>   >  過去2年で何が変わったのか? 2020年の日本のインディーゲームをとりまく状況<1>
過去2年で何が変わったのか? 2020年の日本のインディーゲームをとりまく状況<1>

過去2年で何が変わったのか? 2020年の日本のインディーゲームをとりまく状況<1>

<3>大量の作品の中から自作のタイトルを選んでもらうために

インディーゲームの配信を支える「パブリッシャー」の選択肢が増えた一方で、それらのサービス内容はまちまちです。残念ながらサービスのバランスが取れていないパブリッシャーも中には存在します。また、親会社の方針転換によって急にブランドがなくなってしまったり、あるいは契約金の未払いといった事件もこの2年で起きてしまいました。つまり、インディーゲームクリエイターは、数あるパブリッシャーの中からどの会社がマッチするかを見極めることがとても重要なのです。

また、前述のような「インディーゲーム」の言葉の広がりによる弊害もあります。100人に近いチームがインディーとして売り出したり、歴史と技術力のある企業が社内の小規模サイドプロジェクトをインディーとして展示会に出したりと、多様なスタイルでインディーゲームを表現する世の中になってきました。個人に近い形で開発しているクリエイターは、同じ土俵で自分の作品を目立たせていくのが困難になってきています。

作品数の増加によって競争がより鮮烈化する中で、インディーゲームクリエイターは自作をプレイヤーにどうやって見つけてもらうか、その方法を模索しています。小規模なタイトルで比較的取り組みやすいのは、SNS上での広報活動と、YouTuberなどのストリーマーによる「ゲーム実況動画」での情報拡散です。

たとえば『カニノケンカ』は、「VRoidHub」というアバターシステムに対応し、ユーザーが用意した任意の3Dアバターをゲーム内に登場させることができます。これにより、バーチャルYouTuberからの注目が広がり、ゲームの動画配信がより面白いコンテンツになるようにゲーム開発者側から歩み寄っている事例です。

手前味噌ながら、筆者の開発中ゲーム『デモリッション ロボッツ K.K.』には、Twitch配信向けの専用機能を搭載しています。動画の視聴者もブラウザ経由でゲーム世界に少し参加できるシステムによって、配信動画コンテンツそのものでマネタイズを行い、同時にゲームファンの中での情報拡散につなげるものです。

もちろん、ゲームタイトルの特性によっては動画コンテンツへの対応が難しいものもあります。その場合は、特定ジャンルに強いレビュアーによるレビュー記事を促進するなど、ファン層に届けるための別の手立てがあります。

小規模チームの作品は、巨大な資本を使って広告を打つことができません。より多くのプレイヤーの手にとってもらうには、良いパブリッシャーを見つけて広報機能を活用することはもちろん、SNSやゲーム実況動画といったプレイヤー側の盛り上がりをサポートする仕掛けをつくっていくことが肝心です。

日本のインディーゲーム作例紹介①『狐ト蛙ノ旅 アダシノ島のコトロ鬼』

本作は、2020年6月に動画が公開された、イラストレーターの「リアス」氏がリーダーとなってチームで開発中の作品です。

美麗な背景ビジュアルで構成された幻想的な和の空間を探索する本作は、インディーゲームファンの中でも注目を集めています。開発を率いるリアス氏は、ゲームの背景コンセプト制作や、ゲームの世界観をつくることを本業とされています。

本作はもともとイラスト連作として「狐とカエルの旅」が発表され、その後キャラクターの3D化を経てゲーム版が発表されたものです。ゲームプレイについては、現在は動画のみが公開されています。キャラクターモデリングは、CGキャラモデラーの「ぺしゃぷー」氏が担当しています。ぺしゃぷー氏はゲームや映像業界で活躍するプロのフリーランスクリエイターです。

まだまだ内容が謎に包まれたタイトルですが、今後の展開が非常に楽しみな作品です。現在「Pixiv Fanbox」にてパトロンを募集しています。

『狐ト蛙ノ旅 アダシノ島のコトロ鬼』
開発:リアス(https://twitter.com/23057
発売日:未定
プラッとフォーム:未定
riascoast.fanbox.cc/posts/1185564

<2>に続く

特集