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アニメ作品の世界にいるかのようなグラフィックスが魅力のファンタジーアートRPG『二ノ国: Cross Worlds』

アニメ作品の世界にいるかのようなグラフィックスが魅力のファンタジーアートRPG『二ノ国: Cross Worlds』

「二ノ国」シリーズらしく美しくつくり込まれた背景

次に本作の美麗な背景美術について紹介する。本作で使用されている背景は、デザインの段階からネットマーブルによって手掛けられている。背景デザインの制作を円滑に進めるには、企画チームとコンセプトアートチームとの十分なコミュニケーションと、膨大で適切な参考資料が必要になってくると、背景モデリングパートリーダーのイ・ソンヒ氏は言う。背景が制作される手順には、導線レベル、モックアップレベル、ディテールレベル、ポリッシュ&エフェクト配置レベル、最適化レベルといった段階を踏まえて制作されている。まず、導線レベルでは作成された企画書を基にシナリオと狩り場のステージのサイズ、ボスキャラクターとの戦闘場所などをUE4のランドスケープツールを使ってラフに作成していく。UE4上で導線を描き、導線に沿って山脈や平地といった地形を実際にUE4内で確認できるような3Dマップを作成し、ゲーム内でのながれを確認しながら全体的に背景デザインのプランニングが進められていくという。

次のモックアップレベルでは、コンセプトアートを基にしてDCCツールを使って制作されたランドマークのアセットが配置されていく。モックアップレベルではスカイラインの位置や背景の全体的な色味、ライティングの方向などを十分に考慮しながらアセットが配置され検討される。アセットの配置が決まったところでディテールレベルに作業は移る。ディテールレベルでは、最終ルックに近い状態までアセットのディテールをアップし、キャラクターの大きさに合わせたアセットの調整などを行いながら、さらにリッチな表現を探っていく。ほぼゲーム内で使用できるクオリティに背景アセットが構築できたところで、エフェクトの要素を加えていく。背景アセットに対して光りものやグローが必要であれば適用し、動的なエフェクトを追加しながら、より魅力的な背景となるようにつくり込まれる。ほぼ背景が完成したら、最後にテクスチャのサイズ調整やメッシュのLODなどを最適化して完成となる。

「背景のコンセプトアートは、スタジオジブリがもつアニメ作品の背景美術のテイストやコンセプトを踏襲しつつ、これまでにリリースされている「二ノ国」シリーズのテイストを活かした方向性で制作しました。コンセプトアートを制作する上ではスタジオジブリの背景美術を多く手掛けている男鹿和雄氏の作品をとても参考にしました。彼の作品に描かれている筆のタッチなども背景のテクスチャに反映したいという意見も多かったです。背景制作を進める上で、一番気を遣った部分は、色味と空気感で、明るく朗らかな背景画面になるように彩度を低めにして、長時間ゲームをプレイしても目が疲れない画面になるように気をつけています。背景のルックが決まるまで実写と絵画の中間的な画風を活かすために、様々な試行錯誤を経てプロトタイプを作成しています。背景の細かい要素を構成する色のひとつひとつから、スタジオジブリ作品のようなテイストを感じ取ってもらえたらうれしいですね」と背景原画パートリーダーのグ・ミョンシン氏は語る。

本作は非常に広大なフィールドが表現されたMMORPGだが、スマートフォンでプレイできるように様々な開発上の工夫が施されているという。まず上げられるのがLODの活用だ。本作ではポリゴン、ボーン、アニメーション、フィジックス、パーティクルなど多くの要素にLODを適用して軽量化を図っている。また、キャラクターのフェイシャルを構造化して、ゲーム内の多くのカットシーンで再活用できるように工夫されているという。また、ライティングの要素は非常に処理負荷のかかる点だが、ライティングをテクスチャに記録する静的なライティングの代わりにダイナミックライトを使用している。これはスマートフォンの性能では、ファイルのローディングが非常に遅いのとテクスチャメモリの使用を極力減らして、スマートフォンでも快適な操作環境を実現するための選択だという。ちなみに本作のライティングでは太陽光による影を生成するためのディレクションライト、最大3つの方向に照射可能なポイントライト、ワールドの特定の位置から空間を照らすカスタムライトなどが使用されている。

そのほか背景制作においては、ここまで紹介した他にも様々な手法が採り入れられている。例えば、空の表現では色温度を変化させることで自然な色と動きのある多様な雲をプリセットによって素早く環境構築できるようにしたり、エリアフォグを実装することで特定の位置の空気感や色彩を調整して雰囲気を演出することができるようになっている。また、スマートフォン用に作成したベースメッシュの反射オブジェクトを利用して水面や地面の反射などを表現することも可能になっている。そのほかに作業環境ではカスタムグリッドの開発によって、アニメーションやVFXの範囲を正確にマッチングさせて素早く作業できるような工夫も施されているという。

背景のデザイン

▲コンセプトアートの一例

▲実際のゲーム画面。スタジオジブリの美術背景の表現を上手く採り入れて、シリーズのテイストを継承しつつも新しい「二ノ国」の世界が表現されている

背景制作のながれ



  • ▲背景アセットが出来上がるまでの工程を切り出したもの。企画書やシナリオを基にUE4のランドスケープを使って大まかな起動や地形を作成した導線レベルの背景



  • ▲導線レベルで作成したステージを基に、実際にゲームで使用するアセットに近い状態のアセットを配置したモックアップレベルの背景画像。この段階で背景の色味やライティング、スカイラインの位置などが検討される



  • ▲よりディテールを作り込んで実際のゲーム画面に近い状態までブラッシュアップしたディテールレベル



  • ▲さらにエフェクトや空といった要素を加えて完成

キングダムのカスタマイズへの対応

▲本作の特徴でもあるキングダムの背景カスタマイズの例

▲カスタマイズの自由度を上げるために、背景に配置されている全ての要素を動的に追加変更できるように設定が構成されている

空の制作

▲空の背景の作業画面。用意されているプリセットやパラメータを調整することで、空の色温度の変化や雲の形状、厚みなどを効率良く自然な背景として作成することができるようになっている

ライトの設定

▲背景アセットのライティングの例。本作ではテクスチャにライティングの状態をベイクするのではなく、ダイナミックライトを使って表現されている。画像はライトがない状態

▲ディレクションライトを使って外からの光を描画したもの

▲ポイントライトを使って背景の奥などを部分的に明るくした状態

▲カスタムライトを使って部屋の中間地点などを限定的に明るくしたもの

高い開発力で「二ノ国」のテイストを崩すことなくスマートフォンゲーム化

ここまで『二ノ国 Cross Worlds』のメイキングを紹介してきたが、これまでコンシューマゲーム機やPCをプラットフォームとして展開されていた「二ノ国」シリーズを、これまでのシリーズのテイストを壊さず、デバイスの能力が限定されるスマートフォンゲームで遜色なく新しいゲームとして実現させることができたのはネットマーブルネオの高い開発力があってこそだろう。「これまで多くのゲームを開発してきましたが、今回は今までにないほどに愛情を込めて開発してきました。ゲームが公開されてから、プレイしてくれたユーザーの反応も我々の考えていたレベルよりも良い結果が出ているのは非常にうれしいです。みなさんがこのようにゲームを楽しんでくれていることに感謝しています。今後もより良いグラフィックスのゲームを開発していきたいと思います」とチェ・ナムホ氏は結ぶ。

現在、本作はスマートフォンだけではなく、ベータサービスではあるがPCエミュレータによるゲームプレイも可能になっているので、興味ある人はぜひプレイしてはいかがだろうか。

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