審査員総評
今回の作品審査に参加していただいた審査員のみなさんの総評を紹介しよう。
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秋元純一氏
トランジスタ・スタジオ(取締役副社長)
2006年に株式会社トランジスタ・スタジオ入社。専門学校時代よりHoudiniを使用し続けて、現在ではCGWORLD.jpにて「Houdini Cook Book」を連載中
http://www.transistorstudio.co.jp/
【総評】
プロ・アマ問わず、どちらも非常に楽しませてくれる作品が多くありました。やはりプロの作品は削ぎ落とされた演出で、リッチな質感で見せてくれるものが多くあり、納得の仕上がりになっていると思いました。ギミックが凝っているものから技術力が圧倒的なものまで、納得の作品ばかりでした。当然業務の合間で対応する事もあり、応募総数こそ少なかったものの、作品は凝縮されており、非常に見ごたえを感じました。学生作品も、プロ顔負けの作品も多数あり、正直、年々レベルが上がっていると感じています。レベルが上がっているという表現よりも、もしかすると、技術が学生レベルでも扱えるように、簡単になっているのかもしれません。
ただこれは警鐘ですが、使用できる技術が、自分に見合っているかどうかはまた別物です。きっちりと基本的セオリーを身に着けている事がいかに大事な事か、今回の作品作りを通して感じて貰えればと思います。どんなに技術力があっても表現力が劣っていれば役には立ちません。逆もまた然りで、全てはバランスが重要です。
例えばモデラーになりたい人でも、映像作品を一通り作ってみる事で、モデラーとして重要な事柄をコンポジットの時点で発見出来たりする事も、一連で作業をして初めて気がつく事だと思います。例えハイクオリティなものが出来なくとも、経験値としてチャレンジする事が大切です。今回は、プロフェッショナルな方の作品を拝見する事も出来る機会だったので、是非自分の作品と何が違っていて、どう作り込まれているのか、参考にしてみてください。
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竹本宏樹氏
DNEG (Senior Environment Generalist TD)
大阪出身。1999年大阪市立工芸高等学校、2001年大阪ヒューマンアカデミーを卒業。大型商業施設内装デザインおよび映像デザイナーとして働いた後、半年間の語学留学へ。帰国後の2003年、CG制作会社でジェネララリストとしてキャリアを再スタート。2007年フリーランスアーティストとして活動し、2010年デジタル・メディア・ラボに所属。その後、再びフリーランスを経て2016年8月からロンドンのDNEGへ所属。
https://www.dneg.com/
【総評】
沢山のアイデア、想いが集まり、とても面白い作品が沢山集まったのではと思いました。こういった制作や取り組みを通して、VFXで伝えられる面白さや、日常のストレスや寂しさを、楽しみに変えれるアイデアや視点が、少しでも明日への活力に繋がれば、とても素敵なことだと思います。
全体を通して今回少し気になったのは、"ステイホーム"という言葉を少し意識しすぎた人が多かったのかなと思いました。もっと自由に、自宅でできるユーモア作品を追求しても
よかったのではと感じました。
最後に、今回のコンテストを通じて、VFXの魅力や力を改めて考え直すことができました。
ありがとうございました。また、機会がありましたら他にももっと面白いアイデアも見てみたいと思います。
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中島信也氏
東北新社(CMディレクター)
1959年福岡県生まれ大阪育ちの江戸っ子。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。 '83「ナショナル換気扇」でCM演出デビュー。デジタル、VFXを駆使した娯楽性の高いCMで受賞多数。アリナミンV「魔人Vシリーズ」、日清食品カップヌードル「hungry?('93カンヌ広告祭グランプリ)、サントリー「燃焼系アミノ式」、「伊右衛門」、 TOTOネオレスト「菌の親子」、AirPAY「オダギリジョーシリーズ」などを演出。 '96劇場用映画「ウルトラマンゼアス」'10「矢島美容室」監督。
https://www.tfc.co.jp/
【総評】
未来は明るいんとちゃうかな、って感じさせてくれる作品にたくさん出会えておっさんは幸せを感じました。予想もしてなかった「ステイホーム」という世界。でも目の前に「コンピュータ」さえあればイマジネーションの旅をどこからでも、いつからでも始められる。誰とでもつながることができて、どこへでも旅立つことができる。この「ステイホーム」という世界の中で生まれた作品たち。そこにはアイデアとクオリティの両面で「わあ、こいつらこのまま行ったらきっとこの先、たくさんの人を楽しませる映像作品を生み出しよるで!」っちゅう人類の明るい未来を予感させるポテンシャルを持ったものがわんさかありました。PCネイティブたちにとって「ステイホーム」は時間というプレゼントを与えてくれた臨時サンタさんかもしれないですね。「ステイホーム」が明けたとき、今度はリアルの中の感動をいっぱい体験して、またまたPCの前に戻ってきてほしい。そこにはこれまでよりもっと多くの人の心を動かすクリエイティブが生まれるはず。未来は明るい!
