>   >  プリレンダーCGにリアルタイムCGを組み合わせ、新たな価値を提示したい~鈴木卓矢氏が参加する新スタジオSAFEHOUSEが目指す映像制作とは
プリレンダーCGにリアルタイムCGを組み合わせ、新たな価値を提示したい~鈴木卓矢氏が参加する新スタジオSAFEHOUSEが目指す映像制作とは

プリレンダーCGにリアルタイムCGを組み合わせ、新たな価値を提示したい~鈴木卓矢氏が参加する新スタジオSAFEHOUSEが目指す映像制作とは

<2>インターネットのチャットで繋がった縁

CGW:ここで話を変えて、エラスマスさんの経歴についてもお聞きできますか。

エラスマス・ブロスダウ氏(以下、エラスマス):私はドイツ出身で、学校を卒業後3D factoryという映像系のCGスタジオに入りました。そこからゲームエンジンで知られるCrytekに入社し、ジュニアからシニアへと進んでいきました。その後Cloud Imperium Gamesに移籍し、クラウドファウンディングで約63億円の資金調達に成功したオンラインゲーム『Star Citizen』の開発に参加。その後半導体メーカーのAMDで、クリエイティブリード&アートディレクターとして働き、今に至ります。


  • エラスマス・ブロスダウ/Erasmus Brosdau
    株式会社SAFEHOUSE
    専属アーティスト

    Crytekのアートディレクターとして世界初のVRベンチマークとなる『Skyharbor』のディレクターを務める。フリーに転身後、UE4を使用したリアルタイムレンダリングの先駆者として、オリジナルのシネマティック映像を製作。ハイスピードでハイクオリティな映像制作を実現する、その手法に世界中のCGアニメーション業界が注目している

CGW:鈴木さんと由良さんはBlizzardつながりですよね。エラスマスさんと由良さんは、どういうお知り合いなんですか?

由良:実はチャット友だちだったんですよ。もともと僕はミニチュアゲーム『ウォーハンマー』や、そこからスピンアウトした作品群が好きで。エラスマスも『ウォーハンマー』のファンなんですよね。『The Lord Inquisitor』は、『ウォーハンマー』のファンムービーとしてつくられたものです。それに加えて日本のアニメやゲームのファンでもあるので、あるときネットで「僕、日本でゲームをつくっているんだよ。アニメの音楽とかもやっていて」と話したら、「すごいな」と言ってもらえて、そこからすぐにチャット友だちになりました。

CGW:今風ですね。

由良:彼が好きなクリエイターは大体僕が以前にお仕事をご一緒させていただいた方か、知り合いや友人だったので、彼もテンションがすごく上がっちゃって。来日するたびに「誰それにサインをお願いしたい」と、グッズをたくさんもってくるんです。恥ずかしいからやめてくれって言っているんですが(笑)。

CGW:目に浮かぶようです。

由良:先日もドイツを出国する前に「ゲーム『ゼノサーガ』の20周年記念のサウンドトラックが出たはずだけど、あれは録音し直したものだよね?」と質問されて。それを買ってもっていくから、サインをもらえないかと(笑)。

CGW:エラスマスさんは、どんな日本の作品がお好きなんですか?

エラスマス:ゲームでは『メタルギアソリッド』『サイレントヒル』シリーズ、アニメでは『新世紀エヴァンゲリオン』などですね。他に映画監督は北野 武さん、音楽は久石 譲さん、山岡 晃さん、アイドルはきゃりーぱみゅぱみゅが好きです。

由良:それにエラスマスはCGだけじゃなくて、作曲もできるんですよ。ギターもピアノもドラムもできて、コンセプトアートもできる。『The Lord Inquisitor』も、そうした彼のマルチな才能があってこその作品になっています。


CGW:それはすごいですね。

由良:実際、『ウォーハンマー』のファンムービーはいくつかあるんですが、明らかにクオリティが段ちがいなんですよ。というのも、『ウォーハンマー』はミニチュアゲームだから、ファンムービーもキャラクターが動かないのが普通なんです。でも、『The Lord Inquisitor』は普通のCG映画と見分けがつかない(笑)。

鈴木:僕も由良さんに初めてこの映像を見せられたとき、ビックリしたんですよね。クオリティもさることながら、リアルタイムレンダリングで、しかも1人でつくっているという。これを見て、もうプリレンダーの時代は近い将来終わるのではないかと確信しました。

CGW:改めてビックリです。

由良:ただ、SAFEHOUSEとしてエラスマスと一緒に仕事ができるのは、やっぱり鈴木さんの力があったからこそなんですよ。鈴木さんがいなければ、友人から先に進まなかっただろうなあと思っています。

CGW:具体的に仕事でのコラボレーションをイメージし始めたのはいつからですか?

由良:最初は趣味の話が多かったんですが、彼としても日本の作品に関わりたいという思いが強かったんですよね。これだけ日本の作品が好きなのに、日本のアーティストと交流する機会がないという彼の状況を考えると、次第にその願いを叶えたくなってきて、「講演するなら日本に来て、アーティストと交流をもつことができるよ」という、本当に軽い気持ちから誘ったのが始まりです。そこからだんだんと話が広がり、エラスマスも喜ぶし、じゃあ自分ももう少しがんばろうかと。

CGW:エラスマスさんはSAFEHOUSEの話が出たとき、どのように感じられましたか?

エラスマス:とても面白いと思いました。みんなで力を合わせて必要な人にサービスを提供するというのは、とても論理的ですし、歴史的に見てドイツ人と日本人が協力するのも、これが初めてではありませんし。

由良:そうそう、自動車業界とかね(笑)。

CGW:エラスマスさんは一昨年の講演以前に日本に来られたことは?

エラスマス:講演のときが初めてでした。日本のゲームやアニメのグッズはたくさんもっているのですが......。

由良:前回の来日では、『エヴァ』のファンだからということで、スタジオカラーさんにエラスマスを紹介しに行ったんですよ。そのときにいろんなグッズをもってきて、サインをお願いしていて。中にはドイツでは手に入らないからと秋葉原で買ってきたものもあって。「庵野監督のサインも欲しいです」「庵野は今日は不在なんですよ」「じゃあ、後で書いて送ってください」みたいなやりとりも(笑)。

CGW:庵野監督はサインを送ってくれましたか?

エラスマス:はい、後日送っていただけました。

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<3>クリエイターが成長できる環境をつくる

Profileプロフィール

SAFEHOUSE, Inc.

SAFEHOUSE, Inc.

写真左から 鈴木卓矢氏(取締役/モデリング・スーパーバイザー)、Erasmus Brosdau/エラスマス・ブロスダウ氏(専属アーティスト)、由良浩明氏(代表取締役社長/プロデューサー)
safehouse.co.jp

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