<2>Manekiのライティングフロー構築に大きな影響をもたらしたBD/DVDパッケージ再現テスト
「新しい手法の導入にはどうしても抵抗感が生まれますので、KOSと同じ画では現場のアクションが得られません。これを抑えるだけの説得力を得るためにも、より高品質な仕上がりをよりシンプルなワークフローで実現してほしいと要望しました」(吉平氏)。Manekiの仕上がりイメージの指標として、2期BD/DVDの2巻・5巻のパッケージアートの2点が選ばれた。前者は「明るい(光源が強い)」、「背景が2D美術」、後者は「暗い(光源が多い)」、「背景が3Dモデル」という特徴がある。
「具体的にお互いにとって必要なものをつくるためには、多くの話し合いが必要でした。私にはアニメ制作に関するバックグラウンドがなく、一方PPIの片塰(満則)さんはスタジオジブリ出身という最高のバックグラウンドをおもちです。まずは『アニメの画』がどういうものかを徹底的に教わりましたが、このやり取りには延べ半年ほどを要しました」(パオロ氏)。
DVD2巻(左)、5巻(右)用のカバーアート
まず取りかかったのは5巻のパッケージ。パオロ氏は、キャラクターも背景も3DCGでつくられているこちらの方が難易度が高く、より興味深いと感じたという。しかし、実際には美術で背景が描かれている2巻パッケージの方により多くの時間を割くこととなった。パオロ氏の見込みとは異なり、パッケージアートを手がけた片塰満則氏は当初からこちらの方が難易度が高いと考えていた。
「部屋が白く、シーツもあるためバウンス(照り返し)を考慮する必要があり、さらに窓のブラインドからの光......極めて複雑な光源で構成されています。パッケージアート制作時にも、ライティングを替えて2種類レンダリングし、さらにコンポジット時にリライトでリムライトを足すなど手を加えていました。これがコンポジットなしに得られるならとても素晴らしいと考えていました」(片塰氏)。
「5巻パッケージの後に2巻の方に取りかかり、ライティングの複雑さ、難易度の高さに気づきました。実は、この2つの課題に取り組むまで、なぜパッケージアートを再現したいのか疑問に思っていました。これらがスペシャルな工程で仕上げられているとは知らなかったのです。実際、2巻パッケージの再現を行なったことがManekiのライティングフロー構築に大きく貢献しました」(パオロ氏)。
●片塰氏によるパッケージアートの制作工程
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2巻のパッケージをmental rayでレンダリングした未加工の画像。背景は2Dで、後ほどAfter Effectsでコンポジットする
After Effectsでのコンポジット画面
After Effectsでのコンポジット画面
●Manekiによるパッケージアートの再現工程
【5巻パッケージ】
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Manekiでレンダリングした未加工の画像。背景も一緒にレンダリングされている
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コンポジットは非常にシンプル。NUKEで光学エフェクトとグロウを追加する
NUKEでコンポジットしたManekiでの最終結果
【2巻パッケージ】
NUKEで光学エフェクトとグロウを追加