>   >  アクションゲームの鍵を握るアニメーションの極意とは? プラチナゲームズ流の制作手法~「CEDEC2017」レポート(1)~
アクションゲームの鍵を握るアニメーションの極意とは? プラチナゲームズ流の制作手法<br />~「CEDEC2017」レポート(1)~

アクションゲームの鍵を握るアニメーションの極意とは? プラチナゲームズ流の制作手法
~「CEDEC2017」レポート(1)~

<5>イテレーションを高める制作スタイル

このように、ゲームデザイナー的な視点をふまえて新しい動きを考案し、仮アニメーションをつけていきながら、タイミングを見てディレクターにチェックを打診。必要な動きがすべて実装され、ディレクターから承認が得られたところで、ブラッシュアップに移行する。仮モデルを本モデルに差し替え、その上で本アニメーションをつけていく。DCCツール上での実装と実機上でのテストプレイをくり返し、時間の許す限り調整をくり返しながら、延々とクオリティを上げていくことになる。

もっとも、山口氏は「どこまでいってもクオリティの追求には終わりがなく、いつも時間切れで終わる」と明かした。山口氏は、商品として販売する以上、自分の中でクオリティの規準をもっているという。「1つの中ボスを相手に、無敵状態で何時間も遊び続けられること」だ。そうした状況に達するまで、クオリティを積み上げていくのが仕事だと説明した。


最終的に制作されたファンタズマラネアのアニメーションリスト

最後に山口氏は「アクションゲームではアニメーションの細かいこだわりがゲームのおもしろさを大きく左右するので、アニメーターがゲームのクオリティを左右する当事者として作業にあたれる環境を用意することが重要」だと指摘した。また「アニメーターがアニメーションをつくるだけでなく、ゲームデザイナーでもあるという認識が必要だ」と述べた。

一般的に開発環境といえばツールやミドルウェアといった設備投資の話に終始しがちだ。しかし山口氏が本講演で述べた内容は、ワークフローや働き方といった、制作文化の要素を含んでいる。この観点を広げると社風になる。つまりエンターテインメントにおける創造性とは、社風に関係するといえる。

もっとも制作文化や社風は言語化しづらい。しかし、それを言語化することで、改めて見えてくるものがある。山口氏も各々のゲームに適した(広い意味での)開発環境があり、その環境を追求することが、アーティストが発揮するゲーム制作のこだわりにもつながると語った。多くの示唆を含む講演だったと言えるだろう。

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