[PR]

XFLAG PICTURESは何を考えアニメーション制作に臨んでいるのか? それを探るべく『モンストアニメ』をはじめXFLAG PICTURESの映像制作に様々なかたちで関わってきた、マーザ・アニメーションプラネットanimaILCAサンジゲンの3チームに制作現場でのエピソードを語ってもらった。

取材をする中で各社が共通して挙げたXFLAG PICTURESの特徴は「スピード感」「熱量」、そして「キャラクター愛」だ。アニメーション制作でも「ユーザーサプライズファースト」を実現するため、これらを高いモチベーションで維持し、瞬発力あふれるアイデア出しや、合理的な手法の模索を行う姿が見えてきた。そして、こだわりを持ちつつも、実作業を担当するクリエイターにバトンを渡してからはゴールまでの道筋の選択は自由であるという。

オーダーはシンプルに、資料やアイデアは豊富に、そしてユーザーに喜んでもらうためにはリスクも厭わない......。XFLAG PICTURESにとってそれが各社・各クリエイターへの信頼の証なのだ。3チームが映像を創る中で3様に感じた「XFLAG PICTURESのアニメ制作」とはどういうものか、また、3チームがそれぞれどう解釈し具現化していったのか、実例と共に紹介していこう。

<01>XFLAG PICTURES×マーザ・アニメーションプラネット
映画『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』公開記念ムービー

▲映画公開記念ムービー Part1「オラゴンの映画デビュー」編

愛されキャラを創り出すために相応のリスクをとる

XFLAG スタジオを代表するサービスである「モンスト」のマスコットキャラクターのオラゴンが、映画への出演に意気込んでいる様子を可愛らしく表現したWebプロモーション用ムービー3部作。制作を担当したマーザ・アニメーションプラネットの山岸次郎監督と、ストーリーボードを制作した木下宏幸氏は、XFLAG PICTURESの考え方の自由さと「躊躇せずに一歩を踏み出せる姿勢」に驚かされたという。

  • 左から、木下宏幸ストーリーアーティスト、山岸次郎ディレクター。以上、マーザ・アニメーションプラネット www.marza.com

「われわれマーザの、社内でのくだけた空気だからこそできるつくり方を、XFLAG PICTURESさんでもそのままできたことが新鮮でした。最初から『面白いものならリスクをとるぞ』という姿勢があり、その根本には視聴者の方々に喜んでもらうためにどうすべきか、という信念があるように思います。日頃大事だと思いつつも、つい忘れがちなところを再確認できたことも良い経験でした」(山岸)。

▲映画公開記念ムービー Part2「怒りのオラゴン」編

▲映画公開記念ムービー Part3「オラゴンにお知らせ」編

背景をシンプルに、キャラクターは幅広い世代の人が親しみやすい質感で、というベースのリクエスト以外、構成や演出方法は自由で、闊達にアイデアを出し合えたという。ストーリーリールづくりに際し木下氏は、欧米の映像制作で一般的な、長方形の紙にシーンアイデアの絵を描き、それに大勢で意見を出し合って膨らませていく方法をとった。コメディタッチの作品だからこそまず開発の場が盛り上がることが必要、という考えの下、企画会議中に即興で描いたり、時には自ら紙芝居のようにセリフも発しつつ提案した。これによってアイデアの熱量を保ちつつ、スピード感を持って精度の高いプランを仕上げることができたという。

▲アイデア出しの場で木下氏が即興で描いたラフスケッチの例。これらをベースにストーリーボードが制作される

木下氏はオラゴンが「損をすることで愛されるキャラ」であるところに着目し、人間味を感じさせる表現を工夫した。アセットにおいては、質感に注意を払い着ぐるみのような印象を払拭しつつ、その人間味のある多彩な表情を表現できるように仕上げられた。オラゴンの口の開け方は大小様々で、ストレッチ&スクワッシュにも対応できるよう、フェイシャルリグは2層構造にされた。「シンプルなデザインだけど、多彩な表現を可能にするためです。動きは全てキーフレームで、いかに良い表情を出せるのかを優先しました」(山岸)。この映像をきっかけに、オラゴンのキャラクターとしての幅が広がり、XFLAG主催のイベントや直営店舗内の演出用映像が新作されるなど、マスコットキャラクターとしての地位をより強固なものにすることにも繋がったそうだ。

