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キャラクターアニメーションこそインゲームの主役! 『Last Labyrinth』開発陣に聞くアニメーターとリガーの魅力とは

キャラクターアニメーションこそインゲームの主役! 『Last Labyrinth』開発陣に聞くアニメーターとリガーの魅力とは

大学と企業、それぞれでモーション制作を学ぶ

CGW:ちょっと話が飛びますが、来日して、ご縁があって、あまたに入社して、実際にゲームのモーションをつくるようになって、学生時代に学んだこととのギャップについて感じたことはありますか?

ブロードヘッド:私は書籍『ディズニーアニメーション 生命を吹き込む 魔法 ― The Illusion of Life ―』で紹介されている「アニメーション12の原則」がすごく好きで、その中でも「予備動作」が好きなんですね。ただ、ゲームだと予備操作に凝りすぎると、レスポンスが悪くなってしまい、自分が操作している感が減ってしまうんです。そこはギャップを感じたところです。

CGW:確かに、打てば響くような反応が求められるアクションゲームでは、予備動作にも工夫が必要ですよね。

ブロードヘッド:完全になくすと、また不自然になってしまいます。上手くバランスを取りつつ、ですね。

CGW:福山さんは逆に入社してから、業務を通してキャラクターアニメーションについて学ばれたんでしょうか?

福山:ちょうどユークスで働きはじめた前後に、アーケードで『バーチャファイター』(1993)が登場したんです。ゲームセンターで初めて見たときは衝撃的でした。キャラクターが物理法則で動く感じがすごく格好良かったです。バトルの勝敗がつくと、勝った側が勝利ポーズをとって、カメラがぐわっと回ったりして......そうした演出にも驚きました。

CGW:まだポリポリなグラフィックでしたね。

福山:でも、それがまた格好良くて。にもかかわらず、ユークスでは横スクロールのアクションゲームで背景のドッターをすることになりました。あれ、3Dじゃないんだって思いつつドットを打つ日々が続きましたが、全然ダメダメでした。コツがまったくつかめなかったんです。一方で社内には、後に大ヒットしてシリーズ化される『闘魂烈伝』のプロトタイプを1人でつくられている方がいました。PlayStation 1向けの3Dプロレスゲームで、ことあるごとに社内で「あれをやりたいな~やりたいな~」というオーラを出していました。そうしたら、そのうちキャラクターアニメーションをやらせてもらえるようになりました。

CGW:当時はどんなツールを使っていましたか?

福山:Windowsではなくて、MS-DOS上で動かすツールでした。もう名前は覚えていません。まだグラフエディタのような機能がなくて、モデルのポーズをコマアニメーションみたいなかたちでちまちまつくっていって、再生して確かめるみたいな感じでした。

高橋3ds Maxの前身だった3D Studio DOSかもしれないですね。当時、MS-DOS上で動くまともな3DCGツールって、それくらいしかなかったので。

CGW:ブロードヘッドさんは、今ではTAとしてリグをバリバリと組んでいますが、学生時代もリギングの授業はありましたか?

ブロードヘッド:いえ、学生時代はアニメーション専門で、それ以外のことはまったくできませんでした。モデリングもダメダメで、先生から「あんたはアニメーターだね」と半分あきれながら言われたくらいでした。リグに興味はありましたが、学生の頃はつくる機会がありませんでしたね。いつかちゃんとつくれるようになりたくて。あまたに入社したら機会があり、つくるようになりました。

CGW:学生時代にMotionBuilderは触っていましたか?

ブロードヘッド:少し触りましたが、ほとんど手付けでした。映像系の学校だったので、キーフレームで動きがつけられることが重視されていました。

CGW:リグを触るようになったきっかけは何でしたか?

ブロードヘッド:入社して最初に携わったプロジェクトが、スマートフォン向けの3Dアクションゲームでした。そこでモーションを担当しましたが、学校で触っていたリグよりシンプルなものしかありませんでした。今から考えれば、学校では学生のために、Mayaですごく使いやすいリグが用意されていたんですね。そのため、入社してから「なぜ、この機能がないの?」とよく周りに言っていました。うるさい新人でしたね。そのうち「だったら、お前がやれ」と言われるようになって。「え、やっていいの? やるぜ!」って。

