>   >  "文化の森"をつくるために~「広島国際アニメーションフェスティバル」36年の足跡と2020年(第18回)コンペ作品の見どころ
"文化の森"をつくるために~「広島国際アニメーションフェスティバル」36年の足跡と2020年(第18回)コンペ作品の見どころ

"文化の森"をつくるために~「広島国際アニメーションフェスティバル」36年の足跡と2020年(第18回)コンペ作品の見どころ

世界4大アニメーション映画祭のひとつである広島国際アニメーションフェスティバル。2019年秋、主催団体のうちのひとつである広島市側は、第1回(1985年)開催からフェスティバルディレクターを務める木下小夜子氏に、国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)のもとでの運営を終え、別のイベントにかたちを変えるという通知を行なった。同イベントは36年間、ASIFAによる人・企画・運営のソフト面のサポートと、広島市によるハード面のサポートにより世界に誇るイベントとして開催され続けてきた。その足跡と今後の展望を木下氏に聞くと共に、オンラインで行われた第18回開催のコンペティションの様子を国際審査委員長の伊藤有壱氏に聞いた。

TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_江連良介 / Ryosuke Edure、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

<1>『広島のおかげで今の自分がある』広島国際アニメーションフェスティバルの歴史と生み出した作品たち

「広島を本当の国際平和文化都市にする」----それが1985年、第1回広島国際アニメーションフェスティバルを開催するにあたって、フェスティバルディレクター(総監督)を務める木下小夜子氏と当時の広島市長・荒木 武氏とが共に抱いていた願いだった。

広島国際アニメーションフェスティバルは、2年に一度、広島市で8月に開催される、国際アニメーションフィルム協会(Association Internationale du Film d' Animation - ASIFA)公認の映画祭。アヌシー国際アニメーション映画祭ザグレブ国際アニメーション映画祭オタワ国際アニメーション映画祭と共に、世界4大アニメーションフェスティバルの1つとして知られる、米国アカデミー賞公認およびASIFAハリウッドのアニー賞公認の映画祭だ。

  • HIROSHIMA 2020 公式ポスター
    アートワーク:辻 直之


木下氏は1972年のニューヨーク国際映画祭で、夫の木下蓮三氏と制作したアニメーション『MADE IN JAPAN』でグランプリを受賞。当時は日本におけるアニメーションの認知がまだ進んでおらず、「つくるだけではなく広めること」をミッションに様々な場所に働きかけ、『ピカドン』(1978)をきっかけに広島からアニメーションフェスティバルの発信を始めた。

  • 木下小夜子/Sayoko Kinoshita
    アニメーション作家/プロデューサー
    広島国際アニメーションフェスティバル フェスティバル・ディレクター
    国際アニメーションフィルム協会 (ASIFA) 会長
    株式会社スタジオロータス 代表取締役
    国際アニメーションライブラリー (IAL)主宰

    東京生まれ。女子美術短期大学造形学科卒業。虫プロダクションを経て、1969年、(株)スタジオロータス入社。以来、国際的に、アニメーション・メディアを基軸とした制作・開発・教育・振興等、幅広い事業・活動を展開し、その仕事はアニメーションのみならず、ドキュメンタリーやフィクション等、実写を含む映像分野全般に及ぶ。


それから36年間、木下氏は「文化の森をつくるため、自分は礎となる」という思いを原動力に、これまで運営を行なってきた。東京や大阪などの大都市を経由するのではなく、広島から直接世界に届けていく映画祭。これまでも同映画祭は、ジョン・ラセターの『ルクソーJr.』を発表翌年(第2回/1987)に上映したり、ニック・パークの『リップ・シンクロ"動物たちの理想"』(『快適な生活〜ぼくらはみんないきている〜』)、発表翌年(第3回/1990)に、アカデミー賞に先んじて国際審査委員特別賞を贈るなど、いち早く世界の優秀なアニメーションの上映・顕賞を行なってきた。世界のアニメーション制作者や視聴者からも信頼が厚く、毎回トップシーンの作家や教育者が集まり、ワークショップやティーチインなどを通じて彼らと直接触れ合えるアニメーション映画祭として育てられてきた。

しかし、昨秋になり主催団体のうちのひとつである広島市側から、「資金面における課題が大きくなってきた」ことを背景に、木下氏が会長を務めるASIFA(公認)およびASIFA-JAPAN(共催)は、第18回を最後に運営から離れることになった。次回(2022年)開催からはASIFAが運営に関与しない「総合文化芸術イベント」のかたちで行われるという。

さらに、第18回(2020年)はコロナ渦によって、上映やイベントを含めた当地での開催は全て中止となってしまったため、コンペティション部門を4人の国際審査委員がオンラインで審査を行ない、受賞作を発表するという異例の事態となった。受賞作品の上映会は検討中だが、現時点では未定だという。応募は今回も84の国と地域から2,339もの作品があり、同イベントに対する世界のアニメーション制作者からの信頼は揺るぎない。諸々について、木下氏は悔しさをにじませる。

「広島のおかげで今の自分がある、と言ってくださる作家の方が大勢いらっしゃいました。言われてみると、これが自分の使命だったのかなと。私としては、自分がいなくなっても文化の森がありつづけるという遠い目標のため、自分はただ礎をつくるという責任感のもとに続けてきました。やがて大きな文化の森ができたときには、最初の一本の木がわからなくなるというのが私の理想で、第1回開催からそのように準備してきました。だからこそ、新体制を担う人たちには本当にがんばってほしいです」と語る。

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<2>広島が国際アニメーションフェスティバルの最高峰になれた理由、そして今後の展望とは?

Profileプロフィール

木下小夜子/Sayoko Kinoshita

木下小夜子/Sayoko Kinoshita

広島国際アニメーションフェスティバル フェスティバル・ディレクター。国際アニメーションフィルム映画協会(ASIFA)会長

伊藤有壱/Yuichi Ito

伊藤有壱/Yuichi Ito

第18回広島国際アニメーションフェスティバル コンベティション部門 国際審査委員長