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MV『SOUND & FURY』No.4 /松本 勝監督が旧知のスタッフと共にディストピア世界を表現

MV『SOUND & FURY』No.4 /松本 勝監督が旧知のスタッフと共にディストピア世界を表現

シンプソン氏がイメージするフォトリアルを目指し、アメ車の特徴を追加

前述の帆足氏に加え、モデラーの田山青児氏、VFXアーティストの町田政彌氏(スティミュラスイメージ)といった旧知の面々も「松本監督がやるなら、手伝いますよ!」と快諾した。「最初に主人公や刀をモデリングして、その後も人手が足りないという話だったので、7月末まで手伝いました。後半はショットワークも担当し、パーティクルを飛ばしたりもしました」(田山氏)。

▲神風動画から提供された、クルマと主人公のデザイン画のひとつ。「画面映えするように」との意図で車体中央にグレーのラインがデザインされていたが、「闇に同化して疾走する忍者」のイメージに近づけてほしいというシンプソン氏の要望を受け、グレーのラインは除外された


▲神風動画から提供されたデザイン画を基に、田山氏が制作した主人公の頭部モデル。作中ではディテールがほとんど映らないが、バストショットに耐えられるレベルまでつくり込んでいる


▲同じく田山氏による主人公の手。こちらは細部まで映るものの「性別がわからない手にする」という条件があり、グローブを装着させた


▲主人公が登場する作中ショット。車外には、前述の野ざらしになった爆撃機が見える


▲主人公の手が映っている作中ショット


主人公が運転するクルマは、神風動画から提供されたデザイン画を基に、北田栄二氏とクリス・コンセプション氏(共にModelingCafe)が制作し、廣茂義人氏(AnimationCafe)がディテールの追加や質感調整を行なった。

▲市販モデルをベースに、北田氏とコンセプション氏が制作したクルマのワイヤーフレーム。こちらは第三次世界大戦前の時代設定のクルマで、作中で大戦後の時代設定のクルマへと切り替わる


▲同じく、北田氏とコンセプション氏が制作したクルマ。こちらは大戦後の時代設定で、細部がカスタマイズされている


▲廣茂氏によって追加されたテールランプのディテール


▲廣茂氏による質感調整。「車体はマットブラック塗装という設定でしたが、マットすぎると情報量が少なくなり、あまり画面映えしないので、塗装の上からコーティングしているという設定にして、周囲の環境が映り込むようにしました」(廣茂氏)


▲カスタマイズ前のクルマが登場する作中ショット。「タイヤにホワイトレターを入れる、ナンバープレートをエンボス加工にするなど、アメ車の特徴を追加しました」(廣茂氏)


▲同じく、カスタマイズ前のクルマが登場する作中ショット


▲カスタマイズ後のクルマが登場する作中ショット。カスタマイズ前と比較すると、ヘッドライトがLEDに変更されていることがわかる。金色のバンパーには段落ちモールドが加えられており、フォトリアルに見せるための細かな工夫が目を惹く


本作のリギングは全て大桃雅寛氏が担当しており、車体はもちろん、車内のキーホルダーにいたるまで丁寧にリグが設定されている。アニメーターの竹内氏とは以前にも一緒に仕事をしたことがあり、多くを聞かずとも、どんな動かし方をするのか察することができたので、どのアトリビュートを開放し、どこを制限するのかといった調整を容易に行えたという。「アニメーターが楽に作業できるように、少ないコントローラで、多くの情報を制御できるシンプルなリグを設計しました」(大桃氏)。

▲クルマのタイヤ周辺の【上】リグと、【下】作中ショット。走行時にはタイヤやブレーキディスクは回転するが、ブレーキキャリパーは回転しないようにリグが組まれており、実際のブレーキ構造をちゃんと再現している。「難しいことはしていませんが、きちんとつくられたモデルだったので、リグも丁寧に処理しました」(大桃氏)


▲社内のキーホルダーにも、ちゃんとリグが設定されている


クルマがトンネル内を走行する終盤のシーンは廣茂氏が担当した。本シーンの背景は、廣茂氏が制作したプリビズ用のラフモデルを基に、BAREHAND Modeling Studioがハイモデルを制作した。シーン構築、レイアウト、アニメーション、カメラワーク、ライティング、コンポジットは全て廣茂氏が担っている。「制作期間が少なく、モーションブラーをかける前提だったので、モデルのクオリティを詰めずにシーンを構築した後で、必要な部分だけ修正しながら作業を進めました。本シーンは『クルマの横に取り付けた360度カメラで撮っている』という設定だったので、V-Rayの魚眼レンズでレンダリング結果を確認しつつ、モデルやレイアウトを調整しています」(廣茂氏)。

▲魚眼レンズによる歪みがない状態のシーン


▲V-Rayの魚眼レンズでレンダリングしたシーン。「光源は太陽による環境光のみで、トンネル内の照明は全て消えているという設定だったので、外壁の穴の大きさやシルエットと、そこから差し込む光のバランスを確認しながら、モデルやレイアウトを調整しています」(廣茂氏)


▲【上】はコンポジット前、【下】はコンポジット後。廣茂氏がディテールを詰めたテールランプが効果的に光っている


©2019 High Top Mountain Films, LLC / Elektra Records.

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