと思います。

C:お話いただき、ありがとうございました。

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