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映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』が実践した、フォトリアルな描写とアニメーションの融合

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』が実践した、フォトリアルな描写とアニメーションの融合

TOPIC 3.写実的な水の表現

作画で構成された画にリアルな質感の3DCGを組み合わせたCUTの中でも印象的なのが、ホースやスプリンクラーから出る水の表現だ。これらの水は、3DCGによる流体シミュレーションではなく、After EffectsのプラグインParticularを使って作成されている。水のエフェクトを作成したのは、高松玲子コンポジットスーパーバイザーだ。
「舞台が夏の作品なので、夏らしさを演出するための水の表現がどうなるか非常に期待されていました。作画エフェクトとリアルな質感の3DCGエフェクトでサンプルを作成したところ、リアルな質感で表現してほしいという演出サイドからの要望があり、その方向で進めることになりました。水がホースから出るニュアンス、特に二股に分かれてゆっくり放出される表現が難しく、リファレンス映像を撮影して参考にしています」(高松氏)。制作当初は、美術背景や作画がアップしていなかったため、仮素材で屈折や放出位置の見当をつけつつ、素材の上がりを待った上で最終調整が行われた。

Particularによるホースの水(跳ね返る)

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ホースから出る水の跳ね返りの表現(以下のメイキングは仮素材での作業のため、最終映像とは多少異なる)

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カメラと3Dレイヤー配置。水の跳ね返り用にレイアウトに合わせて3Dレイヤーでキャラ素材とプールサイドの床を平面素材で配置

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Particularで放水アニメーションをつける。Particularのパラメータ設定はPhysicsの設定をBounceにして、キャラセルレイヤーをwall、プールサイド床の平面をfloorに設定、キャラセルに関してはアルファ部分のみ反映されるようにWall ModeをLayer Alphaに設定。セルが大幅にずれない範囲で跳ね返りに奥行を出すためセルレイヤーをX軸方向に倒して調整(1つ上の「カメラと3Dレイヤー配置」の画像を参照)。跳ね返った後の水の調整だけを制御するため、Aux Systemパラメータで制御している

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ほしい箇所にハイライトが出るようにライトを配置してライティング調整

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図・左上:particularで作成した水
図・右上:particularで作成した水に、ミディアンやCC Glassエフェクトを適用して水質感を調整したもの
図・左下:被写界深度用のmap
図・右下:典道が手を払う動作に合わせた飛沫も別で作成


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仮BGとキャラセルの上から作成した水素材を明暗複数のレイヤーを重ね調整。particularで奥行グラデーションだけのマップ素材も作成し、被写界深度を追加

Particularによるホースの水(二股に分かれる)

ホースから出て二股に分かれる水の表現

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  • 美術とセルのレイアウト図

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1段目・左から:仮BG→Particularで作成した左側の水素材<1>→Particularで作成した右側の水素材<1>
2段目・左から:キャラセル→Particularで作成した左側の水素材<2>→Particularで作成した右側の水素材<2>
3段目・左から:ライティングとエフェクトを適用して水質感を調整したもの(水素材<1>)→モーションブラー追加
4段目・左から:ライティングとエフェクトを適用して水質感を調整したもの(水素材<2>)→ホースの出口付近の飛沫
最下段左から:画面を流れる水素材→被写界深度用のmap(水素材<1>)→被写界深度用のmap(水素材<2>)


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コンポレイヤー構造とFxパラメータ。タイムシートの指定通りにシミュレーションを制御することが難しいため、二股に分かれている水を左右でパーツに分け、画面手前にくる水も別パーツにする。Particularでパーツ分けした水素材をそれぞれプリレンダリング後にタイムシートに合わせてタイミング調整をする。ライティングとミディアンやCC Glassエフェクトを適用して水質感を調整

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画面に付く水滴。画面に付く水滴もParticularで作成
図・左下から:水滴用テクスチャ→画面に向かって飛んでくる水滴素材→画面に付いて動かない水滴素材


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コンポジット画面
1段目・左から:仮BG→キャラセル追加
2段目・左から:ホースの水追加→ホース水に歪み追加→被写界深度追加
3段目・左から:画面に付く水滴追加→画面を流れる水追加
4段目:合成コンポのレイヤー構造
ホースの水素材は明暗複数のレイヤーを重ね調整。Particularで作成したマップ素材を使用し、被写界深度を追加。画面に付く水滴素材はレンズ補正やフォーカスブラーなど適用して合成。そして、画面を流れる水素材のマットでディスプレイスメントマップとブラーを全体に追加後、ハイライトのみを上から合成している


写実的な水の表現〜映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』メイキング<1>


Particularによるスプリンクラーの水

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スプリンクラーから出る水の表現(以下のメイキングは仮素材での作業のため、最終映像とは多少異なる)

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美術とセルのレイアウト図

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1段目・左から:BG→キャラセル
2段目・左から:スプリンクラー遠景素材→スプリンクラー近景素材<3>
3段目・左から:スプリンクラー近景素材<2>→スプリンクラー近景素材<1>
図・右端:合成コンポとレイヤー構造
スプリンクラーの水素材はいずれもParticularで作成。水素材は明暗複数のレイヤーを重ね合成し、水素材のアルファを使用しディスプレイスメントマップとタービュレントディスプレイスで歪みを追加している


▶次ページ:
<2>アニメーションの醍醐味、ファンタジックな表現

Profileプロフィール

ダンデライオンアニメーションスタジオ/DandeLion Animation Studio

ダンデライオンアニメーションスタジオ/DandeLion Animation Studio

左から、佐藤裕記リードモデラー、酒井俊治シニアプロデューサー、林 敬学チーフマネージャー、坂本典也モデラー、遠藤 工CGディレクター、陸 鵬テクニカルアーティスト、高松玲子コンポジットスーパーバイザー、荻原あすかリードモデラー、横川由梨CGアーティスト、金谷翔子リードモデラー。以上、ダンデライオンアニメーションスタジオLLC

www.dlas.jp

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