<2>CG作品でも実写作品と変わらない制作スタイル
CGW:監督は今までアニメーション作品を手がけられたことは?
中尾:今までは実写ばかりでしたので本格的なアニメーションは初めてです。
CGW:実写であればキャラクターづくりにおいて、その役者の存在感や雰囲気からも確立されていく部分があるかと思いますが、アニメーションでは、ある程度の設定を決めてイラストレーターに託すことになります。今回のキャラクターづくりはどのように進めていきましたか?
中尾:性格づけを文面で書いてお渡しして、あとはもうグリヒルさんの第一印象でとおまかせしました。なにしろツボに入った絵だったので(笑)。
ササキ:ほとんどNGがなかった記憶がありますね。言われなさすぎて心配になるくらい(笑)。
中尾:作品が上手く転がるときって、得てしてそういうものなんですよ(笑)。
CGW:制作体制とフローはどのようにされていますか?
中尾:プレスコをした音源データを基にVコンテをつくり、カメラポジションとか動きを全部僕の方で指示し、それを韓国のCGスタジオW.BABAに渡して、ラフなCGが上がってきてそれをチェックして、最終的なCG映像にというながれですね。僕のつくり方としては実写と同じです。
中尾:『タイムスクープハンター』はフェイクドキュメンタリーでしたから例外ですが、基本的にいつも絵コンテを描いて計算して演出していくので、アニメと実写のちがいは僕の中であまりない感じですね。セットデザインもCGではデジタル上で置き換えて同じように考えますし、ストレスなくできました。
CGW:コンテを切るときに時間はかかりましたか?
中尾:実写のときはへのへのもへじで簡単に描くんですけれども、今回は言葉の問題もあるから詳細に描く必要があって、そのぶん結構時間がかかりましたね。
CGW:仕上がりはいかがでしたか?
中尾:最初こそ、少しぎこちないところがあったのですが、すぐに良くなりました。それに、僕もどんどん上を求めてしまうところがあって(笑)。TVシリーズなのに、大がかりでつくった舞台セットをあっさり壊してしまったり(笑)。
CGW:演出上、実写作品とちがいはありましたか?
中尾:実写の場合だと、現場でこれにトライしてみようとかこのテイクをやってみようとか相談して、何が出るかわからないような化学反応の面白さがあるのですが、アニメーションの場合は全てこちらでコントロールできるので、そのあたりは全部自分でシミュレーションして決める必要がありました。どちらが良いかということではなく、そのちがいにおける面白さはありましたね。今回はプレスコだったので、そこでアドリブをやってもらったりして、それをそのままCGに置き換えています。
CGW:声のディレクションはどのようにされていたのでしょうか?
中尾:まず1回自由にやらせて、感情が乗りやすいところがあったら変えても構わないようにやってもらっています。実写の芝居と同じように、アニメのセオリーを考えないように演じてもらっています。多少、音が被ったとしても構いません。僕自身、作風としてリアルな会話が好きなので。
CGW:音の面からいうと、本作は日本のTVシリーズには珍しいフィルムスコアリング(※)で音を付けられているそうですね。
※:フィルムスコアリング
映像作品の劇伴音楽において、あらかじめ制作した曲をシーンに当てはめるのではなく、各シーンの尺や見せ方に併せて作曲する手法のこと。ハリウッド映画の劇伴制作によく用いられる
中尾:いつも僕の作品でお願いしている戸田(信子)さんに、この作品でも音楽を担当してもらっています。フィルムスコアリングをすることで、アクションのドキドキやキャラクターのエモーションが直感的に伝わります。贅沢に使っていますので、堪能してもらいたいですね。
<後編に続く>
後編は7月6日(金)公開予定です。