>   >  "文化の森"をつくるために~「広島国際アニメーションフェスティバル」36年の足跡と2020年(第18回)コンペ作品の見どころ
"文化の森"をつくるために~「広島国際アニメーションフェスティバル」36年の足跡と2020年(第18回)コンペ作品の見どころ

"文化の森"をつくるために~「広島国際アニメーションフェスティバル」36年の足跡と2020年(第18回)コンペ作品の見どころ

<2>広島が国際アニメーションフェスティバルの最高峰になれた理由、そして今後の展望とは

先のような広島国際アニメーションフェスティバルへの信頼感はどのように醸成されていったのか。それは運営側と観客たちによる「おもてなし」にあった。

木下氏は自身がアニメーション作家でもあるため、アーティストがどんな思いで作品をつくり、喜びを得るかが想像できるという。

「アーティストって、つくっているときは基本的にひとりですから、みてくれる方を直接みることが嬉しいんです。さらに作品をしっかりみてもらえた上に、ほしいタイミングで拍手を貰いスポットライトまで浴びると、またここに戻ってこようという気持ちになりますよね。私は観客に、アーティストに会ったときには、『I like your work.』とか『I love your work.』とか、たったそれだけを伝えるだけで、彼らは絶対に忘れないと言うんです。そしてそれを実際に行動に移してくれるのが広島のお客さんなんです」と話す。

木下氏は、こんなエピソードも教えてくれた。

「あるアニメーション作家の方が私のところに来て、こんなに素晴らしい上映をしてもらったのは初めて。どんな機械を使っているんだい?、と言うんです。そのときに私は言ってやったんです。機械は変わらないわよ。それよりどうしてうちのスタッフを褒めてくれないの、って」。

言われた作家が映写スタッフに会いに行くと、「僕らが映写を失敗したら映画を観客に届けられない。だからクレジットに載っていない最後のスタッフのつもりで映写作業を行なっている」という言葉を返され、そのことにさらに感動したという。こうした経験をした作家が、後に教え子を広島に連れて来たり、作品を出品させるという循環が生まれ、広島には多くの優秀な作品が集まり続けていった。

「映写スタッフだけでなく、受付だって同じように仕事をしています。本当にみんなプライドをもって運営しているんです」と、木下氏は目を細める。運営スタッフはその都度集まるが、過去に携わったスタッフがボランティアで手伝いに来て、指導することが繰り返されているため、熟練した層の厚い運営が可能となっていた。また、ワークショップや観客の案内などを通じて広島の子どもたちに生きた英語のコミュニケーションの場を提供するという副次的な効果も生まれたという。

こうした取り組みが行われてきた広島国際アニメーションフェスティバルだが、2022年開催予定の新たな総合文化芸術イベントは、ASIFA公認の条件を満たす見通しは立っていないため、木下氏らは従来のコンペティションに送ってきた作家に対してどのように広報をするか、検討を行なっている最中だという。「みんな広島を目標としているのでなるべく早くしないと。小さなものでも映画祭を実施したいと思っている方がいれば、ぜひASIFA日本支部まで連絡していただければと思います」と木下氏は語った。

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<3>「悪口を言わない」7日間かけて行われるコンペ会議の舞台裏

Profileプロフィール

木下小夜子/Sayoko Kinoshita

木下小夜子/Sayoko Kinoshita

広島国際アニメーションフェスティバル フェスティバル・ディレクター。国際アニメーションフィルム映画協会(ASIFA)会長

伊藤有壱/Yuichi Ito

伊藤有壱/Yuichi Ito

第18回広島国際アニメーションフェスティバル コンベティション部門 国際審査委員長

スペシャルインタビュー