CGW:なるほど。

ブロードヘッド:自分の性分で、人がイライラしているのを見るのが嫌なんです。あと、調べものが好きなところもあります。みんな使いにくいツールを使って、悲しい顔をしているのを見るのが嫌で。それを何とかしてあげたいから調べて。調べて、解決法がわかると、それを教えてあげて。そうしたら、相手が喜んでくれて。その顔を見るのが、自分のモチベーションにつながって。このサイクルがくり返されるうちに、ある日いきなりTAになりました。

CGW:ということは、コンソールのハイエンドゲーム開発は今回が初めてだったんですね。

ブロードヘッド:そうですね。できることがたくさんあって、すごく楽しかったです。

CGW:逆に福山さんはコンソールの開発経験が豊富ですよね。

福山:年数は長いですが、タイトル数は人より少ないかもしれないですね。ユークスでは『闘魂烈伝』シリーズや、他のゲームもやりましたが、そこからソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント、SIE)に移ってからは、『ICO』、『ワンダと巨像』だけでしたから。1タイトルあたりの開発年数が長くて。

CGW:そうした中、『Last Labyrinth』は久しぶりのコンソールゲームになりました。

福山:そうですね。久々に思いきりやらせてもらえました。SIEからあまたに移ってからは、ずっとモバイルで受託タイトルを開発していました。それまでとちがい、複数のキャラクターを1人で担当して、それぞれで動きのバリエーションをつけたり、デフォルメキャラクターのモーションをつけたりするのは新鮮でした。今まであまりデフォルメのキャラクターを担当する機会がなかったんですよ。短い時間で数をこなすことで、自分の引き出しがすごく広がりました。

CGW:今回はそれから一周回って、キャラクターが1人だけで、モーションの数が非常に多いタイトルになりましたね。

福山:1人のキャラをじっくりつくり上げるのは、本当に久しぶりの経験でした。先ほどもいったとおり、モバイルゲームの開発は勉強にもなるんですが、どこか消化不良なところもありました。もっとも『ICO』、『ワンダと巨像』が終わったときは、もうしばらく大きなタイトルは良いかなと思っていたのも事実です。そこからしばらく経って、またじっくりつくりたいって気持ちが出てきたんです。そんなときにこのタイトルをつくらせてもらえて、良かったです。

手付けとモーションキャプチャ、それぞれの利点

CGW:ところで、講演中に簡易モーションキャプチャを導入されたという説明がありましたが、どのようなシステムでしたか?

高橋:IKINEMA Orionです。

ブロードヘッド:いろんなシステムを試しましたが、私たちの体制に一番適していたのがOrionでした。すでに弊社にHTC Viveがあったこと。会議室で、誰でも手軽にモーションキャプチャができること。そして一番重要なことが、キャラクターの移動距離をきちんと収録してくれることでした。もっとも収録データをそのまま使用することは少なくて、多くを手で修正しました。下半身の動きはある程度使用し、上半身は手付けで修正するなどです。手付けとモーションキャプチャでは動きの雰囲気がちがいますから、こうした修正は必須でした。

CGW:キャラクターのアニメーション制作には、まず手付けでつくっていって、不足分をモーションキャプチャで補うやり方もあれば、最初からモーションキャプチャでざくっと動きをとってから、手で修正していくやり方もあると思います。『Last Labyrinth』ではどちらが適していましたか?

ブロードヘッド:もともと福山がつくるキャラクターアニメーションを活かしたゲームにしたいというのが高橋の要望でもあったので、前者でした。

福山:実はこれまで、個人的にインゲームのキャラクターアニメーションをモーションキャプチャでつくった経験がなかったんです。『ICO』、『ワンダと巨像』もカットシーンの演出も含めて、手付けでした。そのため収録ノウハウがあまりないということもありましたね。

ただ、今回は時間的な問題が大きかったですし、尺の長いアニメーションが比較的多かった。そのため複数のアニメーターでアニメーション制作を分担する際、イメージを共有する上でモーションキャプチャのデータが役に立ちました。ざっくりとしたながれをモーションキャプチャでつくってから、それをベースに上半身だけ修正していった、などは好例です。

CGW:面白いですね。

福山:もっとも、自分の中でキャラクターの動きがしっかり見えているときは、手付けでもモーションキャプチャでも、でき上がりにそれほど差が出ないんです。そのため、そうした動きについては、モーションキャプチャで収録した方が楽でした。その一方で、漠然としたイメージだけがあって、実際に手でつくりながら、だんだんキャラクターの演技の幅が広がっていくこともあります。そういった動きはモーションキャプチャではつくれないですね。

CGW:福山さんは講演内で「動きで重さを感じさせること」を重視していると話されていましたが、そんなふうに感じられるようになったきっかけはありますか?

