>   >  セミナーやパッケージ販売を通じて認知度を上げていきたい〜マーザ・アニメーションプラネットがいち早く実践する「ストーリーボード」による映像制作とは(後編)
セミナーやパッケージ販売を通じて認知度を上げていきたい〜マーザ・アニメーションプラネットがいち早く実践する「ストーリーボード」による映像制作とは(後編)

セミナーやパッケージ販売を通じて認知度を上げていきたい〜マーザ・アニメーションプラネットがいち早く実践する「ストーリーボード」による映像制作とは(後編)

<3>「MARZAデベロップメントシステム」をパッケージング

CGW:6月にはストーリーボードゼミを開催されたそうですが、どんな方がいらっしゃいましたか?

木下:キャリアも年齢も様々で、学生もいればベテランのアニメーターや普通の会社にお勤めの方もいらっしゃいましたね。CG関連の仕事をしている人も結構多かったですね。

ストーリーボードゼミの様子

栗田:終わった後のポートフォリオレビューも良かったですね。あれだけでも2~3時間できるレベルでした。皆さん持ってくるものも良いんですよ。もちろん、それぞれが学び始めたばかりということもありますが、それをテーマにあれこれ言える。

木下:良いところ突いてるんだけどなー、って言いたくなる(笑)。

CGW:それで思い出したのですが、最初にスクリーニングをしたときに「ボロクソに言われる」とありましたが、修正することになった場合、アーティストの方はそれに対して落ち込んだりしないんですか?

栗田:ヘコんでいる暇はない、というのが実際だと思います。でもそこで落ち込むのって、その絵に対するクリティーク(講評)を、「自分に対する批判」として受け取っているからだと思うんですよね。僕らは単純に作品を良くするための「提案」として描いているわけです。そのフォーカスが作品全体に向かっていると考えるのか、自分の描いたものとして捉えてしまうかのちがいだと思います。

CGW:それを上手く伝えていけば、まだ講評に慣れていない学生さんでもストーリーアーティストを目指しやすくなるのかなと思います。

沓名:日本の場合、監督の主導で作品がつくられるので個性的な作品が生まれやすく、その結果として世界で受けているというケースがあります。でもそれは少数。こちらのやり方のほうが一般的に面白いものをつくれる可能性の高いしくみになっていると思います。

栗田:誰にとっても力を出しやすいというか、ある意味でこの方法が簡単なんですよね。

木下:ストーリーボードゼミに来た人でも、それまでスクリーンディレクションを知っている人はほとんどいなかったんです。逆に言えば、その知識をみんなが得ればそれだけ全体のクオリティが上がるわけです。

CGW:今後こうしたセミナーを積極的に行なっていかれる予定は?

高橋:「第2回もぜひ」と言われているので検討しております。

栗田:絶対やったほうが良いですよ! 隠すような内容ではないので。

CGW:クリエイターだけではなく、視聴者であっても作品を観るときの意識が変わると思うんですよね。

木下:そうですね。オーディエンスの目が肥えると、クリエイターの方もレベルを上げていくことになる。そうすることで一歩一歩上がっていく気がするんですよね。だからまずはみんなが知っていくことが大事。

栗田:そして日本でストーリーアーティストという職業が増えることで新たなアプローチの良い映画が日本でたくさんつくれるみたいな?

沓名:やっぱり日本の絵コンテのままだとアメリカにもっていけないんですよね。ストーリーボードとリールにすることで世界を対象としたビジネスができる。

高橋:世界と同じ土俵でクオリティを競い合うことができますね。

木下:単純に、企画開発にお金と時間をかけることで、作品の質が上がるということをもっと知っていただきたいなという思いがあります。クリエイターとしてはデベロップメントというところにもっと価値を感じてほしいですね。

高橋:デベロップメント期間中に試行錯誤をくり返すほど、不確定な要素が減って、後の行程は楽になるんです。現状、スクリーニングが3回というのも予算の問題であって、回数を増やせるのであればそれに越したことはないですし、そうあってほしいと思います。ストーリーボードを活用したワークフローは日本のCGアニメーションのクオリティの底上げに貢献できると思っています。

アニメーション業界を目指している人たちにも、こういう仕事があること自体まだ知られていないと思います。我々のワークフローを活用してつくられた作品が成功することで、ストーリーボードの活用が広まり、意欲ある方が業界を目指してくれれば嬉しいですね。

当社ではこうしたデベロップメントのプロセスを、パッケージングしています。スクリーニングの結果を反映したストーリーリールの制作から、最終的なプロダクションまでMARZAが担うケースもあり、すでに何社かのクライアントさんと進めています。

高橋:出来上がったストーリーリールを観せると、クライアントさんも安心するんです。ストーリーリールという設計図ができているので「あとは各ショットが美麗なCGに置き換わるだけなんだな」と想像しやすいんです。当社としても社内活用だけではなく、様々な会社さんと協力してストーリーボードの普及を進めていきたいと思っています。

Profileプロフィール

MARZA デべロップメントチーム

MARZA デべロップメントチーム

前列左から 栗田 唯氏(ストーリーアーティスト)、沓名健一氏(ストーリーアーティスト)、後列左から 木下宏幸氏(ストーリーアーティスト)、高橋友和氏(エディター)

スペシャルインタビュー