▲オラゴンのボディ&フェイシャルリグ(mGearで構築)ならびにフェイシャル作成例。口の開閉をどのように実現するかを、モデラー、アニメーター、リガーで協議を重ねた結果、図のようなかたちにまとめられた。頭部は肌色のオブジェクトの上に赤いオブジェクトが覆うように構成

▲特殊パーツ使用時の質感テスト。生命を持つキャラクターとして、堅さや着ぐるみ感を払拭すべく調整された

次ページ:
<02>XFLAG PICTURES×anima/ILCA
『モンストアニメ 消えゆく宇宙編』

構成_日詰明嘉
PHOTO_蟹 由香
©XFLAG

[[SplitPage]]

<02>XFLAG PICTURES×anima/ILCA
『モンストアニメ 消えゆく宇宙編』

▲『モンストアニメ(2017 消えゆく宇宙編)』第1話「終わりの始まり」

豊富な資料を活用した完成度の高いCG制作

『モンストアニメ 消えゆく宇宙編』で全話数の実に半分以上の尺を占めるCGパートは、animaとILCA両社の協業で制作したものだ。本作では、複雑なデザインのモンスターを原作ゲームのイメージのままアニメに登場させることが求められた。それをCGで制作することでカメラワークが自由になり、見応えのあるアクションシーンを実現している。その好例が第1話に登場したエデン。セル調の人型モンスターと比べ、色の階調が多いためアンビエントオクルージョンやスペキュラも併用して情報量を高めている。


▲『消えゆく宇宙編』第1話に登場する敵キャラ「エデン」のデザイン設定と完成3DCGモデル。当初は作画の予定だったが、anima/ILCA側からの提案によりCGで制作された

CGによるレイアウトは話数を追うごとに増え、坂本龍馬も当初は提供されたモデルをリファインして使用していたが、第8話以降はモーフターゲットを作り直し、より豊かに表情が作れるようにされた。XFLAG PICTURESからのリクエストは、イメージボードやキャラクター設定資料という形で渡された。それを指針とし、具現化の手法については両社に委ねられていた。先述のエデンも自主的に試作したモデルが採用されたのだとか。また、エフェクト表現についてもイメージボードをベースにCGを活かした表現に変換していく。0から1を生むよりも1を10にすることに作業時間を使うことができたため、完成度高く仕上げられたとのこと。「「モンスト」はキャラクターがどれだけ格好良いかが大事なので、しっかりディレクションされたものが僕らのところに届きます。逆に、質問したことに対しては基本的に即日、細かく説明を返していただけました」と、animaの中村友紀CGディレクター。

▲ミロクの電撃エネルギー弾のイメージボードと、CG作業例。こうした資料が必要に応じてXFLAG PICTURESから豊富に提供される一方、具体的な制作手法についてはパートナーに一任されるため、効率良く制作が進められたという

アニメーションチェックにおいては、CgFXシェーダでハードウェアレンダリングしできるだけ精度高いルックでチェックできるように配慮された。さらにILCAが自社開発したビューア「Aquarium」も活躍したそうだ。Webブラウザベースで作られているためどこでもスムーズなチェック環境を実現。ペイントオーバーや修正前映像と修正後で比較同時再生などが可能など、4年前の導入以来、積極的に改良が重ねられている。「限られたグローバルIPからのみアクセスを許可することで、セキュリティ面にも配慮しています。」とは、ILCAの鮎川浩和CGスーパーバイザー。

今後の目標について中村氏は「観た人が納得できるアニメCGを引き続き追求してきたいと思います。そしてanimaもILCAもCGプロダクションなので、フルCG案件もぜひXFLAG PICTURESさんとご一緒できれば」と語ってくれた。

▲animaが開発した「AnimaLine」の使用例。AnimaLineのライン表現は、レンダリングするカメラを基準としてフレーム毎にポリゴンで生成される。これにより、ビューポート上での確認ができることをメリットにしている

