<2>宮﨑 駿監督初の3DCGアニメーション短編『毛虫のボロ』、櫻木氏が自身に掲げたミッションとは?
――さしつかえのない範囲で来年の展望をお聞かせください。すでに宮﨑 駿監督の3DCG作品『毛虫のボロ』に参加されていることが明らかになっていますが、そちらの現場の様子はいかがでしょう?
櫻木:『毛虫のボロ』は、三鷹の森ジブリ美術館で公開される作品なので、いつまで制作が続くのか僕にも本当にわからないんですよ。なので、来年の予定は本当にわかりません(笑)。ただ制作現場自体はすごく快適で、今までにないくらい健全な職場だと思います。
© nihon animator mihonichi LLP.
「日本アニメ(ーター)見本市」公開作品『新世紀いんぱくつ。』
――宮﨑監督と言えば作画の巨匠でもありますが、制作における意思疎通はいかがでしょうか?
櫻木:「そんなにキッチリつくらなくていいよ」と言われることがあるのですが、どうもキッチリとつくることに僕が一生懸命になっていると思われているみたいなんです(笑)。手描きの場合、キッチリ描くということ=手間のかかることなのですが、CGの場合は元々正確な立体を描画しているので、キッチリする方が"楽"(=自ずと正確に描画されてしまう)なんですね。そこに手描きとCGの、ある種の感覚のちがいのようなものがあると思います。CGで手描きのように味がある画を描くには、"崩す"作業を意図的にしていく必要があります。CGの場合、単純にラフにつくっただけではミス(アーティファクト)としか思われないので、「キッチリ崩さないといけない」わけです。そこでどう上手く崩していくのかを常に考えながらつくっていますね。そしてそれが今回の作品における自分に課せられたミッションだと思っています。
――では、個人的な目標についてもお聞かせください。
櫻木:「ちゃんとドラマをつくれるようになりたい」と常々思っています。『新世紀いんぱくつ。』では短編としてひとつ密度の高いルックの作品をつくれたので、それが長い尺になったときにどういうルックで、どういうつくり方をすればハマるのかは次に考えなくてはいけないことだなと。あとは絵をいっぱい描きたいですね。3DCGが使えると、イラストを描く場合も背景とかレイアウトをきる上ですごく楽なんですよ。それにキャラを置いて撮影処理をかけるといったかたちで、CGアニメーション制作で培ったノウハウを用いて描けるのが自分にとってすごく描きやすいので。
――イラストレーターのお仕事の依頼があったら、やってみたいですか?
櫻木:ぜひやりたいですね。ライトノベルのイラストを描きたいです。そしてその作品がアニメ化されたら監督もぜひ(笑)。3DCGでつくるときは最終的に自分でデザインを起こさなくてはいけないので、結局のところ自分がCGでできる絵に寄せる必要があるわけです。イラストの時点からそれを見越してできるなら、それが一番だと思います。
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「日本アニメ(ーター)見本市」公開作品『新世紀いんぱくつ。』
――今後、一緒にものづくりをしてみたいクリエイターはいらっしゃいますか?
櫻木:自分よりも若い人たちとつくってみたいですね。今年は、Netflixの上陸など動画配信サービスが注目されたりして、メディアの在り方がすごい勢いで変わってきてますし、ちょっと年がはなれると価値観や感性もちがってくるんです。
――最後にCGWORLD読者に向けたメッセージをいただけますか?
櫻木:今ここで語った内容を信用しないで(鵜呑みにしないで)ください(笑)。今後もずっと同じことを考えているかどうかはわからないですし、何かしらの影響で考え方が変わることは大いにあり得ますから。この時点ではそう思っていたというくらいに留めていただければと思います(笑)。
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「日本アニメ(ーター)見本市」公開作品『新世紀いんぱくつ。』
INTERVIEW_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
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