<3>具体的なディレクションを徹底し着実にブラッシュアップさせていく
アニメーション工程の作業はダイナモピクチャーズがモーションのクリーンアップ、マーザ(全体の約20%、コアメンバー2名)、神央薬品が(全体の約40%、6〜8名)、台湾Next Animation Studioが(全体の約40%、4〜6名。主にドラマシーンを担当)というチームに分かれて作業が行われた。アニメーション作業は2016年3月から9月にかけてレイアウトが出荷されたものから順次着手。キャプチャベースレイアウトされたものをポリッシュしていくのが主な作業だが、指先の動きはキャプチャしていないのでアニメーション工程による手付けが施された。アニメーションのチェックデータはプレイブラストで行われているのだが、プレイブラスト用マシンを準備しツールを介し行われていたため待つコストも大幅に軽減されている。そのほかにも「Blastmatic」というインハウスツールを使いパブリッシュされたアニメーション情報を監視しサーバ上でプレイブラストが行われデイリーでアップデートされる。ムービー生成も自動化を行うことで外注からアップデートされるデータが常に最新の状態になりチームにシェアされる。またアニメーションのプレビューにもViewport 2.0+独自にカスタマイズしたDirectXシェーダが用いられている。DirectXの採用理由はビュー上でフェイシャルのシワが確認できること、またAOで接地の足が浮いていないかのレンダリング前のエラーチェック用途に導入したそうだが、サイドエフェクトとして眉間まわりに余計な影が強く出てしまうことがあったので今後の良い課題になったという。
外部パートナーとの連携はSHOTGUNを介して行なった。リテイクは1ショット3回ルールを基本に、チェック依頼がきたら24時間以内に返すなど時間の意識を徹底的に行なっただけでなく、履歴確認しミスディレクションを減らすための努力を怠らないようにしたそうだ。「ディレクションに関して、銃の持ち方など特殊なものは文字ベースではなく写真やリファレンス提示したりしました。すごく簡単なことですがこういったコミュニケーションは非常に重要です」(坂本氏)。なお、お気に入りのドラマ描写はロッジのシーンだと坂本氏。「レベッカの立ち去るときの怒りの表情から寂しさの演技が素晴らしいですね。アクションパートはどこを切り取っても良く出来てると思います」。必ず成功すると自信はあったと語る坂本氏。突き詰めた効率化と経験によるもので制作中は監督が任せてくれることが多く楽しかったと力強さを感じることができた。
プレビューの最適化
本プロジェクトで用いられたフェイシャルリグ。「向かって左側がメインで、右側が微調整用のtweekコントローラです(今回はほとんど使用していないとのこと)。いくつかはカスタムアトリビュートを有するコントローラーもあります。必ず連動して動くところは極力まとめることでコントローラ数を減らすように工夫しています」(坂本氏)
ボディアニメーションを付ける際のシェーディング表示
先述のとおりDirectX11のシェーダを利用することで同じアトリビュートでも眉間のシワ等の表示精度がかなり向上されている。「表示はリッチで最終的なルックに近いのがメリットですが、再生時のFPSが著しく下がってしまうため、キーとなる表情はこのビューでチェックしつつ、アニメーション作業自体はボディ用の表示で行うアニメーターが多かったですね」(坂本氏)
インハウスツール「Blastmatic」のUI。パイプラインにアップされている、リグ、アニメーション、カメラなど、シーンを構成する要素を全て最新バージョンで収集した上でシーンを自動構築してプレイブラストを自動生成する。ショットごとにプレイブラストを更新、複数ショットを一括で更新するといったことも可能なほか、動画の再生にも対応。さらにパイプラインを監視して、データの更新があったショットのプレイブラストを夜間に更新するといった機能も備えている
SHOTGUNを介したレビュー
他のセクションと同様にアニメーションチェックもSHOTGUNを介して行われた。「SHOTGUNの機能を活用して、『前とまったくちがうことを言ってるぞこいつ!』を予防しました(笑)。新しいコメントを残そうと(左ペイン)すると、右側に過去のコメントが表示される仕様になっています。コメントを残した際のバージョンのムービーも即座に再生できるようにもなっているので、修正リクエストが反映されていない場合などは言い方を変えるなど、適確に伝える努力にも意識を割きました」(坂本氏)
アニメーション工程ワークフロー
本プロジェクトのアニメーション工程のデータフローを図示したもの。他のセクションと同じく、リテイクは3回までを厳守。また、坂本氏はチェックのリクエストが届くと、24時間以内に必ず返すことも自身に課していたそうだ
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映画『バイオハザード:ヴェンデッタ』
2017年5月27日(土)全国公開
エグゼクティブ・プロデューサー:清水 崇
監督:辻本貴則
脚本:深見 真
音楽:川井憲次
原作監修:小林裕幸(カプコン)
プロデューサー:篠原宏康
CGプロデューサー:宮本 佳
CGディレクター:中井 翼
製作:マーザ・アニメーションプラネット
配給:KADOKAWA
biohazard-vendetta.com
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