<2>エフェクトアーティストはある意味ゼネラリストとも言える
CGW:エフェクトをより効果的に演出するための工夫は、みなさんどうされていますか?
近藤:オーダーのまま言われた通りにつくれば良いというわけではなく、作品に合わせてアニメ的に誇張する必要があったりしますからね。「魅せるエフェクト」を心がけてつくっているので、日頃からリファレンス動画以外にもいろんな動画を観て参考にします。不謹慎かもしれませんが実際の爆発や炎上とかの動画ですね。あとは、アニメの「神作画」をまとめた資料なんかを見ていると、エフェクトにはメリハリやタメ・ツメがすごく大事だなとつくづく思います。
秋山:タメ・ツメが効いているシミュレーションを再現する工夫はどうしていますか?
近藤:僕の場合はパラメータをいじるのがメインですが、ムービーは力技が効くのでレンダリングした画像を間引いて雰囲気を出したり。カメラを回り込むようなカットだったら、キャッシュのフレームを間引いてタメ・ツメがあるように見せたりとか。
鈴木:なるほど。シミュレーションの結果をムービー編集的に操作できるイメージですね。
秋山:単純に間を詰めるのとアニメ的な誇張で他に何か工夫していますか? 例えば、誇張してオブジェクトをやたらと伸ばすといったような。
近藤:リファレンスとしては現実のものを見て参考にしていますが、方向性としてはメリハリのあるエフェクトを目指すので、制御的にはあり得ない極端な数値を入れたり、煙だったら衝突判定にかなり極端な数値を入力して速度を早くさせて勢いを出したりしますね。
CGWORLD vol.234の近藤氏によるTIPS記事。記事に掲載のスプライトシートをこちらから配布中だ
秋山:僕は、ゲームの場合シミュレーションは使わずにAfter Effectsでつくってしまうことが多いので、ものによっては手描きでやったりしています。
近藤:コマで見てそれっぽく見える、みたいな?
秋山:実はアニメーションは僕の弱い部分でもあるので勉強しないといけないんですが(笑)。動きだけじゃなく、ゲームエフェクトだとたくさんのエミッタを組み合わせてつくっているけど、フラッシュ1個とってもタイミングがぴったり合うと気持ちよく見えますよね。0.1秒ちがうだけで随分と変わってくる。他の要素と一緒に効かせちゃうと潰し合ってしまったりするから、うまく組み合わせないといけませんよね。
近藤:リファレンスとしては作画が多いですか?
秋山:ゲームエフェクト自体を見たり、あとはPinterestが多いかな。最近は中国のクリエイターがつくったエフェクトがけっこう出てくるんですが、上手いですよね。
近藤:中国のはすごいですね。ムービーもゲームも単純にクオリティ高いですよね。仕事取られそうという危機感を覚えます(笑)。
秋山:本当ですよね! 人が足りないと言っている間に中国に仕事を取られるんじゃないかと。とはいえ、まだアドバンテージがあるかなと思うのはやはりセルルック表現の部分で、例えば最近UE4で制作された日本の某アニメのゲームとか完璧ですよね。
近藤:あれでアニメがつくれますよね(笑)。そんな今だからこそ、日本がゲームエフェクトを牽引していきましょう!
鈴木:さっきの間の取り方の話に戻るんですが、私は学生時代にステージでジャグリングをしていたことがあってですね。
一同:また意外な一面(笑)!!
鈴木:「身体を使って人を楽しませたい」という思いがあって、プログラミングとはまったく関係なく6年くらいやっていました。どのようにステージに登場してどのように動くか、という部分は特にモーションの起承転結に通じるものを感じます。例えばシルク・ドゥ・ソレイユなどを見ていると間の取り方がすごいですよね。
CGWORLD vol.234の鈴木氏のTIPS記事「PopcornFXによるサウンドビジュアライザー」の作例動画
近藤:生で見ていても映像的なキレがありますよね!
鈴木:ライティングも含めてステージ芸術というか。総合的なヴィジュアルがとにかくすごい。
秋山:そうなんですよね。一見すると関係なさそうなものでも、意外なところで肥やしになることが多いですね。
近藤:同感です。エフェクト制作をしていると、いろんな分野が合算させれるような気がしませんか? 絵的な技術ではテクスチャを描いたり、タメ・ツメといったモーションに関する要素も必要だし、プログラミングの知識も要るし。
秋山:エフェクトだけどゼネラリストみたいな。
近藤:ハイパー・ゼネラリストというか(笑)。