神風動画が LightWave 3D を選ぶ理由
中小規模の制作環境で高いパフォーマンスを発揮
神風動画では、3DCG ソフトウェアに LightWave 3D を使用している。第1部、第2部を通じて 3DCG を担当した永田氏は、「LightWave 3D は、日本のアニメーション業界における制作規模や予算の中で最大限に能力が活かせるソフトウェアです」と言い切った。他の 3DCG ソフトウェアを使った経験もあるそうだが、それらのソフトウェアは緻密にワークフローを組むことで初めてポテンシャルを発揮する。つまり、ソフトウェアを活かすためには、きちんとワークフローを構築する必要があるのだ。「そこに時間や予算を費やすくらいならば、作品制作に注ぎ込みたいです」と永田氏は続けた。LightWave 3D を使うメリットはほかに、シンプルで動作が軽いこと、Ver.11 からセルエッジに対応したビューポート・プレビュー・レンダラー(VPR)によって、最終出力に近いものを見ながら作業ができることなどが挙げられた。
レイアウトでアニメーション設定などの作業を行いながら、ビューポート上で最終レンダリングに近い画質でのリアルタイムな確認が可能になるというビューポート・プレビュー・レンダラー(VPR)機能。これにより、テストレンダーを行うことなく最終出力に近いものを確認でき、ストレスなく作業を進められたという
アニメ制作会社で LightWave 3D が制作ツールの選択肢から外れる理由については、アニメ寄りのシェーディングプラグインが用意されていないことだと水崎氏は補足した。その点、神風動画では After Effects を用いてセルルックを作り上げるワークフローが確立されており、LightWave 3D 単体でセルを描き出す必要はない。3DCG アニメーション素材を出力できれば良いのだ。
第1部の OP では原作を目指すという意図から、原作の漫画のコマからキャラクターが動き出し、スクリーントーンを使ったモノクロの漫画調と色の付いたカラーのセル調のキャラクターが行き交うという演出が取り入れられている。この演出では、After Effects を使った神風式コンポジットをはじめ、今まで神風動画が培ってきた様々な技術が威力を発揮。原作の雰囲気を忠実に再現した映像に仕上げられている。
【ジョナサンの素材】
表情は Morph Mixer を使用して調整された
キャラクターの法線情報①を元にライティング用のマスク②を作成。カラー情報③と合わせてテクスチャ④で陰影が付けられた。ほかにマスクも用意されている。目・金属⑤、肌⑥、髪⑦、キャラアルファ⑧
原作のタッチとラインの再現にはかなりの時間が割かれた。タッチは粗く太い線のテクスチャ<上左>と細い線で描き込んだテクスチャ<上右>の2種類が、ラインは太さの違う3種類<下左><下中><下右>が用意された
線の太さの強弱は、グレースケールのマスクを用いて AE 上で調整されている
LightWave 3D で作成した素材は、AE を使用して最終セルに仕上げる。そのためには、エッジの強弱や陰影処理など多くのレイヤーが必要だ
完成した漫画調のジョナサン〈左〉とセルテイストのジョナサン〈右〉。モノクロとカラーが行き交い、原作漫画のキャラクターがそのまま動き出すような映像は見応えがある
©荒木飛呂彦/集英社・ジョジョの奇妙な冒険製作委員会