不思議な世界の住人たち
本作に登場するキャラクターは、人型ではなく大砲やドリルなどを備えたシンプルだが愛嬌のある造形だ。そのねらいをみていこう。
ファンタジー感を後押しするキャラクターデザイン
このゲームではテキストでの説明が存在しない代わりに、ナビゲーターとしての機能と球を撃つ機能をもつサポートキャラクター「砲台くん」が登場する。「最初は無機質な印象を受けると思いますが、徐々にプレイヤーに好意をもっているように演出しており、感情移入できるようになっています」(北尾氏)。砲台くんさえ視野に入れていれば、何をすればいいのかわかるようにゲームデザインがされている。また、砲台くんのほかにもこの世界の住人として様々なキャラクター「住人くん」が登場する。「子供にも愛されるような造形を意識して、子供っぽい住人、ツインテールの住人、剣やドリルをもった男らしい住人など役割に応じて考えました。ボツになったデザインも多いです」(増田氏)。増田氏は2Dデザインから3Dモデリングまでを担当しており、2Dのアセット制作にはトータルで半年ほど関わっていたとのこと
キャラクターモデル
住人くんの3Dモデルは砲台くんをベースにしている。頭に乗せるものの種類によって特性が異なっており、それぞれにバリエーションがある。基本仕様は、砲台くんが4,000ポリゴンほど、そのほかの住人は1,000ポリゴン以内でつくっている。なお、砲台くんと住人くんはフォーマットが同じなので、胴体などパーツを共通化して組み合わせることでコストの削減につながったとのこと
キャラクターのシェーダ構成
シェーダに使用しているのはUnity 5のスタンダードシェーダ。テクスチャサイズは512×512。アルベドとAO、ノーマル。オプションで発光用にエミッションも入れている。テクスチャの絵を焼くのにはxNormalを使ったが、精度があまり良くなかった部分にはSubstance Designerを使っている
砲台くんおよび住人くんの共用シェーダ設定画面
砲台くんのテクスチャ構成
ノーマル
VRくんテクスチャ構成
その他の住人のテクスチャ構成
VR体験にメリハリを生むアニメーション
本作のアニメーションはプレイヤーの視線誘導や迫力を出すといった目的で、シンプルではあるが様々な工夫が凝らされている。
キャラクターのリグ
砲台くん・住人くん共用のリグ構造。砲台くんも住人くんもベースの骨は6本で、それぞれのキャラクターの仕様によって追加の骨を入れている。造形がシンプルなのでリグも必要最低限の構成だ
視線誘導の役割を担うキャラクターアニメーション
本作はテキストによる誘導がないため、ゲームを進める方法として視線誘導をいくつも採用しているが、そのひとつが砲台くんを動かすことだ。「砲台くんのかわいさは手付けじゃないと表現できないので、全て手付けで作成しています。リアルになりすぎないように、メリハリを出すことを意識しました」(増田氏)
砲台くんが大きく体を振るアニメーション
イーターくんが球を食べるアニメーション
破片のアニメーション補正
本作では、プレイヤーが打ち返す球の動きやブロックなどが壊れる動きはUnity標準搭載のPhysXによる物理シミュレーションで表現しているが、大規模な破壊の際には、迫力を出すために瓦礫がカメラに向かって飛んでくるように補正を入れている。「破壊した瞬間にパフォーマンスが一気に落ちることが多かったので、できるだけコリジョンを素早く消すなどして物理的な負荷を減らしていました」(犬伏氏)
瓦礫をカメラ側に飛ぶよう補正すると、VRくんの方に瓦礫が飛んでくるため迫力のあるVR映像となる