POINT 02
最新のCG技術と懐かしのセルアニメ表現を融合!
演出と細部にまでこだわったカット制作
本作では絵コンテを使わず、前述したモーションキャプチャデータを基にカメラワークを決めていく「ストーリーリール」を採用している。モーションキャプチャでは、ノイズを取りつつもある程度揺らぎとして残し、コンセプトである「漢」のもつ所作として見せたいというねらいもあったという。また、服の揺れなどのシミュレーションもケレン味が意識されている。
カットの終わりに背景の質感の止メ絵を入れる、いわゆるハーモニー処理など、昭和の作品でよく使われた表現の導入も大きなこだわりだ。ほかにも『北斗の拳』へのオマージュを入れるなど、昔からのファンが楽しめる演出も多い。「戦うときに服が破れる演出を楽しんでいただきたいです。裸になった瞬間はキター! と思ってください(笑)」と大橋氏。「漢(おとこ)の死に様を観てほしいです」とは中尾嘉樹氏。特にシメオンの散り際は見応えがあるという。勅使河原氏は「原作品はシリアスとギャグの幅の広さが魅力です。ギャグキャラの田やカバ(河馬超)の設定画は楽しんで描きました。シリアスでは、終盤への盛り上がりに期待してください」と作品の魅力を語ってくれた。
絵コンテを用いない映像設計「ストーリーリール」
本作では、モーションキャプチャで収録したデータをMayaに読み込み、そのキャラクターの演技を複数のアングルからPlayBlastで動画化し、それらを編集(カメラーワークの決定やカッティング)して、ストーリーを構成している。絵コンテの代わりに、このストーリーリールを映像の設計図にしているのだ
「シメオンの演説シーン」のモーションキャプチャの収録風景
カメラの配置
複数のアングルから見たレイアウト(カメラのプラン)をまとめたもの。具体的なカメラプランを基にPlayBlastを書き出す
これぞ熱き漢!? 破れる服
大橋氏が本作の見どころに挙げている、バトルシーンで必ず服が破れるという演出。ヒーローものの変身のように「様式美」とも言える服が破れるシーンは、Houdiniが使われている。破り方も毎回趣向が凝らされているので、ぜひ注目していただきたい
Houdiniの作業画面。服が躍動感あふれた破れ方をしている
Mayaの作業画面
闘気エフェクトも入ったCG素材
コンポジットされた、これぞ漢の闘いという完成画
オリジナル技「天斗聖陰拳 天斗白蛇襲」
オリジナルキャラクター「シメオン」の技のため、まずイメージボードが描かれた。「参考にするものがなく、ゼロからビジュアライズしました」(勅使河原氏)。技名のように多数の蛇が光りながら襲いかかっている
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最終的なCG素材 -
コンポジットで光のエフェクトが加えられた完成画。「技が飛ぶときに蛇が動くようにして、筆のタッチもテクスチャを描くなどしてモデリングし、エフェクトも加わって良い見映えになりました」(大橋氏)
最新のCGから懐かしのハーモニー処理へ
昭和のアニメへのオマージュとしてハーモニー処理が多用されている本作。レンダリングされたキャラクターの上からペイントオーバーして制作している。増えた情報量に合わせて背景の密度も高く、さらに撮影処理も濃く乗せて印象的な画づくりがなされた
以下、CG素材
なお、本作ではほかにも巨大な敵への攻撃方法など、オールドファンが楽しめるオマージュが随所に盛り込まれている
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