>   >  「少しでも自分がやってきたものを残していきたい」佐藤順一監督、鎌谷 悠監督 インタビュー >>おジャ魔女どれみ20周年記念作品『魔女見習いをさがして』公開記念
「少しでも自分がやってきたものを残していきたい」佐藤順一監督、鎌谷 悠監督 インタビュー >>おジャ魔女どれみ20周年記念作品『魔女見習いをさがして』公開記念

「少しでも自分がやってきたものを残していきたい」佐藤順一監督、鎌谷 悠監督 インタビュー >>おジャ魔女どれみ20周年記念作品『魔女見習いをさがして』公開記念

「『どれみ』は「もう僕らのものではないな」と感じる」(佐藤監督)

CGW:主人公たちのキャストに対しては、どのような演出をされましたか?

佐藤:森川 葵さん(長瀬ソラ役)、松井玲奈さん(吉月ミレ役)、百田夏菜子さん(川谷レイカ役)の3人は実写のドラマや映画などに出演している方々で、僕もいくつかの作品を観ていたので、芝居については心配ありませんでした。本作では、シナリオを踏まえてキャラクターを演じるスキルに加えて、ソラならソラ、ミレならミレのリズムというか、それぞれのキャストがもっているものをキャラクターに反映してほしかったんです。

画に合わせることを優先すると、それを消すことになってしまうので、「画に合わせようとせず、少しはみ出るくらいの芝居感でやってください」とお願いしました。まず画を見ずに、台本に沿って演じながらキャラクターをつくってもらい、それから改めて画を見て演じていただきました。口パクに合っていなくても良いテイクが録れた場合は、画の方を後から修正することもありました。ただ、皆さんお上手なので、こちらが心配したほどにはそういったことは起きませんでした。

鎌谷:3人とも声優としての経験があまりなかったにも関わらず、事前にけっこうキャラクターをつくってきていたんです。ただ「自然な感じで」とお願いすると、台本を読んでいくにしたがって本当に自然な感じになりました。本作の主人公たちは我々と同じ世界にいる人のつもりでつくっているので、その自然な感じが上手くハマりましたね。

CGW:キャストのお芝居によって、より引き出されたキャラクターの要素として、どんなところが思い浮かびますか?

佐藤:ソラは、どこかじれったい感じが、良い意味で空気を読む優しい感じとして表れました。ミレは、その画とセリフの印象だけだと、けっこうキツいタイプの女性に見えてもおかしくないのですが、松井さんが声を当ててくれたことによって人懐っこさが出た感じがします。彼女がそう演じたというよりも、そこはかとなく漂う感じ。レイカは、自分が辛い思いをしているからこそ、他人がそうなるのが嫌で、自分が明るく振る舞うことで周りも明るくする子。百田さんはアイドルをされている方なので、他人を元気にしていきたいという感じが、ちゃんとレイカの成分の中に入ってきていて、こちらが予想した以上のプラスアルファになりましたね。

鎌谷:もう完全にキャラクターの中に入って、声を当ててもらっているんですよね。例えば実際の人でも、見かけと発する声がちがうことってあるじゃないですか。そういう部分も自然に出ています。この3人に当ててもらえて本当に良かったなと思います。

▲『どれみ』の魔法玉を主人公たちが月にかざすシーン


CGW:本作におけるCGの使い方はどのように考えましたか?

佐藤:映画の中でのCGの扱い方に僕はまだ結論を出せていないので、毎回が探り探りです。ただ、壮大な画をCGでつくると、それはそれで素晴らしい画面にはなりますが、映画のながれにおいては、「いかにも」な感じが出てしまうので、そういう使い方はしない方が良いとは思っています。今回もガッツリCGを使ったところはなくて、僕の方で指定したのは、最初の綿毛が飛んでいくシーン。ミレの勤める会社のビル内を窓越しに映しながらカメラが上昇するところは3Dで組んでもらいました。広さや存在感、質感を出すためにさりげなく使うのが、今回のCGの使い方だと考えました。

