>   >  節目節目で自分の才能に見切りをつけてきました。だから、今でもコンテンツ制作を続けています。(富岡 聡)シリーズ企画「20人に聞く」<5>
節目節目で自分の才能に見切りをつけてきました。だから、今でもコンテンツ制作を続けています。(富岡 聡)シリーズ企画「20人に聞く」<5>

節目節目で自分の才能に見切りをつけてきました。だから、今でもコンテンツ制作を続けています。(富岡 聡)シリーズ企画「20人に聞く」<5>

<2>失敗は良い機会だと思えるようになったのは、最近のこと

CGW:これまでの取り組みを拝見していると、マネジメントや人材育成など、優れたビジネス感覚をお持ちだなと思っています。そうした感覚は自然と身につけられたのでしょうか?

富岡:いいえ。失敗をくり返して、痛い目に遭いながら改善に取り組んでいます。CGで何かをつくることが楽しかったことが原点になりますが、節目節目で自分ができないと思ったことは切り捨てるようにしています。

CGW:それはどういうことでしょうか?

富岡:キャリアをスタートさせた当初は、アート(作家性)に重きを置いていたのですが、2003年から宮崎あぐりが制作に参加してくれるようになったのを機に、アート面は彼女にまかせて私は演出面に力を注ぐようになりました。ですが、やがて演出面でも自分の限界を感じはじめたので学校に通ってシナリオを学び始めました。でも、現在はそれにも限界を感じており、マーケットから逆算して企画をつくることを意識しています。当たり前すぎることなんですが、当たり前のことに向き合うまで時間がかかりすぎました。

CGW:限界を敏感に感じるうちに、自然とビジネスの感覚を身につけられたと。

富岡:自然にではないですね。失敗を何度も重ねて色んな人たちに迷惑をかけてしまって、その度に問題と向き合ってもっとちゃんとしなければ......という一心でした。宮崎や太田(洋康CGディレクター)たち、創業間もない頃から一緒にがんばってくれているスタッフがいるのだから無責任に放り出すわけにはいかない。意地でもプロダクションを続けようと。ビジネスの感覚なんてなくて読んだ本や助けてくれた人たちに教えてもらった通りにやっているだけです。

CGW:失敗をして落ち込んだときはどうやってモチベーションを回復させてきたんですか?

富岡:助けてくれる人がいたり、自分で本を読んで学び直したり、その都度なんとかしようと。問題に向き合えなくて、1年くらい前向きな気持ちになれなかったことだってあります。経営者なので自分ではじめたことなので、原因は全部自分なのです。今は全てに首を突っ込んで、全ての責任をもって取り組むようにしています。ピンチになっても良い機会だという気持ちで取り組めるようになったのはここ数年のことです。

CGW:近年は「オリジナルコンテンツ」、「企業用プロモーションキャラクター」、「ゲーム・アプリ」、「プロダクション」という4つの事業に注力されているとのことですが、そのねらいを教えてください。

富岡:各事業で得られる異なった知識や経験をスタジオ内で共有して、化学変化を起こさせようという目的があります。プロダクション事業では、オリジナル作品で培ってきた表現手法をクライアントワークに応用するのが出発点で、カナバンらしい絵本的なルックだけではなく、人形劇のようにフォトリアルな表現の研究開発にも取り組んでいます。また、レンダリングという工程にはキャリアをスタートさせた当初から疑問と限界を感じているので、ゲーム・アプリ事業を通じてリアルタイムCGにも精力的に取り組むことで、その知見を映像制作にも活用することを模索しています。

オリジナルコンテンツ事業
『イナズマリバリー』シーズン1 トレーラー

CGW:今後のビジネス面の目標は?

富岡:世の中はどんどん変わっていきます。今の時代は「サブスクリプション型」のサービスが主流になり、モノが売れなくなってきています。アニメーション作品についても、収益を上げられる仕組みが10年前とまったくちがうものになりました。当社の強みである「クリエイティブ」をビジネスに上手く組み合わせて、これからも軌道修正を重ねながら新しい挑戦を続けていきたいです。

CGW:富岡さんは確かな作家性をおもちであると同時に、その時代や共につくるスタッフたちにも委ねるところは委ねる的なバランス感覚もおもちだなと思っているのですが、意識されていることはありますか?

富岡:いや、もう本当にいろんな失敗を経験しているので(笑)。スムーズにやってきたわけでもないし自分が優れているわけでもないし、笑えないくらいあり得ない失敗をしているんです。そんなときに、宮崎や太田がいてくれたので、だからこそ自分に見切りをつけることができたんですよね。

企業用プロモーションキャラクター事業
『けんさくとえんじんのクリスマス』


CGW:カナバングラフィックスとしてではなく、富岡さん個人としてこれから挑戦してみたいことはありますか?

富岡:来年が『SiNK』誕生20周年の節目ということでリメイクに取り組みたいですね。まずは、潜水夫の3DCGモデルをMayaで作り直して3Dプリントから立体造形に仕上げてみるとか、もう一度「個人制作」に取り組んでみたい。まあ、当分は仕事が忙しくて時間をつくれそうにないのですが......あ、でもサバゲーをやめればできるかも(笑)

ゲーム・アプリ事業
『LINE ぷるぽん』オープニングムービー


info.

『イナズマデリバリー』
YouTubeにてシーズン1&2、全話無料公開中!

監督・脚本:富岡 聡
キャラクターデザイン・アートディレクション:宮崎あぐり
ビジュアルデザイン:関 厚人
モデリングリード:古部満敬
リギング:宮田眞規
アニメーションリード:阿部圭造
コンポジットリード:太田洋康
アニメーション制作:カナバングラフィックス
製作:イナズマデリバリー製作委員会

© INAZUMA Project


Profileプロフィール

富岡 聡/Satoshi Tomioka

富岡 聡/Satoshi Tomioka

www.kanaban.com
1972年生まれ、三重県出身。1999年に個人制作による初のオリジナルアニメーション『SiNK』を発表。2004年に有限会社カナバングラフィックスを設立、ゲームムービー、ショートフィルム、コマーシャルフィルム、映画など様々なジャンルのCGアニメーションを手がけている。

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