福山:『ICO』、『ワンダと巨像』の制作時に上田さんから受けた指摘がベースになっていると思います。たくさんダメ出しをもらいました。特に『ワンダと巨像』では大きな巨像が動くということで、動きによる重さの表現を重要視していました。最初はなかなか私も上手くできなくて、修正が続きました。でも修正されると、全然ちがうものになるんです。そうした工程で鍛えられたというか。今でも自分でできているかどうかわからないですけど、物体が動くということに気を付けるようにしています。

CGW:カティアの動きを見ながら、宮崎アニメを見ているような感覚になりました。コナンやラナが動いている感じでした。

福山:すごく嬉しいです。でも、まだまだそこまで到達していないです。動きの気持ち良さが足りていないです。あれに気持ち良さがプラスできたら、私はもう一段上に上がれると思います。

CGW:気持ち良さってどういうことなんでしょう?

福山:何かダイナミックさみたいなのが、ちょっと足りないんです。もし、また機会があれば、絶対そこを実現できるようにがんばります。男の子でなくても、女の子のキャラクターでもダイナミックさは表現できますから。

CGW:続いて「short Locomotion」の話について伺いたいんですが、エンジニアとのやりとりはどのような感じで進みましたか?

高橋:3Dアニメーターの側から、ああしてほしい、こうしてほしいという要望がありますよね。これを福山が考えて、エンジニアチームとブレインストーミングしました。その上で、そこでまとまった内容を福山が仕様にまとめて、エンジニアチームに渡しました。それを基にエンジニアが実装し、それを受けてアニメーションチームが最終調整を行うというながれで進みました。

ブロードヘッド:テストしてフィードバックしてというループを、ずーっと続けていました。本当に細かく細かく。

福山:アニメーションの素材はMayaのブレンドツリーを使って制作し、キャラクターの移動はUnityのナビメッシュで生成しました。エンジニアにもいろいろとカスタマイズしてもらったんですが、なかなか上手くいきませんでした。そこでエンジニアチームと私とで、どういう解決法があるかそれぞれ考えて、持ち寄った感じです。

CGW:何か抜本的な方法を考える必要に迫られたんですね。

福山:そうですね。そのため、short Locomotionに至るまでが長かったですね。short Locomotionはあくまで解決のための手段なので。ただ、考え方はすごく原始的です。モーションはそのままで、移動と回転をプログラムで制御しています。その上で、各モーションの秒数を指定して、Unity上で受け渡せるようにしています。

CGW:頭の中が3D CADという感じですね。

福山:今までの経験だと思います。こちらで考えた条件を見せたら、リードエンジニアとキャラクターのプログラム担当が「これ、いけるんじゃないですか」と言ってくれたので、実装に至りました。エンジニアさんがこれを見ただけで、すぐ理解していただいたのが、すごいと思います。

福山氏が作成し、エンジニアに示した「short Locomotion」の仕様メモ

CGW:そこは話が逆で、エンジニアが理解できるように言語化できるところがすごいのではないでしょうか?

福山:これに限らず、自分がキャラクターにさせたい動きのイメージを、エンジニアにどう伝えられるかが、アニメーターにはすごく重要だと思います。上田さんがこうした言語化がすごく得意だったんですね。その影響を受けています。

CGW:福山さんも上田さんも、どちらかというと天才肌で、数字が嫌いなイメージがありましたが、ちがうんですね。

福山:上田さんはわからないですけど、私は数字は嫌いです(笑)。でも、これは数字じゃない状態で頭に入っているという感じです。頭の中で、絵として動いているというか。

CGW:キャラクターの動きが数値で示せるわけですね。手描きのアニメーターも、人間ストップウォッチみたいなところがあります。

福山:そうかもしれませんね。この動きは何フレームくらいとか、だいたいイメージがあって。あくまで、だいたいですけど。

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Profileプロフィール

あまた株式会社

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右から、高橋宏典氏(代表取締役社長)、福山敦子氏(3Dアニメーター)、アレクシス・ジャスミン・ブロードヘッド氏(3Dアニメーター兼TA)
amata.co.jp

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