▲最初の綿毛が飛んでいくシーン。このシーンをはじめ、本作のCG制作の舞台裏を紹介する記事も近日中にお届けします。ご期待ください


鎌谷:昨今の映画であれば、海岸のシーンの波はCG班にお願いすることが多いのですが、本作では従来の『どれみ』の感じを引き継ぎたかったので、作画にしています。先程の綿毛やビルのシーン以外だと、モブキャラクター、クルマ、魔法玉の表現にCGを使っています(※)。主人公たちが魔法玉を月にかざすシーンでは、魔法玉の中で光が瞬く様子や、希望を連想させるような表現ができればと思い、CG部にアイデアを出してもらいました。とても綺麗な画にしていただき、ありがたかったです。

※モブキャラクター、クルマ、魔法玉は、いずれもカットによってCGと作画を使い分けている。例えばモブの場合は、遠景のものはCG、近景のものは作画で表現している。


CGW:撮影もとてもエモーショナルでした。京都観光の渡月橋のシーンの川面は、劇場のスクリーンで映える画づくりだと感じました。鎌谷監督から、特にお願いされたことはありましたか?

鎌谷:作中の光やレンズフレアには、様々な意味合いをもたせています。純粋な環境光もあれば、希望を示唆する演出もあり、それぞれで表現を変えてもらっています。このあたりは撮影班がとても頑張ってくれました。レイカの回想シーンの処理では、私の漠然としたイメージを色彩設計の辻田邦夫さんが形にしてくださり、それをマスターにして、撮影班が素晴らしい画づくりをしてくださいました。

▲京都観光の渡月橋のシーン


CGW:鎌谷監督にとって、本作での初監督はどんな経験になりましたか?

鎌谷:勉強することが多かったです。現実と同じ世界の作品を扱うのは初めての経験でしたし、イチからオリジナルのキャラクターを立ち上げることの大変さも知ることができました。

  • アフレコ・ダビングについては、佐藤監督のやり方を見習いながら勉強させてもらいました。この経験を踏まえて、次に活かせればなという感じですね。


CGW:佐藤監督は、『セーラームーン』や『どれみ』のシリーズディレクターを務めつつ、幾原邦彦さんや五十嵐卓哉さんなど、多くの後進を育ててきました。鎌谷監督は、その中でも最新の方になりましたね。

佐藤:幾原さんや五十嵐さんの頃は、自分たちがやりたいことを実現するにはどう振る舞えば良いかを伝えつつ、サポートするという感じでした。ただ、未就学児たちが観るアニメをつくるにはやりたいことだけでは駄目で、子供たちはアニメからいろんなものを獲得していきますので、こちらも覚悟が必要なんです。やはり東映アニメーションのような会社が、きちんとした子供向け作品をつくり続ける体制であらねばならないと感じています。

  • 次世代の子供たちに向けてアニメをつくれる現場であり続けてくれるよう、少しでも自分がやってきたものを残していきたいなという気持ちがあります。鎌谷監督は「いらないです」って言うかもしれないけど、「わかれ、受け取れ」みたいな(笑)。


CGW:そして、『どれみ』20周年記念作品として、また『どれみ』の生みの親のひとりとして、お客さんにはどのように受け取ってもらいたいですか?

佐藤:企画としては『どれみ』ファン以外にも届いてほしいという思いはありつつも、最初にお話ししたようにイベントでお客さんの目を見ていると、「もう、僕らのものではないな」と感じるんです。観てきた方々のものなんです。だから今回は、それを預かってつくるんだという気持ちでないといけないなという思いでした。子供向けにつくるものは、自分たちが楽しむためではなく、子供のためにつくるもの。そういう原点を改めて考えながらつくることができました。皆さんに観ていただき、楽しんでもらえることが一番の喜びですね。

▲撮影時、「ハッピーラッキーなポーズで!」とお願いしました。
快く応じていただき、ありがとうございました m(_ _)m



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