<03>XFLAG PICTURES×サンジゲン
『閃剣の神威』PV・『救済者ミロク』PV
▲【ついに獣神化!】『閃剣の神威』PV
Vコンテからリギング、撮影までを一気に制作
YouTubeで公開されている、「モンスト」PVの『救済者ミロク』や『閃剣の神威』など、作画アニメ的なCG表現を駆使した、密度の高い映像で個性を放ったのはサンジゲンだ。同社創造部部長で、一連の制作で3Dスーパーバイザーを務めた植高正典氏は「キャラクターの一番の個性をムービーの中に落とし込んでつくり込まなくてはいけないんだなということを再認識しました」と語る。
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左から、植高正典CGディレクター、矢代奈津子リギングディレクター。以上、サンジゲン
www.sanzigen.co.jp
一般的に、アニメ制作においてまず重視されるのは世界観であることが多いが、「モンスト」のアニメ作品の場合はキャラクターを最も重視するのが特徴だ。その個性や魅力を表現するポイントさえ押さえていれば演出は自由だったと、振り返る。リギングディレクターの矢代奈津子氏は「キャラ愛が伝わってきましたので、それに応えられるリグを組む必要があり、緊張感のある仕事でしたね」と語る。
▲【激・獣神祭登場!】『救済者ミロク』PV
「モンスト」のキャラクターには、「進化前」と「進化/神化後」の2段階があり、同じキャラでも進化前と後では造形が異なるなど、基本的に一点モノだ。 動きの特徴や見せ方が大きく変わることもある。また、限られたスケジュール内で、1人のリガーが進化前・後と1体ずつ、数日で組み上げる必要があったため、自社開発の「フルリグ支援ツール」を使って全体の基礎を一気に組み上げ、要所となる部分に注力し改良するかたちで対応したそうだ。
▲サンジゲンのリグチームが開発した「フルリグ支援ツール」UIならびにミロクのボディ&フェイシャルリグ。「3ds Max標準のBipedをモデルに合わせて配置すれば、各種コントローラ付きの『フルリグ』を生成できます」(矢代氏)
▲ミロクPV向けに行われた膝関節のリグ改良例。青色のコントローラを仕込んだことでより自然な見た目を実現した
ワークフローとしては、まずXFLAG PICTURESが簡易的なVコンテを作成。打ち合わせで演出イメージを伝え、それを元に植高氏がVコンテを作成した。「最低限の演出はVコンテの中に入れてあるので、あとはアニメーターがいかにプラスアルファを盛っていけるか」(植高氏)。目指す表現が明確なため、アニメーションの作業に集中できる状況をつくれるのもこの手法のメリットだ。サンジゲンの、演出から撮影までを社内でワンストップで行う体制も相まって、こだわりの画づくりが効率良く行えたという。
▲神威PVに登場する神威を取り囲んだ多数モンスターの格闘カットの変遷を図示したもの。<A>植高氏が作成したビデオコンテ/<B>アニマティクス工程テイク3/<C>セルルック工程テイク4。本PV内で最も多くのキャラクターが登場する難しいカットだが、担当アニメーターの大森大地氏がアドリブでアクションを盛って外連味あふれるカットに仕上げたという
最後に今後の目標を聞くと、こんな答えが返ってきた。「XFLAG PARK(LIVEエンターテインメントショー)向けに制作したダンスムービーが楽しかったので、また音楽系コンテンツをやってみたいですね。キャラがカワイイし、リグの部分でも新しい挑戦のしがいがあります」(矢代氏)。XFLAG スタジオの幅広いコンテンツ展開においては、今後も沢山の作品をスピード感を持って創ることが求められるだろう。それらはアーティストにとってはまさに絶好の舞台と言えそうだ。
TEXT_日詰明嘉
PHOTO_弘田 充
©XFLAG