<POINT:2>バトルシーンやユニットセットのアニメーション
ウィルウェアを使ったダイナミックなアクション、Likoのキュートなアニメーションなど、本作はCGアニメーションならではの見どころが非常に多い作品だ。アニメ的な動きの見せ方を踏襲しながらも、どこか戦隊特撮のアクションを見ているようなアニメーションに仕上がっている。「特撮ヒーローのような演出を非常に大切にしたいと思っていたので、特撮ヒーローものならではのアクションのケレン味を表現することにポイントを置いています。また、一部モーションキャプチャを導入してみたことにも関連しますが、メカが動いているのではなく、中に人が入っているんだということを意識してアニメーションを作成しています」と都田氏は話す。
モーションキャプチャのシステムは、オレンジ社内にXsensのMVNを使用したスタジオを設けており、他の作品でも利用されているという。この"中に人が入っているようなアニメーション"という方針は、ヴァーチャルマスコットLikoのアニメーション付けにも活かされている。Likoのアニメーション付けは全話を通してひとりのアニメーターが担当している。キャラクター専任のスタッフがアニメーションを付けることで、統一された個性のある動きを実現することができたという。
また、オレンジによるアニメーション付けの作業はキャラクターだけに留まらず、ウィルウェアを着用するユニットセットのマニピュレータのアニメーションや指揮車両の発進シーンなど多岐に渡る。本作では絵コンテを忠実に再現するだけでなく、絵コンテを基にアニメーターがカットをつくりながらアドリブで動きを付けることも多い。そのようなアニメーターから積極的にアイデアを監督へ提案する作り方は、演出側にも好評価を得ているという。
ミュトスとストライクインターセプターのバトルシーン
▲本作のアニメーションの制作方法には、作画先行で進むカットとCG先行で進むカットの2種類があるという。画像は12話に登場するミュトスとストライクインターセプターのバトルシーン。このカットはCG先行で制作されている。このようなダイナミックなアクションのあるカットでは、背景も全て3DCGで作成し、カットを作成しているという。「このような3DCGがメインのカットになると、CGアニメーターも折角だからダイナミックにつくろうと、モチベーションを高くもって作業することができていたと思います」(都田氏)
パース誇張によるカット制作
▲ダイナミックなアクションシーンのアニメーションを演出するため、パースの誇張なども使われている。作例はミュトスがカメラに向かって腕を突き出すカットだが、ケレン味のあるアニメ独特のパース感を表現するため、腕のパーツのスケールを極端に変形させて表現している。LH Auto-Rigで作成したリグは、このような部分的な変形にも柔軟に対応できるためとても使い勝手がいいという
モーションキャプチャの活用
▲第3話では新しい試みとしてモーションキャプチャを使ったアニメーション制作が行われている。モーションキャプチャを使うことで「中に人が入っている感じを出したい」という目的もあるが、ウィルウェアがハッキングされて自動で動いている状態と、自分の意思で動いている状態とを手付けとモーションキャプチャを切り替えて使用することで、微妙な動きのちがいを表現することをねらったという。また、手付けでは振り付けに手間がかかってしまうダンスのアクションも、プロのダンサーの動きをキャプチャすることで、リアルで臨場感のある動きを効率良く作成することができた。「モーションキャプチャは準備にやや時間がかかりますが、準備さえできてしまえばその後の作業は非常に効率が良い」と都田氏。一部のカットでは都田氏自身がキャプチャスーツを着込んでキャプチャした部分もあるという
Liko のアニメーション
▲Likoのアニメーションもアドリブの演技が多い。この例ではアニメーターのアイデアで絵コンテにはなかった指し棒が小物として追加された。「こういうアドリブのできるスタッフがよく出てきたなと思います。こちらの想像以上にやってくれた」と都田氏。そのほか、フェイシャルに関してもモデラーが想定していないような、設定にない表情までも作り出されていることもあるという。声優を"キャラクターの中の人"と呼ぶことがあるが、専任のアニメーターが全話を通してアニメーションを付けることで、アニメーターもそのキャラクターの"中の人"になれたのではと都田氏は話す。また、Likoのアニメーションはアフレコではなく事前にセリフを収録して、音声に合わせてアニメーション付けするプレスコ形式で進められている。アニメーターのセンスにプラスして、プレスコでアニメーションを作成することで声の演技に合わせてアニメーションが付けられるので、より感情豊かな動きにつながっているのだろう
ユニットセットシーン
▲いくつものマニピュレーターがウィルウェアのパーツを、次々に装着させていくユニットセットのシーンは絵コンテを基に、都田氏が3Dモデルを動かしながらアドリブでアニメーションを作成している。「とても大変なカットで、集中して作り上げていきました」と都田氏。パーツを装着していく順番を考慮しながら、その場でパーツを分解、または新たに作成しながらアニメーション付けをするなど、非常に大変な作業となった。都田氏はこうした、たたみかけるようなメカの動きを付けるときは、「音が付いたときの気持ち良さ」を常に考えながらアニメーション付けをしているのだという
TEXT_大河原浩一(ビットプランクス))
PHOTO_弘田 充
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