既成概念を打ち破り、様々な手法を採り入れる
効率化と表現への飽くなき追求
3DCG の作業量が非常に多かった第1部では、警官隊を 3DCG でイチからモデリングする時間の余裕がなかったという。そこで、アートディレクターの鈴木氏(写真右)に警官の絵を描いてもらい、これを 3D 空間に取り込み、ライティングから生まれる影やパース感を出すために、絵に沿って立体的に押し出してモデルを作成。警官には銃を撃たせなければいけなかったので、押し出したモデルにほかのキャラクターの腕を貼り付け、それらしく見せることに成功した。「実験的な挑戦でしたが、面白い取り組みになりました。自分でも気に入っているシーンなんですよ」と永田氏(写真左)は振り返る。
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第1部、第2部を通して 3DCG を担当した永田氏<左>と螺旋階段や壁画、キャラクターのテクスチャも手がけた第1部アートディレクターの鈴木氏<右>
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鈴木氏が描いた警官のイラスト。腕は後から 3DCG で加えるため、イラストでは描かれていない。なお、端の警官をこっそり「ジョジョ立ち」させているのは吉邉氏のオーダーとのこと
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鈴木氏が描いた絵を押し出し、ほかのキャラクターの腕を貼り付けて警官を作成<左>。カメラアングルからだと押し出したモデルだとはまったく気が付かない<右>
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このカットでは、石仮面を被って人間を超越したディオを演出するため、素早く跳ぶ銃弾をスローで動かし、リアルな金属の質感で表現された。全編を通して漫画調で描かれている中で、この銃弾だけを唯一リアルに描くことで、ディオの変化を強く印象付けている
第2部では、物語の鍵となるエイジャの赤石が登場する。この赤石は、作画のようなスタイリッシュなハイライトと 3DCG によるリアルな映り込みの両方を取り入れることになったのだが、3DCG の赤石にどのようにして作画のハイライトを取り入れるかが問題であった。思案を巡らせて辿り着いたのが、携帯電話などの広告でよく使われる下図のような手法。その応用で試してみると、作画のようなハイライトを思い通りの場所に入れることができた。「3DCG のキレイさと作画の格好良さがうまく合わさったら良いなと思ったので、わがままに両方取り入れました」(永田氏)。目指す表現を追い続けることこそが、それを実現させる鍵なのかもしれない。
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第2部のラストのカットで登場するエイジャの赤石は、石自体に鏡の質感を設定し、周りに貼った宇宙の絵を映り込ませている①。石のハイライトは白い球体を反射させることで表現②③⑧。球体自体はレンダリングを無効にしてカメラに映らないようにしつつ、反射物としての影響は出るように設定した。この球体を変形させたり④⑤⑦、ときには赤石自体を貫いたりさせながら⑥、作画と 3DCG 両方の良さを取り入れたハイライトに仕上げられている。「エイジャの赤石のハイライトの動きは、"25 年前の作品が 25 年前にアニメ化されたらどうなるか"というイメージで、古き良きアニメを踏襲して作りました。手法が作画から 3DCG に変わっても、作る人間が世代交代しても、目指すものはブレていないんだということが伝われば良いなと思います」と永田氏は語った
©荒木飛呂彦/集英社・ジョジョの奇妙な冒険製作委員会