<3>ゲームデザイナーを省いた制作工程
続いて山口氏は巨大な蟹状のモンスター「ファンタズマラネア」を例に、実際のアニメーション制作過程について解説した。
ファンタズマラネア登場シーン
はじめにディレクターに提示されたコンセプトは下記の4点だったという。
・中ボス
・プレイヤーキャラクターと基本的には1対1で戦う
・重量級である
・遠距離攻撃が得意である
通常はこの後、コンセプトアーティストが2Dのイラストでキャラクターデザインを行う。しかしファンタズマラネアの場合は、前作『ベヨネッタ』の非戦闘シーンで登場しているため、コンセプトアートもそちらを流用。それを基にキャラクターモデラーが3DCGの仮モデルを制作。仮モデルを基にアニメーターがプログラマーと相談しながら、必要なアクションや攻撃方法を考え、仮アニメーションを制作していく。また、その過程で必然的に発生する仮モデルやコンセプトアートの問題点を抽出し、本モデル制作に向けてフィードバックを行なっていく。
ファンタズマラネアのコンセプトアートと仮モデル
アニメーションは大きく「移動」、「近距離攻撃」、「遠距離攻撃」、「ダメージ」の4種類に分けられる。山口氏は待機モーションから始まって、歩き・ジャンプ・ステップ・突き刺し・火球吐き・ジャンプ攻撃・ガードなど、新しい仮アニメーションが次々に制作されていった様子を示した。その上で仮アニメーションは「ゲームを素早く組むことに特化したもの」であり、「早さ」、「ノイズにならない」、「ゲームとして機能する」という3点が重要だと語った。
各々のアニメーションはゲームデザインと密接に関係している
「早さ」は読んで字のとおりで、1つの動きをつくる上で、早ければ数十分。遅くとも毎日1つは新しいアニメーションを考案し、つくり上げていくという。「ノイズにならない」とはキャラクターのイメージに合わない動きはつくらないということ。そして「ゲームとして機能する」とは、それぞれの動きが「待機(=土台)」「攻撃(=緊張)」「ダメージ(=解放)」のどこに相当するか、考慮しながらつくることが重要という意味になる。
仮アニメーションと完成アニメーションでは求められる要素が異なる