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成田裕明氏
Pixar Animation Studios(Lead Technical Director, Effects)
兵庫県出身。サンフランシスコの大学院卒業。ソニーピクチャーズ・イメージワークス(ロサンゼルス)にて、エフェクト・テクニカルディレクターとして実写映画のVFXに携わる。その後、ウォルトディズニー・アニメーション・スタジオへ移籍し、「ベイマックス」「ズートピア」、「モアナ」等の制作に携わる。2017年にピクサー・アニメーション・スタジオに移籍。「インクレディブル・ファミリー」、「トイストーリー4」、「ソウルフル・ワールド」等に携わる。
https://www.pixar.com/
【総評】
ステイホームということで、空間が限られていた分、その制限を突き破るような発想や工夫が組み込まれた作品がたくさんありました。
今回は技術的な部分ももちろん評価の対象でしたが、それ以上にVFXをどうを取り入れているや作品の全体的な仕上がりなどに注目して見させてもらいました。
映像やStorytellingをどれだけ効果的に見せるかというのがVFXの大きな役割です。作りこまれたモデリングや派手なエフェクトが必ずしも最善な表現ではないのが面白いところです。
自分も学生時代の自主制作は技術や道具、設備がないなりに知恵を振り絞って作っていたので、応募作品を見ながら「ああ、ここは苦労しただろうな」「ここは上手く見せてるな」と共感できました。
ステイホームから湧き上がってくる思いや願い、メッセージが込められた作品もありました。今回のようにコンテンツを発信し、共有する機会を活かしていくことで、ひとりのアーティストとしてさらに成長し、たくさんの人を勇気づけていくのだと思います。
応募された皆さんは既に発信する力と手段の両方をお持ちなので、これからまた世に送り出されていく作品を目にするのが今から楽しみです。
作品制作、本当にお疲れさまでした。
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八木竜一氏
白組(監督)
東京都出身、1987年に白組に入社。CMのデジタルマット画やゲームムービーのCGディレクションに携わる。CGディレクターとして参加したゲーム『鬼武者3』のオープニングムービーでは、国内外の数々の賞を受賞。以降、NHK教育で短編アニメ『うっかりペネロペ』の演出などを務める。『friends もののけ島のナキ』(11)で映画監督デビュー。監督2作目の『STAND BY ME ドラえもん』(14)が、第38回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞。最新作は『STAND BY ME ドラえもん 2』(20)。
https://shirogumi.com/
【総評】
学生の皆さん、たくさんご応募して下さってありがとうございました!大変見ごたえがありました。
プロの方々は、どの作品もコダワリが詰まっておりました。
ステイホームという事で、ご自身の机まわりの作品が割と多かったです。
また、人が出てきて演技する作品の方が面白くなりやすいと思うのですが、その様な作品が少なくて勿体無いと思いました。
僕は、「一般の人が観た時、心が動かされるか?」を基準に作品を選びました。
選出作品はどれも、驚いたり、笑えたり、ウキウキしたり、不思議な気持ちになったり、ジンワリさせて頂きました。
長編映画を作るのも、30秒の映像作品を作るのも、「観てくれる人のため」という所は一緒だと思ってます。
これからも「気持ち」が入った「心が動く」作品をお互い心掛けましょう!
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米岡 馨氏
StealthWorks.(代表取締役・FXスーパーバイザー)
2002~2011年にかけて、アニマ(旧笹原組)、アニマロイド、デジタル・メディア・ラボ、オムニバス・ジャパン、OXYBOTなど、複数の国内プロダクションでCG制作に携わる。2011年、エフェクトアーティストとして、PIXOMONDOのベルリンスタジオへ移籍。2012年、ScanlineVFXのバンクーバースタジオへ移籍。 両社で学んだハリウッドクオリティのエフェクト制作を日本で実現するため、2014年帰国を決意。2015年、エフェクト専門プロダクションのステルスワークスを設立。シン・ゴジラ、鋼の錬金術師を代表とする大規模エフェクト制作だけに留まらずセミナー、執筆などの分野でも活動中。
https://www.stealthworks.jp/
【総評】
全体の総括としては、皆さんSTAYHOMEという限定されたシチュエーションで色々な妄想を膨らませつつVFXという技術を使って
閉塞感を打破しようとアイデアを出し合っているところにCG、ひいてはエンターテインメントの可能性の広さを感じた。SNSが当たり前になり皆が発信者になれる時代、VFXを扱えることがいかに強力な武器になり得るかを再確認したのではないだろうか。これがまず良かった点である。
そして改善点を挙げるとすればSTAYHOMEという縛りから如何に遠くへ離れるかというアイデアの重要性といいアイデアにより深い没入感をプラスするためのVFXそのもののクオリティアップであろう。ただしこの手のコンテストはお祭り騒ぎになってこそのものであり、完成させること、参加することに意義がある。今回納得の行かないものだったとしても一つのものを完成させたことは確実に次への布石になる。
まずこのコンテストを盛り上げようとして頂いた全ての方に感謝の念を送りたいと思う。そしてまた新たなタレントの発見を楽しみにしたい。ただ次回はSTAYHOMEという題材ではない、コロナ禍を確実に克服した明るい未来の先にある物が題材になることを切に願っている。
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