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熱い漢たちの生き様をフルCGで描く力作『蒼天の拳 REGENESIS』後篇

熱い漢たちの生き様をフルCGで描く力作『蒼天の拳 REGENESIS』後篇

フルCGアニメ『蒼天の拳 REGENESIS』の制作を担当したポリゴン・ピクチュアズに、"漢らしさ"を追求したという同作のメイキングを紹介してもらった特集記事。前篇に引き続き、後篇ではキャラクター&カット制作についてお届けする。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 245(2019年1月号)からの転載となります。

TEXT_石井勇夫(ねぎぞうデザイン)
EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

『蒼天の拳 REGENESIS』
原作:漫画『蒼天の拳』(原哲夫・堀江信彦 監修:武論尊)/監督:鹿住朗生/CGキャラクターデザイン:勅使河原一馬、佐藤宏美/アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ/製作:株式会社 蒼天の拳

  • Blu-ray『蒼天の拳 REGENESIS』第1巻&第2巻&第3巻好評発売中!
    第4巻1月30日(水)発売!
    【初回生産限定版特典】 ★原哲夫 描き下ろし豪華仕様アウターケースほか、豪華特典満載!
    各巻6 話収録/ 価格:18,500円+税

  • コミックス『蒼天の拳 リジェネシス』第1巻&第2巻好評発売中!
    原作:原哲夫/監修:武論尊/脚本:八津弘幸/作画:辻 秀輝
    各巻定価:本体580円+税
    発売:徳間書店
    発行:ノース・スターズ・ピクチャーズ

©原哲夫・武論尊/NSP2001, ©蒼天の拳2018

POINT 01
アニメオリジナルキャラクターをデザイン
キャラクター制作のこだわりと効率化

オリジナルキャラクターのシメオンは、原哲夫氏が描いたラフを基に、勅使河原一馬氏がデザインしている。「シメオンの仮面は、まさに原ワールドでした。先生のイメージに近づけて、いかにモデラーに引き継ぐかに注力しました」(勅使河原氏)。デザイナーは、モデリングで負荷がかかるものを避けたり、わかりやすい指示書を作成したり、モデラーとの橋渡しが役目だという。設定画は約50名、プロップは100ほどに抑えられたが、イメージボードも多数描かれている。

モデリングは霞拳志郎からはじまった。「情報量が多いので、説得力を出しやすかったです」と大橋永志氏。セル調のため、髪の毛はオブジェクトで作成し、1本1本配置してバランスをとっている。拳志郎が出来上がると、それをベースにプロポーション変更や服装・メガネなど顔周りの変化で他のキャラクターに転用していく。メインとサブが50、モブが50以上、ほかバージョンを含めると200体以上つくられたという。一方、本作のキャラクターは感情的な表情が少ないため、フェイシャルはコントローラだけで付けられ、メインキャラクターで20程度のライブラリをつくって協力会社に渡し、作業しているとのこと。

アニメオリジナルキャラクター「シメオン」

原案となる原氏のスケッチ

スケッチは顔周りのみのため、勅使河原氏が全身のデザインを起こす。当初は目の周りのみの仮面だったそうだが、『北斗の拳』の登場キャラクター「ジャギ」を意識したリテイクが入り、現在のものとなった

設定画はモデラーがつくりやすいように、参考となる写真や具体的な指示も入る。「CGなので、服の柄は立体表現にしました。設定画はモデラーがイメージしやすいよう心がけています」(勅使河原氏)

拳志郎にみる迫力ある「漢」の身体

キャラクターの筋肉や服のシワなどの造形はZBrushが用いられた。筋肉が隆々かつ細かく造形されている。ZBrushは確認が手早く行えることがメリットだという。首が太いのは、原氏からの要望とのこと

Mayaでリトポされた状態。大量にキャラクターをつくらないといけないため、この状態をベースに変形して他のキャラクターをつくっていく

ZBrushによる服のシワの作成画面。Mayaのエッジでシワをつくっていくよりも手早く、確認しながらモデリングができる

手もリアルにスカルプトされている。筋骨隆々の体と比べると、デフォルメは控えめだ

より迫力のある漢を表現するためにも、拳のテクスチャも細部まで描かれた。さらにポーズを付けて印象が良くなるようにしてから監督のチェックへ出される

衣服や体の陰影、眉毛、瞳のテクスチャ

原作の印象を踏襲した頭部の造形



  • 原作のイラスト


  • シルエットの特徴を示したもの。髪の毛のながれに注目している

フリーのオブジェクト配置ツール「spPaint3d for Maya」を使用してインスタンスをおおまかに配置し、全体的に形状を変形して情報量を確認していく。最終的に全ての毛が1本1本微調整された



  • 完成モデルを見ると、髪の毛のながれなど、原作に近いイメージに仕上がっていることがわかる


  • ZBrushで作成された頭部。一般的なアニメのキャラクターよりも現実の人に近いため、つくりやすかったという。ただ、当初はあごの長さが気になったそうだ

目の周りの影と二重の線はオブジェクトで、その周りの暗い部分やハッチングのラインはテクスチャで描かれている

海外スタジオでも対応できる効率的なフェイシャル表現

フェイシャルについては、各表情をリグのコントローラでポーズ付けし、ライブラリに登録されたものが使われた。ライブラリは社内外問わずシェアされ、選択すれば誰でも同様の表情を作成することができる

先述の通り、本作のキャラクターは表情の変化が控えめのため、フェイシャルターゲットは不要だった。しかし表情集を見ると、大きな顔の動きはなくとも、情感のある表情がつくり出されている。アニメーションは海外のスタジオだったため、口パクは必ずしも正確ではなかったそうだが、それがかえって迫力につながることもあったという

スターシステムを導入した大量のキャラクター制作

本作では大量のキャラクターが登場するため、ベースモデルからディテールを流用しながらプロポーションを変更し、顔周りの変化でモブを増やしている。通常モブキャラクターは複数のキャラクターアセットを用意するが、本作ではひとりの役者に衣装や化粧、付け髭などで複数の役を演じてもらう「スターシステム」が採用された。3Dモデルやリグの使いまわしができ、アニメーターは同じ役者の配置のみでよいので、ポーズや動きに専念できる利点がある。例えばドイツ兵隊に関しては、ひとりで5人分の役をこなしているという

突発的なオーダーにも対応できるように、色や衣装のバリエーションは配置後にランダムに切り替えが可能だ

登場キャラクターは200名を超えるため、一覧表も巨大なものとなった。大部分が同じ3Dモデルのバリエーションちがい。このスターシステムによって、例えば軍の兵隊の3Dモデルがチンピラで使われていることもある

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POINT 02 最新のCG技術と懐かしのセルアニメ表現を融合! 演出と細部にまでこだわったカット制作

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