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ワンフェス2016[冬]開催直前! デジタル原型師向け、デジタル出力物の表面処理法(後篇)

ワンフェス2016[冬]開催直前! デジタル原型師向け、デジタル出力物の表面処理法(後篇)

■Topic 03:アナログ作業によるパーツ修正

エルドラモデルでは、映像系の3DCG制作から立体に入ってきたデジタル原型師さんたちが手がけているフィギュア原型の、立体出力物の表面加工処理を100体以上手がけてきました。デジタル原型として、PC画面上での監修が通っていた場合も、いざ3Dプリントしてみたら画面上で見ていたイメージとちがっていた......なんてことはデジタル造形をどんなに手間暇をかけて行なってもよく起こることです。それにしたがい、そうした問題をアナログ作業で修正するといったことも日常的に行なっています。そこで、ここからは実際に経験したことがあるアナログ作業によるパーツ修正について紹介していこうと思います。デジタル原型を行なっている方々が日頃抱えている悩みを解決する糸口になれば幸いです。

この手の過ちはアナログ作業で長年やっていた自分たちならそうそうやらかさないハズ!と当初は思っていましたが、実際にデジタル原型を続けていると、どうしても「平面な画面の中」で作業する上では解決できない問題もいろいろあるのだということを、この1~2年、様々な実戦の中で思い知らされてきました。「Case 01~05」などはデジタルなら一瞬で終わる作業ではありますが、修正ポイントをデータ制作者本人に伝え、ブーリアン作業前のデータから遡って修正作業~再度ブーリアン作業~再出力依 頼~宅配便到着~磨き仕上げの時間(数日)とそれにかかるコストを比較した場合、わかっている人間が現物に手を加えてしまった方が手っ取り早いということがよくあります。

また「まとめ」(P67)で取り上げた形状の修正については、画面上で部分的にいくらでも拡大して細部をとことんつくり込められるのは、アナログでパテや粘土を相手にしていたときにはない新鮮な感覚です。ですが、例えば女性の腰部の場合、太もも×2、お尻の膨らみ×2、恥丘という少なくとも5つの膨らみが交差し、これにパンツのゴムやニーソックスなどによる締め付けが加わると制御すべきなだらかな曲面の膨らみの数は倍になります。この曲面の塊の複雑な集合体は(お尻の谷間や股間周り、太ももから股間に繋がるラインなど)個別に部分的にこだわりぬいても、それらがなだらかで自然な曲面で繋がっていなくてはならず、それら全てを「立体にしたときの個別のパーツ状態」で見たときに不自然ではなく見えるような「自分が100%納得できるラインに収める作業」というのは、想像するよりはるかに大変な作業になるので、商業原型かガレージキットであるかを問わず、予算やスケジュールとの帳尻合わせが欠かせません。

・CASE 01:顔が大き過ぎた

図のようにノコギリで切り刻んで、再接着しながら成形しました。

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<A>顔のサイズが大きい/<B>ノコギリでモールドの少ない部分でカットして幅詰め/<C>幅詰めした箇所はヤスリ等でならす

・CASE 02:目、鼻、口の位置がずれている

デザインナイフで削って、正しい位置に彫り込み直しました。デジタル原型は元が左右対称になっているので、完全アナログよりもいくぶんか楽に修正できます。

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<A>両目と口のラインを修正/<B>デザインナイフで彫り込む/<C>修正後

・CASE 03:顔と前髪の位置関係がずれている

前髪の断面や内側を削り込んでから嵌合を調整しました。図のようなおでこと前髪の距離はPC画面上ではさほど気にならないのですが、立体物になったときに違和感を感じることがよくあります。

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<A>ポリパテ等で嵌合を調整/<B>裏側の干渉部分をデザインナイフや彫刻刀などで削り込む/<C>おでこと前髪の距離感(黄色の矢印)は立体物で確認しないと見落としがち

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CASE 04:アゴの形状や顔の輪郭

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