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映画『テッド』

映画『テッド』

2つのプロダクション間でのルックの統一

求められた緊密な連携

テッドの VFX 制作は、フレ氏が所属するクリエイティブ・カルテル(ロサンゼルス)、クラーク氏が所属するティペット・スタジオ(カリフォルニア州)、イローラ(オーストラリア)の3社によって進められた。クリエイティブ・カルテルは VFX 全般のマネジメント、スケジュール管理、予算管理、様々な機関との調整を担当。実際の VFX 作業はシークエンス単位に分けられ、全体の約半分をティペット・スタジオが、もう半分をイローラが担当した。

クラーク氏にとって最大の挑戦は、ティペット・スタジオが手がけたテッドと、イローラが手がけたテッドとのルックの統一だったという。「とりわけ、毛のルックの統一には多くの努力と時間が必要でした。毛を表現するにあたり、両社は完全に異なるレンダラとシステムを使っていたからです。毛のやわらかさ、起伏、固まり具合を合わせるのに加え、シェーディングのパラメータ調整も必要でした」。ティペット・スタジオは Furator と名付けられた RenderMan ベースのインハウス・ファーシステムを以前から構築しており、本プロジェクトではグローバルイルミネーション・シェーディングとアンビエントオクルージョンの機能を強化して使用した。一方のイローラでは、レンダリングに V-Ray3Delight を用いていたため、ルックの統一には両社の緊密な連携が必要となったそうだ。

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2つの組織をひとつのチームにする

プロジェクトが本格始動する以前から、異なるシステムとレンダラによって1体のキャラクターを表現することの難しさをフレ氏も認識していた。「2つの組織を可能な限り統合し、全スタッフが"自分たちはひとつのチームである"と感じられるようにすることが、本プロジェクトを成功に導くための鍵でした」。そこでフレ氏は、全体を統括する VFX スーパーバイザーになってくれるよう、クラーク氏に依頼したという。

クラーク氏を中心としたリーダーたちは頻繁に Skype を使ったミーティングを行い、チームとしての連帯感を高めていった。「プロジェクトの初期に、私たちは同じ背景素材、モーションキャプチャデータ、カメラデータ、ライト情報を共有し、ルックテストのためのレンダリングを行いました。そこで明らかになった差異を極限までなくし、最良の結果を生み出すためにどのように協力し合うべきか、私たちは意見やアイデアを率直に交換し合ったのです。このようにして、全員のプロフェッショナリズムが1つの目的に集中された結果、両社のルックは監督にも判別できないほどのレベルで統一されたのです」とクラーク氏は語った。

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ティペット・スタジオが担当したシークエンス。<左>の実写映像に<右>のテッドが合成され、キャプチャデータをベースにアニメーションが付けられている

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ファーとクロスは別々にレンダリングされた。ぬいぐるみ特有の人工的なファーを表現するため、Furator の光の吸収率や反射率の調整が必要になったという

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制作末期には両社のショットをつなげて追加のシークエンスを制作したが、ほとんど見分けがつかないほどルックを統一できたとクラーク氏は語る

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