▲ILCAで開発したウェブベースのレビューツール「Aquarium」の使用例(最終チェック時のUI)。「クライアント、協力会社様でも閲覧ができます。ftpなどを介さなくても適確にチェックを行えるので各所のレスポンスが早くなります」(鮎川氏)

次ページ:
<03>XFLAG PICTURES××サンジゲン
『閃剣の神威』PV・『救済者ミロク』PV

構成_日詰明嘉
PHOTO_蟹 由香
©XFLAG

[[SplitPage]]

<03>XFLAG PICTURES×サンジゲン
『閃剣の神威』PV・『救済者ミロク』PV

▲【ついに獣神化!】『閃剣の神威』PV

Vコンテからリギング、撮影までを一気に制作

YouTubeで公開されている、「モンスト」PVの『救済者ミロク』や『閃剣の神威』など、作画アニメ的なCG表現を駆使した、密度の高い映像で個性を放ったのはサンジゲンだ。同社創造部部長で、一連の制作で3Dスーパーバイザーを務めた植高正典氏は「キャラクターの一番の個性をムービーの中に落とし込んでつくり込まなくてはいけないんだなということを再認識しました」と語る。

  • 左から、植高正典CGディレクター、矢代奈津子リギングディレクター。以上、サンジゲン
    www.sanzigen.co.jp

一般的に、アニメ制作においてまず重視されるのは世界観であることが多いが、「モンスト」のアニメ作品の場合はキャラクターを最も重視するのが特徴だ。その個性や魅力を表現するポイントさえ押さえていれば演出は自由だったと、振り返る。リギングディレクターの矢代奈津子氏は「キャラ愛が伝わってきましたので、それに応えられるリグを組む必要があり、緊張感のある仕事でしたね」と語る。

▲【激・獣神祭登場!】『救済者ミロク』PV

「モンスト」のキャラクターには、「進化前」と「進化/神化後」の2段階があり、同じキャラでも進化前と後では造形が異なるなど、基本的に一点モノだ。 動きの特徴や見せ方が大きく変わることもある。また、限られたスケジュール内で、1人のリガーが進化前・後と1体ずつ、数日で組み上げる必要があったため、自社開発の「フルリグ支援ツール」を使って全体の基礎を一気に組み上げ、要所となる部分に注力し改良するかたちで対応したそうだ。

▲サンジゲンのリグチームが開発した「フルリグ支援ツール」UIならびにミロクのボディ&フェイシャルリグ。「3ds Max標準のBipedをモデルに合わせて配置すれば、各種コントローラ付きの『フルリグ』を生成できます」(矢代氏)

▲ミロクPV向けに行われた膝関節のリグ改良例。青色のコントローラを仕込んだことでより自然な見た目を実現した

ワークフローとしては、まずXFLAG PICTURESが簡易的なVコンテを作成。打ち合わせで演出イメージを伝え、それを元に植高氏がVコンテを作成した。「最低限の演出はVコンテの中に入れてあるので、あとはアニメーターがいかにプラスアルファを盛っていけるか」(植高氏)。目指す表現が明確なため、アニメーションの作業に集中できる状況をつくれるのもこの手法のメリットだ。サンジゲンの、演出から撮影までを社内でワンストップで行う体制も相まって、こだわりの画づくりが効率良く行えたという。

▲神威PVに登場する神威を取り囲んだ多数モンスターの格闘カットの変遷を図示したもの。<A>植高氏が作成したビデオコンテ/<B>アニマティクス工程テイク3/<C>セルルック工程テイク4。本PV内で最も多くのキャラクターが登場する難しいカットだが、担当アニメーターの大森大地氏がアドリブでアクションを盛って外連味あふれるカットに仕上げたという

最後に今後の目標を聞くと、こんな答えが返ってきた。「XFLAG PARK(LIVEエンターテインメントショー)向けに制作したダンスムービーが楽しかったので、また音楽系コンテンツをやってみたいですね。キャラがカワイイし、リグの部分でも新しい挑戦のしがいがあります」(矢代氏)。XFLAG スタジオの幅広いコンテンツ展開においては、今後も沢山の作品をスピード感を持って創ることが求められるだろう。それらはアーティストにとってはまさに絶好の舞台と言えそうだ。



TEXT_日詰明嘉
PHOTO_弘田 充
©XFLAG